服薬から服「楽」へ 患者・医療従事者に役立つ製剤技術・製品を提供 モリモト医薬

盛本社長

 「誤嚥を防ぐ服薬支援ゼリーや次世代錠剤包装ESOP、新型コロナワクチンの冷凍粉末化技術など、我々が開発した製剤技術や製品を医療現場に届けて、患者さんや医療従事者の皆さんの安全、安心、利便性に貢献したい」こう語るのは、モリモト医薬の盛本修司社長だ。
 盛本氏は、武田薬品で「リュープリン」、「タケプロン」、「ブロプレス」、「アクトス」などの開発に製剤技術者として携わってきた。その後、2005年に「独自の製剤技術提供による臨床現場への貢献」を理念に起業し、医薬品ベンチャー会社「モリモト医薬」を設立した。
 モリモト医薬では、創業以来、服用支援ゼリー、高速簡易懸濁注入器、次世代錠剤包装ESOP、新型注射剤キット(MPS)、連続冷結乾燥システムなど、服薬イノベーションを目指した製品開発・提供に尽力している。
 服薬支援ゼリーキット「のめるモン」は、嚥下力低下による服薬の困難さや薬の苦味などによる不快感を要因とする服薬アドヒアランス低下防止を目的に開発されたもの。嚥下に最適な物性を有するゼリーが簡単に薬剤を包み込む構造を有している。
 高速簡易懸濁注入器「クイックバッグ」は、内服薬の経管投与で本来10分以内で投与すべきものが作業の煩雑さのために守られていないケースなどへの対応で開発された。

次世代錠剤包装「ESOP」は、「シートごとの誤飲」「子どもの誤飲」「誤薬」「残薬」などの防止に寄与

シートごとの誤飲 防止に寄与

 「ESOP」(Easy Seal Open Pack、イソップ)は、社会問題になりつつある「シートごとの誤飲」「子どもの誤飲」「誤薬」「残薬」などの防止を目指した次世代錠剤包装だ。
 錠剤包装の多くを占めるPTPに代わる包装技術として開発されたESOPは、弱シール技術の応用により誤飲しても体内を傷つけない軟らかい樹脂の透明フィルム錠剤包装である。
 ESOPは、「シートごとの誤飲」などの4つの社会問題に加えて、近年重要視されている「分別回収できないための環境問題」や「ハザーダスドラッグ曝露対応」などの課題に対してもクリアできる新錠剤包装としても期待されている。

薬品名、使用期限、バーコード、QRコードなどが大きく表示


 ESOP包装の特長は、①「識別性」「保護性」「開封性」「携帯性」「安全性」に優れている、②Seal & Fold技術(弱シール部)により、お年寄りには開けやすく、子どもには開けにくい形態、③1錠ごとに薬品名、使用期限、バーコード、QRコードなどが大きく表示でき、薬剤の取り違えや期限切れ服用などの防止に繋がるーなどが挙げられる。

薬剤に触れず服薬できる


 さらに、経口抗がん剤も、ESOP包装にすれば、口ではさみ、歯で扱いて取り出し服薬できるので、薬剤に触れずに服薬できる。柔らかいフィルムで出来ているので、万が一飲み込んでも消化管を傷付けることもなく、折りたためば小さくコンパクトになる。
 現在、ESOPは、半自動で少量の試作が生産しているが、今後は、商業化に向けての企業連携を図っていく。

ESOPとGT剤の活用でハザーダス・ドラッグからの暴露回避にも貢献

 盛本社長は、経口抗がん剤も含むハザーダス・ドラッグ(HD)にも言及し、「ESOPとゼリー付き新剤型(GT剤)を活用すれば、HDからの暴露回避にも貢献できる」と訴求する。
 現在、医療現場では、薬剤師会や看護協会でのガイドライン策定、曝露対策への診療報酬加算の新設、厚労省からの曝露対策の通知などで、HD曝露に対する意識が高揚し、対策が進められている。 
 また、外来がん治療の普及と共に、近年需要が高まっている経口抗がん剤も曝露対策は不可欠で、その対策として次の6項目が要望されている。

