MSDとアストラゼネカは14日、とアビラテロン+プレドニゾロンの併用療法について、転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)の一次治療において、標準療法(アビラテロン+プレドニゾロン)と比較して疾患進行を8カ月以上大幅に遅らせる結果を示したと発表した。
同試験では、転移性去勢抵抗性前立腺がんに対する一次治療において、オラパリブとアビラテロン+プレドニゾロンの併用療法により、相同組換え修復(HRR)関連遺伝子変異の有無にかかわらず、標準療法であるアビラテロン+プレドニゾロンのみを投与した場合と比較して、画像診断に基づく無増悪生存期間(rPFS)が統計学的に有意で臨床的に意味のある改善を示した。同試験結果は、2022年米国臨床腫瘍学会(ASCO)の泌尿器がん(GU)シンポジウムで17日に発表された。
なお、オラパリブは、日本ではリムパーザとして、白金系抗悪性腫瘍剤感受性の再発卵巣癌における維持療法、BRCA遺伝子変異陽性の卵巣癌における初回化学療法後の維持療法などに対する効能・効果で承認を取得している。
前立腺がんは、男性のがんの中で世界で2番目に多く、2020年の患者数は世界で推定140万人に上る。進行前立腺がん患者の約10〜20%が5年以内にCRPCに至ると考えられており、そのうち84%以上がCRPC診断時に転移を有している。進行前立腺がん患者の5年生存率は低く、予後は特に不良だ。
PROpel試験は、無作為化二重盲検多施設共同P3相試験で、2021年9月に実施した事前設定の中間解析において、独立データ監視委員会は、主要評価項目であるrPFSが達成されたと結論づけた。
オラパリブとアビラテロン+プレドニゾロンの併用療法(399例)では、mCRPC患者において、HRR関連遺伝子変異の有無にかかわらず、アビラテロン+プレドニゾロンおよびプラセボ(397例)と比較して、疾患進行または死亡のリスクが34%低下した(HR=0.66 [95% CI, 0.54-0.81]; p<0.0001)。
rPFSの中央値はオラパリブとアビラテロンの併用群では24.8カ月、アビラテロンの群では16.6カ月であり、8カ月以上の改善が認められた。
有害事象では、オラパリブ+アビラテロンで最も高頻度に認められた症例(AE、20%以上)は、貧血(46%)、疲労(37%)、悪心(28%)であった。
グレード3以上のAEは、貧血(15%)、高血圧(4%)、尿路感染(2%)、疲労(2%)、食欲減退(1%)、嘔吐(1%)、背部痛(1%)、下痢(1%)、悪心(0.3%)であった。
オラパリブとアビラテロンの併用療法群では、約14%の患者がAEにより治療を中止した。
探索的評価項目として健康関連QOLを、前立腺がん患者報告アウトカムの尺度であるFACT-P(Functional Assessment of Cancer Therapy-Prostate)を用いて、長期的に評価した結果、二群間でQOLの低下は認められなかった。
また、PROpel試験の同中間解析において、オラパリブとアビラテロン+プレドニゾロンの併用療法では、アビラテロン+プレドニゾロンおよびプラセボと比較して、全生存期間(OS)も延長の傾向が認められた。
ただし、データカットオフ時における差異は統計学的有意に到達しなかった(解析時のデータ成熟度は29%、HR=0.86 [95% CI, 0.66-1.12]; p<0.29)。試験では引き続きOSを主な副次評価項目として評価する。
◆University of Montreal Hospital Center泌尿器科責任者、泌尿器がん部門ディレクターで治験責任医師のFred Saad教授のコメント
転移性去勢抵抗性前立腺がんの予後が非常に悪いことは明らかであり、多くの患者さんは有効な治療として一次治療しか受けられない。
PROpel試験の結果、オラパリブとアビラテロンの併用療法により、アビラテロンと比較して疾患進行を8カ月以上と大幅に遅らせることが示され、この併用療法が承認されれば、転移性去勢抵抗性前立腺がん患者さんの新たな標準療法の選択肢となる可能性がある。
◆アストラゼネカのエグゼクティブバイスプレジデント兼オンコロジーR&D責任者のSusan Galbraith氏のコメント
オラパリブの併用療法は、一次治療を受ける患者さんのQOLを維持しつつ、疾患進行までの期間を延長する可能性があある。
PROpel試験は、高いハードルの設定された実薬対照試験であり、オラパリブ+アビラテロンが転移性去勢抵抗性前立腺がん患者さんにおいてHRR関連遺伝子変異の有無にかかわらず、現在の標準療法と比較して有意な臨床的改善を示したことは注目に値する。