小野薬品は7日、固形がんに対するiPS細胞由来のHER2 CAR-T細胞療法に関するFate 社(米国)との創薬提携契約のオプション権を行使したと発表した。
今回小野薬品が行使したオプション権は、2018年9月に締結したiPS細胞由来のキメラ抗原受容体(CAR)-T細胞治療薬の創製を目的とする創薬提携契約に基づき創製したiPS細胞由来のヒト上皮細胞増殖因子受容体2(HER2)CAR-T細胞療法の製品候補品である「ONO-8250/FT825」を開発・商業化するもの。
同オプション権行使により、当社およびFate社は、欧米においてONO-8250/FT825を共同で開発および商業化するとともに、当社は欧米以外の全テリトリーにおいて独占的にONO-8250/FT825を開発および商業化する権利を取得する。
小野薬品は、Fate社に対して、同オプション権の行使に伴うマイルストンを支払う。また、同社は、臨床開発の進捗に応じたマイルストン、欧米以外のテリトリーにおける上市後の売上高の目標達成に応じたマイルストン、および上市後の売上高に応じたロイヤルティをFate社に支払う。
なお、Fate社は同創薬提携から創製される製品の全世界での製造権を保有する。
CAR-T細胞療法は、血液がんの治療では優れた有効性を示しているが、腫瘍関連抗原の不均一性、CAR-T細胞の腫瘍への非効率な移行、および腫瘍微小環境における固有の免疫抑制作用により、固形がんに対するCAR-T細胞療法の適用拡大は妨げられている。
Fate社の複数の遺伝子編集を施したiPS細胞由来のCAR-T細胞療法プラットフォームは、これらの課題に対処し、単剤およびモノクローナル抗体との併用療法で、固形がんに対して安全かつ有効な治療を可能にするよう設計されている。
ONO-8250/FT825の非臨床試験のデータは、2022年11月8 – 12日に米国マサチューセツ州、ボストンで開催される第37回米国がん免疫療法学会(SITC)の年次総会において、11日にポスターセッションで発表される。
◆滝野十一小野薬品取締役専務執行役員研究本部長のコメント
ONO-8250/FT 825は、固形がん治療における課題を克服するために、本創薬提携契約の基に、当社が提供した抗体とFate社の業界をリードするiPS細胞製品プラットフォームを組み合わせてFate社が創製したiPS細胞由来のCAR-T細胞治療薬で、これまでの非臨床試験において大変有望なデータが得られている。
当社は、最も治療が困難ながんを有する患者さんに恩恵をもたらすべく、iPS細胞由来のCAR-T細胞療法の製品候補品の臨床開発を開始できるよう取り組んでいく。
◆Scott Wolchko Fate社社長兼最高執行責任者のコメント
過去4年間にわたり、Fate社は小野薬品と緊密に協働し、腫瘍移行性や腫瘍微小環境における免疫抑制を含む、固形がん治療の課題に対処すべく、特別に設計された新規の機能分子を発見し、Fate社のiPS細胞由来のCAR-T細胞療法プラットフォームに統合してきた。
非臨床試験のデータで、 ONO-8250/FT825がHER2低発現がんに対する抗腫瘍活性を示すことなど、治療効果の高いプロファイルを有することが示されている。
当社は、2023年内にFDAにIND申請を行うことを目標に、小野薬品と協力して準備していく。