塩野義製薬は7日、Th2ケモカイン・TARCキット「HISCL TARC 試薬」について、同日付けで新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)陽性患者の重症化リスクの判定補助を使用目的とする適応追加の承認を取得したと発表した。同キットは、2014年にシスメックスと共同開発したもの。
COVID-19は、初期症状が軽症であっても後に急速に症状が進行するリスクのある疾患であり、その見極めが難しいことから、医療機関や宿泊施設での継続的な観察が必要となっている。これら施設での療養対象者に加え、実際に重症化する患者の増加による医療体制の逼迫、ひいては医療崩壊のリスクをいかに低減させるかが喫緊の課題だ。
同検査キットは、シスメックス製の全自動免疫測定装置HISCL-5000/HISCL-800によってケモカインの一種(系統名:CCL17)であるTARCの簡便な測定を可能とする。
国立国際医療研究センター(NCGM)が実施した臨床研究では、COVID-19で重症化する患者は発症初期から血清中のTARC値が低値を示すことが確認されており、1回の測定で患者の重症化を早期から予測できる分子マーカーとしてTARCの有用性が示されている。
COVID-19の重症化予測に用いられるマーカーとしては、本年2月3日に保険適用を受けたシスメックス製のインターフェロン-λ3キット「HISCL IFN-λ3 試薬」があり、主に入院患者に対して重症化の兆候を早期に把握することを目的に使用されている。
今回、同検査キットの適応追加承認により、SARS-CoV-2陽性患者の重症化予測に有用な新たな診断法が追加され、COVID-19の発症初期からの重症化リスクの判別により、リスクの高い患者を入院管理、リスクの低い患者を宿泊療養や自宅療養とするなど個別に最適な措置につなげていくことが期待される。