⑴ 経口HDの取り扱い時は,ASTM基準を満たした手袋を装着する。
⑵ 服用した後のパッケージは,ほかのHD汚染物と同様の方法で廃棄する。
⑶ 錠剤やカプセルの破損があった場合,ほかのHD汚染物と同様の方法で廃棄する。
⑷ 可能な限り患者自身が包装から取り出して服用する。服用後に流水で十分に手洗いを行うように指導する。
⑸ 小児などで患者自身が自ら服用することができない場合は,服薬介助者はPPEを装着して取り扱う。
⑹ 経口摂取や錠剤・カプセルの服用が困難な患者への投与時は,曝露リスクが高いため薬の粉剤や脱カプセルを避け,簡易懸濁法などを検討する。

 盛本氏は、「HDの暴露対策では、こうした十分な対策が求めらているが、医薬品包装・パッケージを工夫することでリスクが軽減できる」と言い切る。
 例えば、モリモト医薬が開発したESOPとGT剤の2製品を活用すれば、薬剤に触らずに服薬できるので曝露リスクが軽減される。
 ESOPは、1錠ごとにQRコードなどが記載でき、1錠ずつ切り分けられ、個別に管理できるので、服薬管理にも有効だ。薬剤を外部に出すことなく歯で挟んで扱いて直接服薬でき、調剤時や携帯時も丈夫なハイバリアフィルムなので、破れにくく安全だ。
 一方、GT剤は、服薬時にフィルムシートのゼリー部をワンプッシュして抗がん剤とゼリーを混ぜ合わせるため、調剤者は抗がん剤に直接触れることはない。


 さらに、封鎖されたフィルムシート内で混和するため、抗がん剤の気化、飛沫による空気汚染がない。
 加えて、抗がん剤はゼリーに包まれた状態でフィルムシートの飲み口部から服用するので、患者及び医療従事者が抗がん剤に直接接触しない。


 服用が困難な患者への投与時も、曝露リスクの高い薬の粉剤や脱カプセルを避けられ、服用が容易になる。
 「こうした特徴を有するESOPおよびGT剤は、抗がん剤を投与している患者さんや医療従事者に対する暴露リスクが非常に少ない薬剤包装・パッケージとして期待できる」と力説する盛本社長。
 その上で、「今後、経口抗がん剤を服薬されている患者さんおよびご家族、介助者に広く危険性を知ってもらい、モリモト医薬の製品を普及させて少しでも曝露のリスクを低減させたい」と訴えかける。

新型コロナワクチンの冷凍粉末化技術による常温での保管や輸送、軽量化に期待

 連続冷結乾燥システムは、液状の新型コロナワクチンをスプレーで瞬時に凍結させることで凍結のむらを防ぎながら効率的に粉末化ワクチンにする同社が昨年開発に成功した画期的な技術だ。
 ファイザー社のmRNAワクチンは、振動に弱いため揺れないように超低温で凍結して運ばなければならないが、粉末化することで常温での保管や輸送が可能となり、小型化、軽量化、接種会場でのワクチン置き場の省スペース化なども期待できる。
 ワクチンの凍結乾燥は、以前から使われていた手法であるが、従来の凍結乾燥装置は金属の棚が冷媒になっていて、ワクチンを下から徐々に凍結させるため、棚の端にあるものと真ん中のにあるものは温度の掛かり方が異なるという欠点があった。従って、凍結のむらが生じ、粉末化するための時間も3~4日、長いものでは1週間費やしていた。
 こうした中、モリモト医薬が自社開発した装置は、横ロータリー式装置で連続的にスプレーしながら凍結乾燥するため、むらなく効率的に生産でき、従来の棚式装置に比べて10倍の生産効率を誇る。mRNAワクチンをはじめ、どのタイプのワクチンや医薬品にも対応できる。
 現在、国内外のワクチンメーカーと協議して評価を行い、生産レーンを整備して凍結乾燥ワクチンを量産できる体制構築に尽力している。

         
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