脂質異常症のペプチド治療ワクチン創出で熊本大学と共同研究開始 ファンペップ

 ファンペップは1日、熊本大学と脂質異常症に対する抗ANGPTL3抗体誘導ペプチド(ペプチド治療ワクチン)創出に向けた共同研究を開始したと発表した。
 ANGPTL3(アンジオポエチン様タンパク質3)は、肝臓より分泌され、脂質代謝や血管新生に関わるホルモン様のタンパク質で、リポ蛋白リパーゼ(LPL)活性を抑制することにより血漿超低密度リポタンパク質(VLDL)レベルを上昇させることなどが知られている。
 熊本大学大学院生命科学研究部尾池雄一教授らの研究グループは、ANGPTL ファミリーの同定からそれらの機能や病態における意義の解明に関する研究、ペプチドワクチンによる治療法の研究を行っている。
 同社は、熊本大学との本共同研究において、脂質異常症の新規治療標的として注目されている ANGPTL3に対する抗体誘導ペプチドの医薬品候補化合物創出に向けて創薬研究を行う。
 動脈硬化性疾患の代表疾患である心血管疾患は、2019年の全世界の死亡者の32%を占める主要な死因であり、動脈硬化性疾患の予防に向けてその危険因子である脂質異常症に対する治療が行われている。
 脂質異常症の治療には、血中LDLコレステロールを低下させるため、スタチン系薬剤が一般的に広く使用されているが、家族性高コレステロール血症の場合や、心血管イベントのリスクが高い患者においてスタチン系薬剤で効果不十分な場合などには、PCSK9 阻害薬など他の薬剤との併用療法が行われている。
 一方、動脈硬化は、血中中性脂肪の上昇により促進されることも知られており、血中 LDLコレステロールに加えて中性脂肪も低下させる作用をもつ ANGPTL3阻害薬が注目されている。
 ANGPTL3阻害薬は、バイオ医薬品の開発が進んでおり、2021年には家族性高コレステロール血症に対して抗体医薬品が米国及び欧州において承認され治療に使用されている。だが、抗体医薬品の高額な薬剤費による患者のアクセスや経済的負担の課題が指摘されている。
 ファンペップが研究開発に取り組んでいる抗体誘導ペプチドは、患者の体内での抗体産生誘導により治療効果を期待するペプチドワクチンである。
 バイオ製造施設で製造する抗体医薬品とは異なり、化学合成での製造が可能な抗体誘導ペプチドは、製造コストを抑制でき、さらに投与後は患者様の体内で免疫細胞が一定期間持続的に抗体を産生するため、薬剤投与間隔も長い利点が期待される。
 この特徴により抗 ANGPTL3抗体誘導ペプチドは、高額な抗体医薬品と比較して薬剤費を抑制し、患者が経済的にアクセスしやすい医薬品として、将来、脂質異常症の治療への貢献が期待される。なお、同共同研究による当期業績への影響は軽微である。

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