塩野義製薬は28日、新型コロナ経口治療薬「ゾコーバ」について、第2/3相臨床試験のPhase 3 partにおいて主要目的を達成したと発表した。
同試験結果として、「軽症/中等症患者において、重症化リスク因子の有無にかかわらず、オミクロン株に特徴的なCOVID-19の5症状が消失するまでの時間(発症前の状態に戻るまでの時間)をプラセボに対して有意に短縮(主要評価項目を達成)。
投与4日目(3回投与後)におけるウイルスRNA量を有意に減少させ、優れた抗ウイルス効果が確認された。4日目におけるベースラインからのウイルスRNA変化量はプラセボとの比較で1.4 log10 copies/mL以上の差が認められた。
これらの試験結果からゾコーバは、オミクロン株流行期に実施した試験で、COVID-19症状の罹病期間を主要評価項目として、プラセボに対する有意差を示した世界で初めての経口抗ウイルス薬として期待される。
Phase 3 partは、ゾコーバ(低用量、高用量の2用量)を1日1回、5日間経口投与した際の臨床症状の改善効果の検証を主目的に、軽症/中等症患者を対象に実施された。同試験では、日本、韓国、ベトナムにおいて重症化リスク因子の有無、またワクチン接種の有無にかかわらず、1821例の患者が登録された。
同試験における主要評価項目は、発症から72時間未満に割付された患者集団における、オミクロン株流行期に国内で共通してみられる特徴的な5症状(鼻水または鼻づまり、喉の痛み、咳の呼吸器症状、熱っぽさまたは発熱、けん怠感 (疲労感))の消失までの時間。
これらの主要評価項目は、医学専門家や厚生労働省、医薬品医療機器総合機構(PMDA)、米国FDA等の規制当局との協議を経て、その科学的かつ医学的妥当性を踏まえた上で設定されたもの。
申請用量(低用量)のゾコーバ投与により、対象患者集団において新型コロナ感染症の5症状が消失するまでの時間はプラセボ群と比較して約24時間短縮され、統計学的に有意な症状改善効果が確認された(p=0.04)。
症状消失までの時間の中央値は、同薬の申請用量投与群では167.9時間、プラセボ群では192.2時間であった。
また、主要な副次評価項目である同患者集団における投与4日目(3回投与後)のベースラインからのウイルスRNA変化量は、プラセボ群と比較して1.4 log10 copies/mL以上大きく(p<0.0001)、これまでに実施した臨床試験1-3と同様に優れた抗ウイルス効果が示された。
いずれの用量においても、同薬の投与による重篤な副作用や死亡例の報告はなく、これまでの試験と同様の良好な忍容性と安全性が確認されている。申請用量投与群で比較的高頻度に見られた副作用は、これまでの試験でも観察された高比重リポ蛋白の減少および血中トリグリセリドの上昇であった。
ゾコーバは、2022年7月20日に開催された薬事・食品衛生審議会において、緊急承認制度下での審議が行われ、Phase 3 partの進捗状況等を踏まえ継続審議となっている。Phase 3 partの速報結果については、27日に厚労省およびPMDAへ共有済みで、今後の承認審査ならびに審議について、両組織との協議を開始していく。
なお、ゾコーバの主要評価項目設定については、オミクロン株流行期における臨床学的な有効性評価において明確な評価指標が定まっていなかったため、薬事・食品衛生審議会後、医学専門家、関係省庁、日米の規制当局ともオミクロン株感染時における適切な主要評価項目について協議を重ねた。
それらの協議内容に基づき、科学的かつ医学的に妥当と考えられる主要評価項目ならびに重要な副次評価項目を塩野義製薬で決定された。評価する症状については、これまでに実施した本薬のPhase 2a part 1、Phase 2b part 2, 3で集積されたCOVID-19感染患者の12症状に関する臨床症状のデータを分析。
さらに、Phase 3 partの実施時期における国内での流行株の臨床症状に関する報告を収集した結果、オミクロン株流行期においては、新型コロナ感染症9の12症状のうち、5症状(鼻水または鼻づまり、喉の痛み、咳の呼吸器症状、熱っぽさまたは発熱、けん怠感 (疲労感))が共通してみられる特徴的な症状であったため、これら5症状の消失までの時間(発症前の状態に戻るまでの時間、試験プロトコルでは「快復」までの時間と規定)を主要評価項目として設定した。
また、オミクロン株感染時の体内におけるウイルス増殖および消失は過去の流行株に比べて早く、発症から一定期間経過後の症状の寛解も比較的速やかであることから、主要評価項目を評価する患者集団として発症から72時間未満に無作為割付された患者と規定した。
塩野義製薬では、引き続き同試験に関連する全データの早期提出に向けて、データ解析および申請文書の作成に鋭意取り組んでいく。