オミクロン株を含む種々の変異株に反応する新規抗ウイルス抗体創出に成功 医薬基盤・健康・栄養研究所と塩野義製薬

変異型を含む広域コロナ属ウイルスの治療薬として期待

 医薬基盤・健康・栄養研究所(NIBIOHN、大阪府茨木市)は9日、 塩野義製薬と共同で、新型コロナウイルスを含む近縁コロナウイルスに関する新規抗ウイルス抗体の同定に成功したと発表した。
 同抗体は、ウイルス粒子そのものではなく、ウイルスの供給元となる感染後の細胞を標的とし、感染者の免疫応答をサポートして、新型コロナウイルスに感染した細胞のみを特異的に排除するもの。
 また、他の多くの抗体医薬とは異なり、変異が入りにくい部位を標的とし、オミクロン株を含む種々の変異株に反応する。
 変異が少ない部位は多くの類縁コロナウイルスにも共通の構造を有するため、得られた新規抗ウイルス抗体は、変異型を含む広域コロナ属ウイルスに広く薬効を示すことが期待される。
 NIBIOHNと塩野義製薬は、新型コロナウイルスを含む近縁コロナウイルスに広く交差反応性を示し、これまでの中和抗体とは異なるメカニズムで働く有効な治療抗体医薬の創製を目指して共同研究を行ってきた。
 その結果、NIBIOHNの有する「エピトープ均質化抗体パネル」技術を用いて、感染細胞に存在するウイルススパイク(S)タンパク質の中で、アミノ酸変異が頻繁に生じる受容体結合ドメイン(RBD)とは異なる部位(エピトープ)を認識し、ADCC活性を重視した抗体の同定に成功した。
 現在、臨床応用されている抗体カクテルなどの中和抗体や、経口用として開発中の低分子化合物は、いずれも軽症からの感染者を対象としている。
 一方、今回同定された抗体は、中等度以上の重症化リスクの高い患者に投与する抗ウイルス抗体医薬としての開発や、今後起こるかもしれない類縁コロナウイルスのパンデミックの発生時にも広く緊急対応できる「広域型抗ウイルス抗体医薬」としての開発が期待される。
 NIBIOHNでは、今後、製薬会社とも連携の上、更なる研究を進めていく。

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