プロジェクトCOINSが経済産業大臣賞受賞 iCONM

 ナノ医療イノベーションセンター(センター長:片岡一則氏、iCONM)は25日、川崎市産業振興財団が代表機関として2013年より取り組んできた文部科学省COIプログラム(COINS)が、「第11 回地域産業支援プログラム表彰事業(イノベーションネットアワード2022)」の経済産業大臣賞を受賞したと発表した。
 同表彰事業は、全国各地で地域発イノベーションの推進を担う産業支援機関や大学などが、文部科学省・経済産業省・農林水産省・関連機関の支援を受けつつ、共通認識の下で、全国的なネットワークを構築するために2009年創出された「全国イノベーション推進機関ネットワーク」が主催している。
 経済産業大臣賞は、地域の資源や特性を活かした新事業・新産業創出につながる先導的かつ具体的な成果を生み出している取組のうち、最も優秀な取組に対して贈られる。
 プロジェクトCOINSでは、ウイルスサイズのナノマシンが 24 時間体内を巡回し、疾患の予兆を見つけて治療を行い、体外に情報を直ちに知らせる未来の医療技術である「体内病院」の開発により、医療にかかる手間やコスト、距離を意識することなく、病気や治療から開放され、日常生活の中で自律的に健康を手にすることができる「スマートライフケア社会」の実現を目指してきた。
 その意思は、現在、中核機関であるiCONMで進められている研究にも受け継がれており、また、その研究成果を社会実装するために9社のベンチャー企業が創設された。今回の受賞は、その取り組みが高く評価されたもの。
 COINSでは、体内病院の完成を2045年に定め、iCONM を中核機関として、産学官がアンダーワンルーフに集い、ナノテクノロジーを駆使した研究開発を行うことで、「世界で最もイノベーティブな拠点」を目指してきた。
 研究開発だけではなく、市民公開講座の開催や、科学館での展示・ワークショップ、川崎市のブランドメッセージとしての発信などアウトリーチ活動を積極展開し、市民と対話しながら研究開発を進めた。これらの活動により、企業から共同研究収入や出願した特許によるライセンス収入を得るとともに、設立したベンチャー企業の資金調達が実現することで、資金循環の流れが生まれ、革新的な医療技術の社会実装が近づいてきた。
 また iCONM は、川崎市殿町国際戦略拠点・キングスカイフロントのフラッグシップでもあり、このプロジェクトは、同地域に革新的なイノベーションの創出が継続しリソースが循環するイノベーションエコシステムの形成にも貢献した。
 なお、表彰式は、6月14 日に、東京・TKP 御茶ノ水カンファレンスセンターにて行われる予定である。
 プロジェクトCOINSから創設された9つの企業は次の通り(カッコ内は創設年月)。
① ブレイゾン・セラピューティクス(2015 年 10 月)
脳内への薬物送達技術をベースとして CNS 領域での薬物投与量および副作用の低減を目指している。

② アキュルナ(2015 年 12 月)
RNA医薬の創薬を主に創設されたが、2020年9月にナノキャリア社に併合されている。

③イクストリーム(2018 年 11 月)
エクソソーム解析・マイクロ RNA 測定システムの製品化、検査・創薬支援の研究・開発。
バイオマーカーであるマイクロRNAを低コスト・短時間で高感度に検出し、迅速な診断を可能とする機器の開発を行っている。

④ ソニア・セラピューティクス(2020 年 2 月)
音響工学(超音波)技術を用いた次世代型超音波ガイド下集束超音波(HIFU:high-intensity focused ultrasound)治療装置を開発している。

⑤イクスフロー(2020 年 9 月)
独自のmTAS技術が持つ特徴(スキルレス、迅速、小型、閉鎖系)を活かした可搬・携帯可能 POCT(臨床現場即時検査)システムを開発している。

⑥PrimRNA(2021 年 4 月)
世界初の mRNA 医薬による関節軟骨の治療法を提供し、対症療法が中心の変形性関節症の治療に、軟骨変性抑制を目的とする早期治療介入を目指す。

⑦ レッドアローセラピューティクス(2021 年 8 月)
がん免疫療法における薬剤耐性を克服する高分子ミセルの開発を目指している。

⑧ B-MED (2021 年 11 月)
血糖値に応じてインスリンが自動投与される貼付式デバイス「貼るだけ人工膵臓」の開発を行っている。

⑨ クラフトンバイオテクノロジー(2022 年 3 月)
RNA医薬の技術基盤を固め、様々な難病に対する治療薬の創出を目指している。

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