軽度肥満を伴う2型糖尿病外科的治療の有用性・経済効果を国内で初めて検証  ジョンソン・エンド・ジョンソン メディカル カンパニー

 ジョンソン・エンド・ジョンソンメディカルカンパニーのエチコン事業部は19日、日本の軽度肥満を伴う2型糖尿病患者を対象に、外科的治療と薬物療法を中心とする内科的治療の効果を国内で初めて比較検討した研究結果を発表した。
 研究結果では、治療後1年目の糖尿病寛解(糖尿病治療薬を使用せずにHbA1c<6.5%となった状態)率が手術群59%に対し、薬物治療群で0.4%であった。 また、治療前と治療後1年目における月間薬剤費(中央値)の変化は、手術群では1万2650円から0円に減少した。
 これに対して薬物治療群では、5240円から5830円に増加し、血糖改善効果および医療経済面において外科的治療の有用性が示唆された。
 これらの研究内容は、7月15日に「Journal of Diabetes Investigation」(アジア糖尿病学会の機関誌、John Wiley&Sons発行)に論文掲載された。なお、同研究は、同社から四谷メディカルキューブ(理事長:安田聖栄氏)への研究業務委託を通じて行われた。
 糖尿病患者数は、生活習慣と社会環境の変化に伴い、近年急速に増加している。厚生労働省のデータでは、2017年時点の日本の糖尿病患者数は約329万人で、2014年の約317万人から大きく増加している。
 加えて、糖尿病患者数の増加に伴って関連する医療費も増大している。2018年の国民医療費を見ると、年間総医療費約43兆4000億円のうち糖尿病にかかる医療費は年間1兆2000億円で、約3%を占めており、社会に対し医療経済の面で大きな負担が強いられている。
 現在、2型糖尿病治療では、生活習慣の改善に加え薬物治療が広く行われている。これら内科的アプローチは有効な治療法であるが、患者によっては生活習慣改善や薬物療法の順守が困難なケースや、薬の副作用・薬剤費が長期にわたって掛かることなどにより、治療目標の達成が困難なケースも見受けられる。
 一方、欧米を中心に、肥満を伴う2型糖尿病に対する効果的な治療法として、外科治療(腹腔鏡下減量・代謝改善手術)が広く行われている。
 肥満症に対する減量・代謝改善手術は、胃の容量を小さくしたり、小腸の一部に物が通らないようにする(バイパス)もので、食事摂取量や消化吸収を減らし体重減少を得ようとする外科的治療である。
 日本では2014年にBMI35以上の高度肥満症患者で保険適用となり、2020年にBMI32.5以上で血糖コントロール不良の糖尿病患者まで保険適用の対象が拡大されている。
 同手術は、国内でも年間800症例程度行われているが、現状では保険診療の適応基準の制限もあり、外科治療を受けられる肥満2型糖尿病患者は未だ限定的である。
 今回の研究内容および結果の詳細は次の通り。

◆対象:軽度肥満(BMI 27.5~34.9kg/㎡)を伴う2型糖尿病患者
◆方法:四谷メディカルキューブの患者データから手術群を、JMDCの日本の保険者データベースから薬物治療群を抽出し、傾向スコアマッチングを用いてレトロスペクティブに治療効果(治療後1年目)を比較
◆結果
 ・治療後1年目の糖尿病寛解(糖尿病治療薬を使用せずにHbA1c<6.5%となった状態)率は、手術群で59%、薬物治療群で0.4%(p<0.0001)であった。

 ・治療後1年目に至適血糖コントロール(HbA1c<7.0%)が達成されたのは、手術群で75.6%、薬物治療群で29.0%(P<0.0001)であった。

・治療前と治療後1年目の2型糖尿病治療薬、降圧剤、脂質異常治療薬の月間薬剤費(中央値)の変化を見ると、手術群は1万2650から0円に減少し、薬物治療群では5240円から\5830円に増加した。

◆結論
 日本において、軽度肥満を伴う2型糖尿病患者に対する外科的治療(減量・代謝改善手術)は、薬物治療と比べて血糖改善効果と医療経済効果の両面で優れていることが示唆される。

◆同研究の研究責任者で四谷メディカルキューブの関洋介氏のコメント
 軽度肥満(BMI 27.5~34.9kg/㎡)の2型糖尿病患者を対象とした本研究で、薬物治療と比較して、外科的治療の有用性が、血糖改善効果のみならず医療経済面においても優れていることが示唆された。
 近年、腹腔鏡下減量・代謝改善手術は、2型糖尿病治療を主目的とする効果的な治療法(メタボリックサージェリー)として注目されているが、保険上の手術適応要件は未だ厳しく、外科治療の恩恵にあずかれない患者がたくさんいる。今後のさらなる保険適用拡大が期待される。

◆ジョンソン・エンド・ジョンソン メディカル カンパニー エチコン事業部事業部長クリストファー・リーガー氏のコメント
 糖尿病患者は驚くべき速さで増加し続けている。国際糖尿病連合(IDF)の推計によると、2019年の世界の糖尿病患者数(20~79歳)は4億6300万人で、2030年までに5億7800万人まで増加するといわれている。
 ジョンソン・エンド・ジョンソンはこれまでも、肥満・糖尿病の分野で研究をサポートしており、2017年11月には、2型糖尿病患者に対する外科的治療の有用性を示した結果を発表している。
 また、2021年7月には、肥満・糖尿外科手術の増加が新型コロナウイルス感染による死亡や入院を減少させる可能性が示唆され、「最終的に肥満の臨床的および経済的負担の減少が期待される」と結論づけるイギリスでの研究結果を発表した。
 超高齢化が進む日本では、今後、糖尿病患者数も医療費のさらなる増加が予想される。こうした状況下において、今回の研究は、軽度肥満の2型糖尿病患者に対する外科的治療の有効性を示しただけでなく、薬剤の使用量を減少させることで医療費増加の問題の解決に貢献するという一つの方向性を提示できたと考えている。
 我々は、今後も外科手術製品やソリューションの提供のみならず、様々な研究を通じて、治療の発展と社会問題解決に貢献していく。

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