訪問・遠隔併用リハビリテーションサービス実証実験開始 こうのす共生病院、ユニアデックス、埼玉県立大学 

実証実験に向けた各社の役割

 こうのす共生病院、ユニアデックス、埼玉県立大学は、訪問・遠隔併用でのリハビリテーションサービスの実証実験を15日より開始した。実証実験は、介護予防・日常生活総合事業「訪問型サービス」の利用者を対象に、「訪問・遠隔併用リハビリ」の実施方法と有効性について明らかにすることを目的としたもの。
 こうのす共生病院は「訪問・遠隔併用リハビリ」の実施、ユニアデックスは「訪問・遠隔併用リハビリ」に関連するシステム開発、埼玉県立大学は「訪問・遠隔併用リハビリ」利用者の事例収集・マニュアル作成を担当する。訪問・遠隔併用リハビリでは、訪問リハビリと遠隔リハビリの頻度を適切に調整し、利用者の身体機能向上、安全な日常生活活動(ADL)の獲得、および獲得までの期間短縮などを目指す。さらに、在宅医療・介護費用の削減につながることも期待している。
 新型コロナ感染症による医療・介護分野への影響の一つとして、対面での会話や接触が制限された。こうした中、ICTを活用した医療提供や見守り介護、加えて保健医療福祉の専門職の人材補強対策などについての検討や試行が始まっている。また、超高齢者社会に備えた在宅医療・介護の推進に向けて、ICTの活用に期待が高まっている。
 だが、日本の高齢者医療・介護分野では、十分にICTの利活用が進んでいないのが現状だ。その理由として、高齢者がデジタル機器の操作に不慣れなだけでなく、現在の医療・介護保険制度では、訪問リハビリテーションの基本的な扱いが指導者の訪問を条件とした報酬に限定されているため、「リハビリテーションサービスは利用者の自宅に訪問してこそ成立する」という固定的な考えなどが挙げられる。
 訪問リハビリは、自宅環境に合わせた実践的なADL・IADL指導のみならず、次回の自宅訪問までの間、利用者による自主的な基礎トレーニングおよびADL・IADL練習、介護者の介護練習も含めて成立しているサービスだ。この自主トレ・自主練習があってこそ、ADL・IADLの自立や介護者の安全な介護が達成される。
 同自主トレ・自主練習が、「実施できていない」、「正確でない」などが目標達成を遅らせている要因の一つと考えられる。従って、サービス提供者による支援は利用者宅での訪問指導だけでなく、遠隔からのアプローチも併用して実施することが効果的に自立を促進する有効な方法であると思われる。
 そこで、こうのす共生病院、ユニアデックス、埼玉県立大学は、高齢者が簡単に使用できるデジタル機器を活用し、訪問と遠隔によるリハビリテーションサービスの実施方法の確立と有効性を証明するため、「訪問・遠隔併用リハビリ」の実証実験を開始した。実証実験は、従来の訪問リハビリに、遠隔リハビリを組み込んだ新たなリハビリテーションサービス形態だ。
 遠隔リハビリでは、利用者宅にツールを組み込んだSIM付きタブレット端末を設置することで、サービス提供者は訪問看護・介護事業所にいる看護師による日々のケアだけでなく、理学療法士によるリハビリ指導・認知症予防指導などを、利用者の自宅を訪問せずにリハビリテーションサービスが提供できる。
 実証実験後には、「訪問・遠隔併用リハビリ実施ガイド」または「訪問・遠隔併用リハビリ実施事例集」を作成し、高齢者とサービス事業者が、安心してICTを活用したリハビリテーションサービスを利用できる環境作りを目指す。
 将来的には、「訪問・遠隔併用リハビリ」を利用する高齢者とサービス事業者が増え、多くの高齢者が健康寿命を延ばすことで、医療費の削減にもつながる持続可能な社会の実現を目指す。

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