アストラゼネカは10日、長時間作用型抗体併用療法剤Evusheld(チキサゲビマブとシルガビマブの同梱製剤)について、米国で新型コロナ曝露前予防を適応とした緊急使用許可(EUA:Emergency Use Authorization)を取得したと発表した。
同剤は、間もなく初回分の投与が可能となる予定で、アストラゼネカは、米国政府に対しEvusheld70万回分を供給することで合意している。
FDAは、Evusheld に対し、曝露前予防を適応として緊急使用許可を付与した。対象は、病状あるいは免疫抑制剤により中等度から重度の免疫不全があり、新型コロナワクチンに対して十分な免疫応答が得られない可能性がある、および新型コロナワクチン接種が推奨されていない成人および青年(12歳以上かつ40kg 以上)。
なお、現在感染している人、あるいは新型コロナ感染者と直近で接触があった人は投与を受けられない。
Evusheld は、2つの長時間作用型抗体による併用療法であり、新型コロナの曝露前予防を適応として米国で許可された唯一の抗体療法である。また、投与経路が筋肉内投与である唯一の新型コロナ抗体療法(チキサゲビマブ 150mg とシルガビマブ 150mg)となる。
世界人口の約2%に当たる人々は新型コロナワクチンに対して十分に反応しないリスクの高い集団と考えられている。米国では約700万人の人が免疫不全で、新型コロナ曝露前予防によるEvusheldの恩恵を受ける可能性がある。
これらの人々には、化学療法治療を受けている血液がん、またはその他のがんの患者、臓器移植後に薬物治療を受けている患者、あるいは多発性硬化症や関節リウマチを含む疾患の治療のため免疫抑制剤を使用中の患者などが含まれている。
Evusheldの緊急使用許可の根拠となった主なデータは、進行中のP3試験(PROVENT 曝露前予防試験)のものだ。プラセボと比較して、症候性新型コロナ発症リスクを統計的に有意に減少(主要解析では 77%、中央値 6 カ月の追跡期間での解析では 83%)させ、ウイルスからの保護が少なくとも6 カ月間持続した。
また、P3相STORM CHASER 曝露後試験およびEvusheld のP1試験データも、緊急使用許可を裏付けるものだ。Evusheld の忍容性はこれらの試験において良好であった。
Evusheldに対するオミクロン変異株の影響については、情報提供ための研究が進行中である。これまでにテストされた予備的な前臨床データでは Evusheld に関連するオミクロン株の結合部位置換のうち、 Evusheld の中和能からの回避を示唆するものはなかった。
In vitro 試験の結果では、Evusheldがデルタおよびミュー株を含む最近出現した新型コロナウイルス変異株も中和することが示された。Evusheldは、米国政府の資金提供を受けて開発中で、この資金には、保健社会福祉省、事前準備・対応担当次官補局、国防総省と連携する米国生物医学先端研究開発局、契約番号W911QY-21-9-001の契約による化学・生物・放射性物質・核防衛統合計画事務局が拠出するフェデラルファンド(連邦政府の補助金)が含まれている。
アストラゼネカは、米国政府に対し Evusheld 70万回分を供給することで合意している。Evusheldの初回供給分は、政府が出資するプログラムの一環として、適格な患者に無償で提供される。
米国政府は各州政府と協力し、適格な方々へアクセスを提供する。アストラゼネカは新型コロナの予防と治療に対するEvusheldの緊急使用許可または条件付き承認の承認申請を世界中で進めている。なお、Evusheldは、本邦未承認である。
◆米コロラド大学医学部小児科教授、 PROVENT試験治験統括医師のMyron J. Levin氏のコメント
米国および世界中の何百万人もの人々が、推奨される用量のワクチンを接種したにも関わらず、自身の免疫応答が不十分であるために新型コロナ感染への深刻なリスクにさらされている。
日常生活に戻るための一助となるであろう Evusheld を、容易に投与でき且つ長期的な予防を提供できる新たな選択肢として、患者さん方に提供できるのは非常に喜ばしい。
◆アストラゼネカバイオファーマ研究開発担当エグゼクティブバイスプレジデントMene Pangalos氏のコメント
我々は、COVID-19 パンデミックとの闘いにおいて主要な役割を果たせていることを誇りに思っている。Evusheld はウイルスに曝露される前の新型コロナウイルスの発症を予防すると同時に、単回投与で長期にわたる予防が提供できる、米国で許可された初の抗体療法となった。
Evusheldは、これまでのすべての SARS-CoV-2 変異株を中和し、我々は新しいオミクロン株に対する有効性を確認するために確認に迅速に取り組んでいる。
◆慢性リンパ性白血病学会の共同創設者、エグゼクティブバイスプレジデントおよび最高医学責任者Brian Koffman氏のコメント
私が患者さんからよく訊かれる主な質問のひとつは、「いつになったら孫を再び抱きしめることが出来るのか?」であった。私自身、医師であるとともに免疫力が低下している個人として、ワクチンのみでは十分な予防効果を期待できない人々に間もなく Evusheld を使用できるという希望に満ちている。