武田薬品、第一三共、協和キリン、参天製薬は6日、4社協働の第2回「Healthcare Café」を「Healthcare Café meets がんノート-患者さんと製薬会社で一緒に作る理想の世界-」をテーマに開催した。
今回のHealthcare Caféは、第一三共COMPASSが企画したもので、2022年に4社が開始した同活動は、病気や障がいを持つ患者と製薬企業の社員が対話・交流を通じてお互いを知り、患者の視点を医薬品の研究および開発に活かすPatient engagement(患者との協働)の実践を目的としている。
第2回Healthcare Caféは、病気を持っている人たちがより自分らしく生きられる世界の実現に向けて、がんノート、製薬企業の社員が一緒に考えて、ともに一歩を踏み出すきっかけ作りをコンセプトとしたもの。
国民の2人に1人が罹患するといわれる「がん」を取り上げ、がんになっても自分らしく生きる世界の実現について、がん経験者と製薬会社の社員で思考を重ねていくミーティングとなった。
第一部では、NPO法人がんノートの岸田徹氏が、世界最大級の患者発信のインタビュー動画メディア「がんノート」、しごと総合研究所の山田夏子氏が「グラフィックファシリテーション」について紹介。
続いて、岸田氏、三橋美香氏(乳がん経験者)、坂井広志氏(52歳、小腸がん経験者、新聞社論説委員)が、がんに罹患して困ったこと、不安に思ったことなどの経験や、現在の生活状況と理想の生活などについて言及。三橋氏、坂井氏のがん経験者による語りは、グラフィックファシリテーターの山田氏がグラフィックで見える化を図り、参加者の理解を深めた上での感想の共有・質疑応答が展開された。
第2部(非公開)では、製薬4社から集った約 30 名の社員が、がん経験者の話を「自分事」化し、「病気を持つ人たちがより自分らしく生きる世界の実現に向けて製薬会社として何ができるか?」をがん経験者とともに熟考した。
第一部では、眞鍋淳第一三共社長兼CEOが開会のあいさつの中で、「入社当初候補化合物の安全性評価部門に所属していた私は、安全で効果の高い薬剤の開発こそ製薬会社の使命であると考えていた」と振り返った。
その後、「筑波大学で病理学を学ぶ機会があり、患者の生命に直接関与する現場の緊張感を肌で感じた。その経験を通じて、薬を作ること自体が目的ではなく、自分たちの作り出した新薬を通じて患者に貢献することが目的であると考えるようになった」と強調。「医療現場や患者の視点に立って製薬会社の使命を考える重要性」を訴求した。
がん経験者のお話しでは、11年前に乳がんに罹患した三橋氏が、「2歳の子供を抱えながらの抗がん剤治療は辛かった」、「乳がんは、術前抗がん剤が効いてくればがんが小さくなることが自分で判る」、「エコーを行いながらまつ毛の話をしてくれ、言いたいことが言え、聞きたいことが聞ける女医さんと巡り合えたことに感謝している」、「病気の時は、周囲の視線が気になった」など自らの経験談を披露。
その上で、「子どものために生きたが、今は、自分も楽しんで生きている。今を大事にしたい」と訴えかけた。
一方、坂井氏は、「抗がん剤治療で手足のしびれがキツイため、一旦、服薬を止めている」、「抗がん剤を止めて2年経過したが、現在のところうまく行っている。治療は、効果とQOLとのバランスである」、「1日朝・夕、抗がん剤7錠、逆流性食道炎の薬剤などを合わせて10錠ずつ服用していた。これらの薬剤服用から解放され、本当に嬉しかった」などの経験を紹介。
治療時のマインド面にも言及し、「絶対に負けないと仕事を続けていた。心配される親切はきつかった」と述べた。
Healthcare Café参加者からは、「毎日薬を飲むことの辛さを知った」、「体の辛さより気持ちの辛さが自分らしくできるハードルになっている」、「突然起こった時に、そこから立ち上がっていく二人の話に感動した」などの感想が寄せられた。