【後編】がん悪液質治療薬エドルミズによるがんサポーティブケアへの期待  髙山浩一氏(京都府立医科大学 呼吸器内科学教授)

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【エドルミズの使い方とサポーティブケアについて】

エドルミズの服薬指導 
食事の影響を受け易いため起床時に服用、服用後1時間は食事を摂らないことに留意

 エドルミズは、非小細胞肺癌,胃癌,膵癌,大腸癌の悪性腫瘍におけるがん悪液質を効能効果とする。用法・用量は、通常、成人には100mgを1日1回、空腹時に経口投与する。服薬指導では、食事の影響を受け易いため起床時での服用や、服用後1時間は食事を摂らないことに留意したい。

 用法・用量に関連する使用上の注意には、①食事の影響を避けるため本剤は空腹時に服用し、同剤服用後1時間は食事をしない、②同剤投与により体重増加又は食欲改善が認められない場合、投与開始3週後を目途に原則中止す③12週間を超える本剤の投与経験はなく、体重、問診により食欲を確認する等、定期的に投与継続の必要性を検討するーが挙げられる。

 エドルミズの効能・効果に関連する使用上の注意には、次の要項がある。

  1. 切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌,胃癌,膵癌,大腸癌のがん悪液質患者に使用する。
  2. 栄養療法等で効果不十分ながん悪液質の患者に使用する。
  3. 6ヵ月以内に5%以上の体重減少と食欲不振があり,かつ以下の①~③のうち2つ以上を認める患者に使用する。
    ① 疲労又は倦怠感
    ② 全身の筋力低下
    ③ CRP値0.5mg/dL超,ヘモグロビン値12g/dL未満又はアルブミン値3.2g/dL未満のいずれか1つ以上
  4. 食事の経口摂取が困難又は食事の消化吸収不良の患者には使用しない。
  5. 「臨床成績」の項の内容を熟知し,臨床試験で対象とされた患者背景,本剤の有効性及び安全性を十分に理解した上で,適応患者の選択を行う。

Naチャネル阻害作用による心臓への影響と成長ホルモン刺激による高血糖に注意

 禁忌事項には、(1)過敏症の既往歴のある患者、(2)うっ血性心不全、(3)心筋梗塞又は狭心症、(4)高度の刺激伝導系障害(完全房室ブロック等)(5)クラリスロマイシン、インジナビル、イトラコナゾール、ネルフィナビル、サキナビル、テラプレビル、ボリコナゾール、リトナビル含有製剤、コビシスタット含有製剤を投与中の患者、(6)中等度以上の肝機能障害(Child-Pugh分類B及びC)、(7)消化管閉塞等,消化管の器質的異常による食事の経口摂取が困難な患者ーがある。
 (2)~(4)は、全て心臓に関する条件で、エドルミズはNaチャネルを阻害する作用があるため、徐脈になりがちになる。徐脈になれば、心臓から拍出される血液量が減少するので、心不全が悪化する恐れがある。
 (5)~(6)は、薬物代謝に関する問題で、(7)では、食欲だけが亢進すれば、患者が辛い状態になる。

 一方、慎重投与では、基礎心疾患(弁膜症,心筋症等)のある患者、心筋梗塞又は狭心症の既往のある患者、電解質異常(低カリウム血症,低マグネシウム血症,低カルシウム血症)のある患者、心臓に影響のあるアントラサイクリン系の抗がん剤投与歴のある患者に注意を要する。
 さらに、刺激伝導系障害(房室ブロック,洞房ブロック,脚ブロック等)のある患者、QT間隔延長の恐れや既往歴のある患者、軽度の肝機能障害、糖尿病患者も留意したい。
 エドルミズ投与では、成長ホルモンを刺激するため血糖値が上がる。高血糖が出現する場合があるので、血糖値に注意してほしい。また、肝機能障害の出現頻度は高くなはいが、可能性があるため定期的に血液検査で確認する必要がある。

がん悪液質の克服は筋力維持を目指したチーム医療がキーポイント

 エドルミズは、臨床試験結果から除脂肪体重の増加は確実に証明できた。だが、骨格筋量は増えてもそれに伴って筋力が増えていないのが大きな課題である。その理由は、筋肉量だけ増加しても負荷を掛けなければ筋力として改善しないことが大きな要因になっているものと考えられる。
 そこで、がん患者は、エドルミズの投与に加えて運動プログラムも実践し、筋力維持に務める必要がある。現在、がん患者にも可能な比較的簡単な運動プログラムの開発が進んでいる。
 また、がん患者が食べられないようになれば、患者と、家族や介護者との間に軋轢が生じ易い。「どうしても食べられない」患者と、「頑張って食べないとがんに勝てない」と思う家族や介護者とのれぞれの思いに隔たりがあるからだ。その解決のためにも、がん悪液質の病態を多くの人に知って貰う必要がある。
 医療従事者も例外ではなく、最も悪くなった状態の「不応性悪液質」をがん悪液質と考えている人が多い。もっと早い状態のがん悪液質を認識し、よりエドルミズが効果を発揮しやすい段階からの投与の重要性を知っておく必要がある。
 がん悪液質を克服するには、薬物療法(がん悪液質の発症機序に直接作用するエドルミズ)、運動療法(レジスタンストレーニング、持久力トレーニングなど)、栄養療法(経腸栄養剤、栄養補助食品、食べ方や調理法の工夫など)をチーム医療で展開する必要がある。
 医師、薬剤師、看護師、医学療法士などさまざまな医療従事者が加わって、患者の身体機能とQOLの維持・改善に寄与して頂きたい。

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