新型コロナワクチン接種前に知っておきたいこと 谷口英喜氏(済生会横浜市東部病院の医師で患者支援センター長)

谷口氏

 新型コロナワクチンの集団接種が進む中、ユーグレナは、谷口英喜氏(済生会横浜市東部病院の医師で患者支援センター長)が解説する「ワクチン接種前に知っておきたいことワクチン接種前に知っておきたいこと」を公表した。
 新型コロナワクチンの接種が開始し、すでに接種完了したという医療従事者、高齢者がいる。どれくらい有効であるのか、どんな副反応があるのかなど、不安を覚える人もいる。
 一般的にワクチン接種する際に、その効果を高め、副反応を低減するために準備できることはあるのか。
谷口英喜氏が、「ワクチン接種前に知っておきたい ワクチン接種に向けて、するといいこと・避けること」について解説した。

そもそもワクチンとは?

 感染症にかかると、原因となる病原体(ウイルスや細菌など)に対する「免疫」(抵抗力)ができる。免疫ができることで、その感染症に再びかかりにくくなったり、かかっても症状が軽くなったりするようになる。
 このような体の仕組みを使って病気に対する免疫をつけ、免疫を強くすることを目的に、ワクチンを接種する。

新型コロナワクチンも該当する、「mRNAワクチン」って? ワクチンの種類

 ワクチンの種類には「生ワクチン」、「不活化ワクチン」、「トキソイド」、「mRNAワクチン」があり、新型コロナワクチンは「mRNAワクチン」に該当する。

生ワクチン… 生きている病原体(ウイルスや細菌)が持っている病原性を弱めたものだ。その疾患に自然にかかった状態とほぼ同じ免疫力をつける。病原性を弱くしたウイルスや細菌が身体の中で徐々に増えるので、接種後1~3週間に自然にかかったのと同じような軽い症状が出ることがある。

生ワクチンの例:MR(麻しん風しん混合)、麻しん(はしか)、風しん、水痘(みずほうそう)、BCG(結核)、おたふくかぜ

不活化ワクチン… 病原性を無くした細菌やウイルスの一部を使ったもの。生ワクチンに比べて免疫力がつきにくいといわれ、何回かに分けて接種する必要がある。

不活化ワクチンの例:DPT-IPV四種混合(D:ジフテリア・P:百日せき・T:破傷風・IPV:不活化ポリオ)、DT二種混合(D:ジフテリア・T:破傷風)、日本脳炎、インフルエンザ、A型肝炎、B型肝炎、肺炎球菌、不活化ポリオ

トキソイド… 細菌の産生する毒素(トキシン)を取り出し、免疫を作る能力はありながらも毒性をなくしたものである。「不活化ワクチン」に分類されることもある。

トキソイドの例:ジフテリア、破傷風のワクチン

mRNAワクチン…

 病原体を構成するタンパク質の設計図を身体に投与することで免疫をつけるものだ。新型コロナワクチンとして開発されているものの多くがこのmRNA ワクチンである。

 新型コロナウイルスの場合、ウイルスの周囲のスパイクタンパク質というトゲトゲした部分に対する免疫をつけるために、この部分の設計図が書かれた mRNA ワクチンを投与する。

 スパイクタンパク質の部分の設計図だけでウイルスの遺伝子本体は入っていないため、ワクチンを打つことで新型コロナウイルスに感染することはない。また、mRNAは細胞の核の中に入らないので、ヒトの遺伝子に組み込まれることもない。

 mRNAは、細胞に取り込まれてから20秒から20分で分解される。作られたタンパク質も10日以内には分解されいずれも体内に残らない。

アジュバントによりワクチンのはたらきが強化

 “アジュバント”とは、ワクチンと一緒に投与することでワクチンの効果を高める成分のことである。たとえば、発育鶏卵を用いて作られるインフルエンザワクチンの抗原は、安定して大量に製造するにはまだまだ課題があり、接種1回に必要な抗原の量を減らすことでワクチン自体の供給数を増やす工夫をする。このときに、抗原の働きを増幅させるためにアジュバントと呼ばれる成分を混合している。

 ワクチンとは?もともと備わった免疫力を活用して抗体を作る仕組み

 ワクチンは、治療薬剤とは異なり、自分に備わった免疫能力を活用して抗体を作るものだ。従って、効果を期待するには、もともとの免疫力が高いに越したことはない。

 特に、加齢に伴い免疫の主役である胸腺(胸骨の裏にある免疫産生組織)という組織が退化していく。そうするとワクチンを接種しても十分な抗体が産生できない。ワクチンの効果を十分に出すために、免疫力を強化しておく必要がある。そのためには、規則正しい生活を送り、3度の食事をきちんと摂り、十分な睡眠を意識して体力を蓄えることも大切である。

