最先端の研究法を活用するための臨床疫学Webセミナー開催  臨床疫学研究推進機構

 臨床疫学研究推進機構は16日、最先端の研究法を活用するための臨床疫学Webセミナーを4回実施すると発表した。
 医療・介護・福祉領域の臨床疫学研究では、研究法の高度化が進み、研究者が求められる知識が増えてきている。同Webセミナーは、一般的な教科書ではあまり取り上げられない重要性の高い研究法に着目して、最先端の情報を共有するために実施するもの。
 各セミナーの日程と概要は次の通り。

◆第1回臨床疫学セミナー
2021年12月3日 (金) 17:00~18:10
「分割時系列デザイン: 対照群のない研究デザインにおける効果推定法の基礎と実践」
・演者:佐藤俊太朗氏 (長崎大学病院臨床研究センター)
・参加費:3000円 (学生: 500円)
・参加方法:Webサイト (https://icer.tokyo/2021/11/01/seminar-1/) より申し込み
・企画趣旨:ある処置 (介入・曝露) がアウトカムに影響するのか評価するためには、関心のある処置だけではなく対照の情報が必要です。最も強力な研究デザインはランダム化比較試験であるが、観察研究であっても対照群の情報があれば、適切な解析をおこなうことで処置による影響の評価は可能になる。
 だが、観察研究において適切な対照群を設定することが困難な場合がある。同セミナーではこのような状況に対処するデザインとして分割時系列デザイン (interrupted time-series design) を解説する。
 このデザインは、処置前後のアウトカムを一点だけではなく反復して測定し、処置による効果を評価する手法である。ある施設において新しい介入を導入した前後の効果検証や、診療報酬改定の効果検証をおこなう場合などに活用できる。

◆第2回臨床疫学セミナー
2022年1月14日(金) 17:00~18:10

「自己対照研究デザイン: 対照群のない研究デザインにおける効果推定法の基礎と実践」
・演者:佐藤俊太朗氏 (長崎大学病院臨床研究センター)
・参加費:3000円 (学生: 500円)
・参加方法:12月上旬にWebサイト (https://icer.tokyo/) で参加方法を周知する。
・企画趣旨:ある処置 (介入・曝露) がアウトカムに影響するのか評価するためには、関心のある処置だけではなく対照の情報が必要である。最も強力な研究デザインはランダム化比較試験であるが、観察研究であっても対照群の情報があれば、適切な解析を行うことで処置による影響の評価は可能になる。とはいえ、観察研究において適切な対照群を設定することが困難な場合がある。
 1回目のセミナーでは集団レベルのデータへのアプローチとして分割時系列デザインを解説した。今回は、個体レベルのデータへのアプローチとして自己対照研究デザインを解説する。
 このデザインは、関心のあるアウトカムが生じた研究対象者のみを解析対象とするものである。同デザインが適したデータであれば、測定していない未知の要因による影響を原理的に無視できるのも特徴である。
 たとえば、ワクチン接種後の副反応の評価、医薬品の製造販売後の安全性評価や、治療状況のアウトカム評価に活用することができる。

◆第3回臨床疫学セミナー
2022年2月18日 (金) 17:00~18:10

「患者報告式アウトカム尺度における臨床的有意性の定め方: 介入効果の解釈のために」
・演者:竹林由武氏 (福島県立医科大学)
・参加費:3000円 (学生: 500円)
・参加方法:1月中旬にWebサイト (https://icer.tokyo/) で参加方法を周知する。
・企画趣旨:QOL、ウェルビーイング、痛み、抑うつや不安など、患者が自分の状態を評価して回答する患者報告式アウトカム尺度は、多くの臨床疫学領域で重要性の高いアウトカムと認識されている。
 自分の領域でよく使われる患者報告式アウトカム尺度について、「得点が何点変化したら臨床的に意味があるか」と問われたとき、どのように答えれば良いか?同セミナーでは、そうした疑問に答えられるように、患者報告式アウトカム尺度における臨床的有意性の定め方を学べる。

◆第4回臨床疫学セミナー:2022年3月25日 (金) 17:00~18:10

「NDBを活用した臨床疫学研究: 誰もが活用できる未来に向けて」
・演者:奥村泰之氏 (臨床疫学研究推進機構)
・参加費:未定
・参加方法:2月下旬にWebサイト (https://icer.tokyo/) で参加方法を周知する。
・企画趣旨:2011年度からレセプト情報・特定健診等情報データベース (NDB) を研究者が活用できるように門戸が開かれた。NDBを活用することにより、公的医療保険で診療を受けた「全ての患者」を特定して、診療の実態把握や診療行為のアウトカム評価など、多様な臨床疫学研究を推進することが期待できる。
 だが、NDBの研究者利用が開始されてから10年以上が経過した現在においても、研究機関に所属する「ごく一部」の臨床家しかNDBを活用できていない。NDBを活用した査読付き論文も、ごく限られたものしかない。
 つまり、残念ながらNDBは、ほとんど患者の役に立っていない状況である。同セミナーでは、誰もがNDBを活用できる未来に向けて、持続可能な研究体制の構築について解説する。

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