サルコペニアやロコモティブシンドローム予防への応用に期待
明治および医薬基盤・健康・栄養研究所は26日、筋肉量の維持・向上のために効率的なたんぱく質摂取量をメタアナリシスで解明することに成功したと発表した。
メタアナリシスとは、複数の研究結果を統合して分析することで、個々の研究よりも信頼性の高い分析結果を得る手法である。最も質の高いエビデンスであるとされている。
同研究成果は、加齢によるサルコペニアやロコモティブシンドローム(運動器症候群)の予防への応用が期待される。
また、1日~2日に開催された第68回日本栄養改善学会学術総会でweb発表(視聴可能期間:2021年10月1日~10月25日)された。
同研究から、①筋力トレーニングの有無に関わらず、たんぱく質は少量(平均的な体重の成人で1日5~7g)の摂取でも筋肉量増加に有効、②筋力トレーニングは、その効果をさらに高めるーことが明らかになった。
同研究グループが、92文献、4741名分のたんぱく質摂取量のデータを分析した結果、たんぱく質摂取量と筋肉量増加との関係について解明した。
方法は、得られた1700文献から本研究の目的に合致した105文献(2週間以上のたんぱく質摂取を行った無作為化対照試験。特定の重病者を対象としたものは除く)を厳選し、詳細なデータを抽出した。
得られた全データを用いて、筋力トレーニングの有無やたんぱく質の摂取量別にメタアナリシスを実施した。
総たんぱく質摂取量(試験食品由来+食事由来のたんぱく質摂取量)が明らかなデータ(92文献、4741名分)については、総たんぱく質摂取量と筋肉量変化との量反応関係を解析した(スプラインカーブ)。
量反応関係の解析は、2種類の条件で補正した。
◆補正条件① 年齢、性別、介入期間、筋力トレーニングの有無
◆補正条件② ①の条件+体重変化(体重変化に依存しない筋肉量増加を評価)
この研究の結果、次の4点が明らかになった。
1) 幅広い摂取量範囲(0.5~3.5 g/kg体重/日)にわたり用量反応関係が見られ、少量(0.1g/kg体重/日。平均的な体重の成人男女で5~7g/日程度)でもたんぱく質摂取量を増やすせば、筋肉量の増加に繋がることが明らかになった(図1)。
2) 特に1.3g/kg体重/日に達するまでの範囲で、たんぱく質摂取量の増加に対する筋肉量増加が大きかった(図1)。
3) 1.3g/kg体重/日を超えたたんぱく質摂取の範囲では、習慣的に筋力トレーニングを実施する人で効率的な筋肉量増加が期待されることが明らかになった(図2)。
なお、同研究成果は2020年11月に栄養学分野において評価の高い国際的なレビュー誌Nutrition Reviewsへ掲載されたほか、日本語版が本年8月に「栄養学レビュー」(ILSI Japan、女子栄養大学出版部)へ掲載されている。