その一環で大日本住友製薬の薬剤師も出務
7日からスタートした大阪市のインテックス大阪ワクチン接種および、19日から始まる大阪府のマイドーム大阪ワクチン接種に、大阪府薬の会員薬剤師が参画し、ワクチンの管理や充填、接種者へのお薬相談を実施していく。14日に開かれた定例記者会見で、乾英夫会長が明らかにしたもの。
既にスタートしているインテックス大阪ワクチン接種は、午前9時から午後9時までの12時間を6時間交代制で3人ずつ大阪府薬の役員がローテーションを組んで対応している。
加えて、大日本住友製薬から大阪府薬への協力依頼により、同社従業員の薬剤師もこの輪番制の中に組み込む形で出務している。同会見で乾会長は、10日付で日本薬剤師会に対して、「薬剤師のワクチン接種に関する要望書」を提出したことも明らかにした。
大阪市が実施するインテックス大阪ワクチン接種は、6名の薬剤師が前半3名、後半3名に分かれて、予診票の確認、在庫管理、充填、薬相談などの業務に勤しんでいる。1日の接種者数は7日から9日が約1800名、10日から13日が約2400名、14日から約3600名に上る。
2日目に出動した堀越博一常務理事は、「薬に関しては、午前だけでも40問程度の質問があり、その合間合間にモデルナ製のワクチンの搬入・搬出や在庫管理を行った。薬の質問は、薬学的見地に基づいたしっかりとしたアドバイスをするように心がけた」と自らの経験を話す。現場の看護師からも、「薬剤師さんからの的確なアドバイスが欲しい」と要望されたという。
インテックス大阪ワクチン接種の6月中の薬剤師ローテーションは、大阪府薬役員が務めるが、7月からは「大阪市内の地域薬剤師会の薬局薬剤師および大日本住友製薬を始めとする製薬企業の薬剤師などで回していく」(乾氏)
一方、19日から始まる大阪府によるマイドーム大阪ワクチン接種も、午前9時から午後9時まで実施され、3人一組の薬剤師が6時間制で交代する。
道明雅代副会長は、「19・20日は、高齢者を対象に午後1時から午後7時まで実施し、21日よりフル稼働(午前9時~午後9時)する。3人の薬剤師の業務内容の内訳は、2人がお薬相談と問診表の確認、1人がワクチンの管理を行う」と説明した。
マイドーム大阪ワクチン接種の薬剤師ローテーションも、6月中は大阪府薬の役員が務める。7月以降は、「大阪市を除く大阪府の地域薬剤師会の薬局薬剤師・病院薬剤師(病診部)を中心に、大日本住友製薬等の企業や大学教員の薬剤師で組んでいく」(乾氏)。なお、大阪府では、「11月末まで、新型コロナワクチン集団接種を実施する」考えを示している。
乾会長は、9日に開かれた「 第11回大阪府新型コロナウイルス感染症対策協議会」にも言及し、「大阪ではようやく第4波が収束をみせ、入院患者数も徐々に減少している。協議会では、次の第5波に備えて、重症・中等・軽症の各病床を増やすための“病床確保計画の見直し”が議論された。自宅療法や宿泊療養についても、今回の教訓からその体制整備の重要性が確認された」と紹介。
さらに、「特に自宅療養に関しては、地域の薬局薬剤師がかかりつけの患者に薬を直接玄関まで届けたり、丁寧な服薬指導をしてきた。今後とも、かかりつけ薬剤師・薬局をしっかりと活用してほしい」と要望したことも明らかにした。
日薬に「薬剤師によるワクチン接種」を要望
一方、薬剤師によるワクチン接種は、本年5月31日に開催された厚労省のコロナワクチン接種に関する検討会で一旦見送られたものの、「今後の接種の進捗状況を見つつ、必要に応じて検討する」見解が示された。
現在、ワクチンの打ち手不足を表明している自治体は数多くあり、今後、64歳以下の成人への接種が実施されれば、打ち手不足はさらに深刻化すると考えられる。新型コロナ感染症以外のパンデミックが発生する事態も考慮しておく必要がある。
こうした中、大阪府薬は日本薬剤師会に対して「薬剤師によるワクチン接種に関する要望書」を作成し、「我々薬剤師は、全国各地で既に予診のサポートや、ワクチンの希釈、接種用シリンジへの充填などでワクチンの早期接種に協力をしているが、もっと国民の役に立ちたいと願っている」と断言。
その上で、「マスコミの報道でも薬剤師が打ち手になれるかどうかについて連日報道された。このような国難だからこそ、その期待に応えるべきである」との考えを強調する。
さらに、ワクチン接種のための研修にも言及し、「薬系大学では以前から筋肉注射の訓練をしているところもあり、大学でそれを学んでいない薬剤師は日薬の研修プログラムの発表を待っている」と指摘。
最後に、「国民の健康増進に寄与するため、薬剤師によるワクチン接種が可能となる体制整備を強く希望する」との文言で締め、山本信夫日薬会長に対して「主体的かつ積極的な表明」を要望した。