「小児がん白書2022」で小児がんの子どもたちを支える5つのアクション提言 スキップ・イニシアチブ

 スキップ・イニシアチブは、「小児がん白書2022 – 小児がんの子どもたちを支える5つのアクション- 」を作成し、小児がんの子どもたちを支える5つのアクションを提言した。
 同白書は、日本の小児がん患者及び経験者が直面する治療上あるいは社会生活上の課題を、文献レビュー調査及びがん経験者へのインタビュー調査結果に基づき整理し、小児がん治療に関係する政府等のアクターに期待される今後のアクションについて、「提言」として取りまとめたもの。
 スキップ・イニシアチブは、政策調査・提言活動等を通して、小児がんを中心とする希少疾患を取り巻く環境の改善を実現すべく、2019年11月に設立された一般社団法人で、今回、同活動の一環として「小児がん白書2022」を発刊した。
 ヘルスケア分野の進化発展により、多くの疾病において治療成績の向上が図られている。だが、推定1万4000人以上の未成年者ががんの治療に向き合い、11万人以上が小児慢性特定疾病の治療に向き合っているなど、人口減少社会のなかで貴重な若い世代が困難に直面しているのが現況だ。
 小児がんは子ども1万人に約1人、年間2000人から 2500人が発症している。かつては不治の病とされた「小児がん」だが、今日では医科学等の進歩により、全体の5年生存率は 80%程度に改善するなど、治療成績の向上が見られる。
 加えて、国の対策も強化されてきた。例えば、政府・厚生労働省は、第二期の「がん対策推進基本計画」において小児がん対策を重点項目と位置づけ、2012 年以降、全国で「小児がん拠点病院」の整備が進められてきたが、その一方で未だ課題も多く残されている。


 日本の小児がん患者及び経験者が直面する治療上あるいは社会生活上の課題について調査した結果、小児がん患者及び経験者には健康な人と同等の生活を送るための5つの大きな壁が同定された。
 同白書では、そうした環境を改善するために「小児がんの子どもたちを支える 5 つのアクション」を提言している。5つの大きな壁と提言は、次の通り。

【5つの大きな壁】
1.学びの壁:学びを継続する困難
2.情報の壁:「治療の選択」における困難
3.費用の壁:治療費の捻出における困難
4.薬剤服用の壁:子どもにとっての「クスリを飲む」ことの困難
5.新薬創出の壁:子どもたちの「生存率」を向上させることの困難

【提言】
子どもたちを支える、5 つのアクション
1.「学校における学び」を支えるために

・ 入院・自宅療養中の患児を対象とした、学籍移動を伴わない教育環境の提供(例えば、病院内学級の「適応指導教室」としての運用、ICT 機器を利用による「オンライン教育」の推進 等)

・ 機能障害を有する小児がん経験者に対する、公平な高等学校/大学等の受験機会の提供
①「大学入学共通テスト」における“受験上の配慮”の内容や申請手続き等に関する学校から生徒、保護者に対する正確な情報の早期からの提供(例えば、高等学校第三学年に進級する 4 月時点)、
② 私立学校の入学試験における「受験上の配慮」に関する手続き、書式等の簡素化と標準化 等)

2.子どもと患者家族による「治療の選択」をサポートするために

・ 可能な範囲において平易な表現にて記述された「一般/患者向けガイドライン」の普及、活用

・ 遠隔診療をはじめとするデジタル技術を活用した、患者及びその家族の負荷を軽減する可能性のある医療提供体制等の積極的な導入

3.「20 歳」からの闘病生活も支えていくために
・ 小児慢性特定疾病対策事業に基づく医療費助成制度の対象年齢の引き上げ(特に就労困難な患者を対象に)

・ 小児がん経験者による定期接種ワクチンの再接種への公費助成の全国における実施

4.「飲みやすい薬」を提供するために

・ 子どもにとって安全かつ飲みやすいクスリの開発を促す観点から、日本版の「小児用製剤ガイドライン」を作成、発行すること

5.未来の小児がん患者の「生存率」を、さらに高めていくために

・ 日本版 BPCA(「小児最良医薬品法」)及び PREA(「小児用薬研究公平法」)の制定による小児向けの薬の開発促進スキップ・イニシアチブでは、関係行政機関、団体および企業などにおいてこれらの提言を参考にしていただき、小児がんの子供たちの環境がさらに改善されることを期待している。
 特に、本年、政府において予定されている第四期がん対策推進基本計画の検討に、同白書が寄与することを強く願っている。

 白書全文: 「小児がん白書 2022 – 小児がんの子どもたちを支える 5 つのアクション -」全文については、SKIPのサイト(https://skip-project.com/)を参照。

スキップ・イニシアチブ「小児がん白書検討ワーキンググループ」構成委員(五十音順)
・ 坪内雄佑氏:合同会社 Hand-Mock代表(若年性がん患者団体及び NPO 法人サクセスみらい科学機構(SUCCESS)サポーター、ユーイング肉腫経験者)

・ 平田研氏:MSL ジャパン シニアコンサルタント(一般社団法人スキップ・イニシアチブ 理事、下咽頭癌経験者)

・ 間中健介氏:慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任助教(NPO 法人サクセスみらい科学機構(SUCCESS)理事、一般社団法人スキップ・イニシアチブ 代表理事)

〇 水橋朱音氏:民間企業勤務(若年性がん患者団体副代表, 看護師, 鼻咽頭癌経験者)

◎ 村田章吾氏:株式会社 Rehab for JAPAN シニアディレクター(一般社団法人スキップ・イニシアチブ理事、社会福祉士)

・ 吉田由美子氏:NPO法人サクセスみらい科学機構(SUCCESS)事務局長

※ ◎は同ワーキンググループ座長、〇は副座長

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