 水分や電解質不足による脱水も、体内の器官に必要な栄養を行きわたらせる血液の循環に影響したり、粘膜を乾かせてしまうことから、免疫に負担をかける結果を招く。

 ストレスで交感神経ばかりが優位になっている状態も免疫力の低下を招くので、過度なストレスを避けるよう心掛けることも大切だ。

免疫力を向上させる効果が期待できる食品、ヨーグルト・ユーグレナ・マイタケ

ワクチンの効果を高めるには日頃の免疫力が大事。
“免疫力を向上させる効果”が期待できる食品

免疫力を向上させる効果が期待できる食品、ヨーグルト・ユーグレナ・マイタケ

 ワクチンによって抗体を得るには、日ごろの免疫力を高めておくことが重要である。例えば、ヨーグルト、漬物、納豆などの発酵食品には乳酸菌や納豆菌が含まれており、それらは腸内環境を整えることが知られている。免疫細胞の70%は腸内にいるとされ、腸内環境が整うこと自体が免疫力の向上につながると言われている。乳酸菌の中には、それ自体が免疫細胞を活性化する種類があることも知られている。また、マイタケをはじめとするきのこ類も免疫力を向上させる効果が期待できる。

 さらに、藻の仲間であるユーグレナに含まれる不溶性の食物繊維「パラミロン」が免疫力の向上や免疫バランスの調整に寄与することが分かっている。ユーグレナは、含まれる栄養素が豊富で、自律神経のバランスを整えてストレスによる諸症状を緩和させる働きもある。
 自律神経のバランスの乱れは、免疫バランスの乱れにもつながるため、そのことを介しても、免疫力をサポートしてくれると期待できる。ユーグレナを継続的に摂取することで、免疫が常に戦う準備をしている状態になるため、習慣化がおすすめの食品である。市販のパック飲料や粉飲料、サプリメントなどでも摂ることができる。

 これらの食品を恒常的に摂取することでワクチン効果を増幅させることが期待できるかもしれない。また、ウイルスは変異するので、必ずしもそのワクチンだけで防ぎきれるとは限りません。そういう意味でも、日頃からの免疫力の向上が大切である。
 大前提として、バランスの良い3度の食事を意識し、その中でこれらの食品を取り入れてみるのもお薦めだ。

副反応を軽減することはできる?

 ワクチンを打った後に出るのぞましくない身体の症状を副反応と呼ぶ。副反応には2種類あって、接種直後におこるアナフィラキシーショック、これは体調によるものとは限らないので防ぎようがない。万が一起きても、医師による適切な対応がなされるので安心してほしい。
 一方、遅発性に起きる発熱、筋肉痛、関節痛、全身倦怠感などは、それが起きたときの体力によりダメージが違ってくる。ダメージに耐えうるように普段からの体力強化が必要だといえる。
 イメージとしては、これから山に登ろう、100m走ろう、そんな時に耐えうるような体力を作っておくことで副反応のダメージを軽減できる。
 また、ワクチン接種後に発熱してしまうというケースがあるようだが、その時も自己判断で薬を飲んでしまうことはお薦めできない。症状が重い場合は必ず医師に相談しよう。
 発熱に伴い大汗をかいたり食欲がなくなったりといった症状がある場合、脱水を起こすリスクがあるので、塩分、糖分、カリウムが吸収されやすい濃度で含まれた経口補水液を飲んで脱水を回避することを推奨したい。

ワクチン接種の前・後、に避けたほうがいいこと

 ワクチン接種前にしてはいけないこととしては、汗をかくような激しい運動、寝不足、アルコール摂取も好ましくない。ワクチン接種には万全の体力で臨むようにしよう。
 ワクチンの接種後に関しては、1回目の新型コロナワクチン接種後はほぼ筋肉痛が起こり、接種部位を中心に腕があがらないくらいになる。注射部位を使用する作業や運転なども控えるようにしたほうが良いだろう。また、激しい運動をしてしまうことも筋肉痛を増悪させる。
 2回目の接種後には、高い確率で発熱、筋肉・関節痛が起こると言われている。全身倦怠感なども起こるので、集中力が必要な業務や運転などは避けるべきだ。
 もちろん、接種を受けても副反応が起きない場合も多いので、過剰な心配はしなくても大丈夫である。
 もしも、接種後に副反応で痛みなどが現れたときは、原則、医師の指示・処方に従おう。必要に応じて医師から鎮痛解熱剤が処方される。自己判断での内服はお勧めできない。こうした対策を意識しながら、ワクチン接種に向けて免疫の状態や体力を万全に整えておこう。

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