HAE治療薬フィラジル 日本で小児治療に対する適応拡大承認取得 武田薬品

 武田薬品は24日、選択的ブラジキニンB2受容体ブロッカー「フィラジル」について、厚生労働省より「遺伝性血管性浮腫」(HAE)の2歳以上の小児に対する適応拡大承認を取得したと発表した。
 HAEは、腹部、顔面、足、性器、手、喉など、身体のさまざまな場所に繰り返し浮腫発作を引き起こす希少な遺伝性疾患である。喉に発生した場合は気道がふさがり呼吸困難を起こし、窒息死する危険もある。
 HAEは、世界中で5万人にひとりが罹患していると推定されており、日本には2000人から3000人の患者の存在が推定される。
 その一方で、疾患に対する日本での認知度は低く、診断されている患者は約450名に留まっており、未診断の患者が多くいると考えられる。
 また、日本では初めての発作が起きてから確定診断までに平均13.8年かかると言われており、米国の平均8.3年、欧州の平均8.5年の報告と比較すると、大きな開きがあるのが現状だ。
 平均11.2歳で初発し、29%の患者が就学困難、40%の患者が発作のために10 日間以上学校又は会社を休むことを余儀なくされているとの報告があり、小児HAE患者への治療選択肢が求められている。
 今般、主に2歳以上18歳未満の小児HAE患者にフィラジルを皮下注射したときの安全性、有効性及び薬物動態を評価した国内P3相非盲検試験(jRCT2041200073)並びに海外P3相非盲検試験( NCT01386658)に基づき、2021年12月10日に一変承認を申請し、2022年8月24日に一変承認を取得した。
 これらの試験において、フィラジルは2歳以上の小児HAE患者における安全性及びHAE急性発作に対する有効性がみられた。国内P3相非盲検試験でみられた日本人小児HAE患者の治療反応は、日本人及び海外の成人並びに海外P3相非盲検試験での小児HAE患者の治療反応と類似していた。

◆国内P3相非盲検試験に携わった稲毛英介順天堂大学医学部小児科・思春期科助教のコメント
 これまで小児HAE患者さんは、夜間は勿論、日中に学校などで発作が起こっても、子どもに承認された治療薬が一つも無く、保険診療の枠の中で、多くの先進国で認められた標準治療を行うことが難しい状況であった。従って、医師の判断と責任でさまざまな治療が行われていた。
 今回の承認取得で、発作が起きたその場で使える国際標準の治療法が公的に認められ、小児用量が正式に設定されたことは、日本の小児HAE患者さんや保護者にとって大きな福音となると考えている。

◆濱村美砂子武田薬品ジャパンファーマビジネスユニット希少疾患事業部長のコメント
 フィラジルは、発作が起こったその場で速やかに治療が可能なHAEの治療薬である。2018年の販売開始以降、成人患者さんの標準治療薬としての実績があるフィラジルを、日本ではじめて小児HAE患者さんに治療選択肢として提供できることをうれしく思う。
 新たな治療選択肢として一人でも多くの小児HAE患者さんに貢献できるよう尽力していく。

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