明治と槻木恵一神奈川歯科大学口腔科学講座環境病理学教授らの研究グループは、乳酸菌Lactobacillus delbrueckii ssp. bulgaricus(OLL1073R-1株)で発酵したヨーグルトの摂取で、唾液中IgA抗体量が増加し風邪罹患リスクが低減することを確認した。
高齢者施設の入居者を対象とした観察研究において、OLL1073R-1株で発酵したヨーグルトを摂取している施設では、風邪罹患者数が少なく、入居者のヒトコロナウイルス229Eに反応する唾液中IgA抗体量が増加したことが確認されたもの。
同研究により、ヒトコロナウイルスに反応する唾液中IgA抗体量の増加が、風邪罹患リスク低減効果に寄与している可能性が示唆された。同研究成果は、8日、第18回日本食品免疫学会学術大会で発表された。
明治は、これまでにOLL1073R-1株で発酵したヨーグルトについて風邪罹患リスク低減効果や、インフルエンザウイルスに反応する唾液中IgA抗体量の増強効果などを確認してきたが、ヒトコロナウイルスに反応する唾液中IgA抗体については初めての研究成果となる。
なお、第76回日本栄養・食糧学会大会および第18回日本食品免疫学会学術大会では、ヒト肺細胞を用いたモデル試験において、OLL1073R-1株が産生する多糖体によるヒトコロナウイルス229Eおよび新型コロナウイルスの感染抑制効果を報告している。
OLL1073R-1株のEPSは、新型コロナウイルスを含めた各種コロナウイルス株に対して効果を発揮することが期待でき、さらに詳細な検証を行う予定だ。
観察研究の詳細について、研究グループでは、特別養護老人ホームA(摂取施設)に、OLL1073R-1株で発酵したヨーグルトを2015年4月から供給しており、その入居者は毎日1個(112 g)を摂取している。
この摂取施設の入居者41名と、同ヨーグルトを摂取していない介護老人保健施設B(対照施設)の入居者49名を対象者とし観察研究を行った。
2019年9月から2020年3月までの7カ月間、両入居者の風邪罹患状況を調査した。また、2019年12月に唾液を採取し、ヒトコロナウイルスに反応する唾液中IgA抗体量を測定して、次の結果を得た。
摂取施設は、対照施設と比べて、(1)調査期間中(2019年9月~2020年3月)の風邪罹患者数が有意に低値であった(p < 0.01)。
(2)ヒトコロナウイルス229Eに反応する唾液中IgA抗体量が高い傾向であった(p < 0.1)。
また、唾液採取直前(2019年11月~12月)の風邪罹患者を除外して解析した結果(除外後:摂取施設41名、対照施設43名)、(3)ヒトコロナウイルス229E、NL63に反応する唾液中IgA抗体量がそれぞれ有意に高値(p<0.05)、高い傾向(p<0.1)であった(図1)。
(4)唾液採取後(2020年1~3月)の風邪罹患者数が有意に低値であった(p<0.01)(表1)。
これらの結果から、OLL1073R-1株で発酵したヨーグルトの摂取は、ヒトコロナウイルスに反応する唾液中IgA抗体量を増加させ、風邪症候群への罹患リスクを低減することが示唆された。
明治は、今後も健康課題と向き合った研究を続け、人々が笑顔で健康な毎日を過ごせる未来の実現を目指す。