胆管がん・すい臓がん患者の苦痛和らげる全く新しいステントの開発に成功 東京都立産業技術研究センター

 東京都立産業技術研究センター(都産技研)は8日、進行した胆管がんや、すい臓がんの緩和療法として使われる胆管内に埋め込む、世界初の機能を持つステント(管状医療器具)を開発したと発表した。東京医科大学、福井大学、慶應義塾大学医学部腫瘍センター・低侵襲療法研究開発部門との共同研究によるもの。
 今回、世界に先駆けて開発された胆管ドレナージ用自己拡張型ステントは、水が主成分であるハイドロゲルを素材としたもの。ヒトの身体の管(血管や消化管など)を内側から広げるために用いられる筒状医療機器で、胆管に適用する。
 体内にある管状の部位に差し込むことで、石や腫瘍の影響により流れが悪くなった胆汁などの液体を流し易くする。ステントの材料に水分を含むと膨張する素材(PVAハイドロゲル)使用により、胆汁の流れを確保でき、黄疸の解消に役立つ。
 加えて、従来の金属ステント及びプラスチックステント各々の長所(長期利用可能・除去可能)を合わせ持っている。これにより、同ステントを長期間用いた緩和療法が可能となり、がん患者や医療従事者の大幅な負担軽減が期待できる。
 我が国発の新規のステントとなるばかりでなく、ステント留置が必要な患者、医療従事者の大幅な負担軽減にも繋がる。今後は、既存ステントとの優位性の比較、およびさらなる材料の改良を進めていく。
 すい臓がんなどによって胆管が閉塞してしまうと、胆汁が排出されなくなることにより黄疸が発症する。黄疸には、発熱や悪心どが併発するため、ステントを胆管に内視鏡的に留置して胆汁を排出する緩和療法が行われる。
 緩和療法では、プラスチックステントおよび金属ステントが主に用いられている。プラスチックステントは抜去可能であるものの早期に詰まってしまう。金属ステントは、内腔が広く長期開存性を示すが、「網目からのがんの浸潤により抜去できない」という課題がある。
 こうしたステントの長所を両立した「長期開存性を示し抜去可能」な新たなステントの開発が待望されていた。
 都産技研は、新たなステントの素材として、ポリビニルアルコール(PVA)ハイドロゲルに着目した。PVAは、生体に安全な素材であり、頑丈なハイドロゲルを作製可能だ。PVAハイドロゲルを用いて作製した胆管ステント試作品は、動物実験で豚胆管を拡張できることを確認しており、現行ステントの長所を両立した新たなステントとしての可能性が期待される。

開発品の外観と内腔拡大の概念図


 ステントは、乾燥状態で内視鏡的によって胆管に送達される。胆管留置後は胆汁などの体液による膨潤により自己拡張し、内腔が拡大する。膨潤後の内径(約5mm)は、市販品のプラスチックステントの内径(最大3.3mm)を超えており長期開存性を有する。
 都産技研では、同開発に関わる中小企業との共同研究を広く募集している。加えて、保有する技術シーズや技術情報など、中小企業の製品開発や生産活動に役立つ情報を発信している。

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