シスメックスは、遺伝性網膜ジストロフィーにおける 遺伝子パネル検査システムの製造販売承認申請を6月30日に薬品医療機器総合機構(PMDA)に実施したと発表した。
同検査システムは、遺伝性網膜ジストロフィーの患者の血液から、関連遺伝子を対象とした複数の遺伝子変異情報を次世代シークエンサーを用いて検出・解析し、原因遺伝子に応じた治療計画やロービジョンケア計画の策定、および科学的根拠に基づく遺伝カウンセリングに有用な情報を提供を補助するもの。
遺伝性網膜ジストロフィー(Inherited Retinal Dystrophy: IRD)は、遺伝子変異が原因で網膜の機能に障害をきたす一連の遺伝性進行性の疾患の総称で、代表的なものに指定難病の網膜色素変性症がある。
その多くは、「暗いところでものが見えにくくなる」、「視野が狭くなる」などの症状が若年期より始まり、場合によっては失明に至る場合もある。
遺伝性網膜ジストロフィーの原因となる遺伝子はこれまでに300種類以上報告されているが、その原因遺伝子により、症状や重症度に違いがみられることが知られている。
こうした中、従来の臨床所見に加えて、原因遺伝子の情報に基づく、より個別化された診断の重要性が高まっている。
遺伝性網膜ジストロフィーの原因遺伝子が同定できれば、その原因遺伝子に応じた治療計画やロービジョンケア計画の策定、ならびに科学的根拠に基づく遺伝カウンセリングが可能となる。ひいては、発症リスクや症状の進行予測が明確になった患者の就学・就職への準備や家族計画など、QOL向上貢献が期待される。
また、これまで「遺伝性網膜ジストロフィーの根本的な治療法はない」と考えられていたが、原因遺伝子をターゲットとした遺伝子治が欧米で承認され、国内でも開発が進行するなど、新たな治療法への道筋も見えつつある。
今回、シスメックスは、同検査システム(試薬キットおよび解析プログラム)の開発を完了し、コンビネーション医療機器として製造販売承認申請を実施した。承認されれば、遺伝性網膜ジストロフィーにおける遺伝子パネル検査システムとしては国内初の事例となる。
同社では、今後、患者の受診機会を拡大するため、遺伝性網膜ジストロフィーにおける臨床フローに対する保険収載を目指した取り組みも進めていく。