武田薬品は24日、開発中のデング熱ワクチン(TAK-003)について、現在進行中のグローバル臨床P3相試験(TIDES試験)で有効性・安全性を示したと発表した。
TIDES試験では、ワクチン接種後3年間にわたる長期評価で、デング熱感染およびデング熱感染による入院に対して持続的な予防効果(被験者のワクチン接種前のデング熱感染歴の有無を問わない)が示され、懸念されるような安全性リスクも認められなかった。
同試験には、デング熱流行国であるラテンアメリカやアジア地域において2万人以上の小児・若年層(4歳から16歳)の健常被験者が登録されている。
TIDES試験の36ヵ月間にわたる追跡調査の安全性および有効性データは、22日に開催された第17回国際渡航医学会(CISTM: Conference of the International Society of Travel Medicine)で発表された。
TAK-003の3年間(2回目接種後36ヵ月)にわたる長期評価では、同ワクチンのVCD(ウイルス学的に確認されたデング熱)に対する全般的(ワクチン接種前の血清反応の陽性/陰性を問わず)VE(ワクチン有効性)は62.0%(95%信頼区間(CI):56.6%~66.7%)を示し、ワクチン接種前の血清反応が陽性の被験者群(血清反応陽性群)でのVCDに対するVEは65.0%(95%CI:58.9%~70.1%)であった。血清反応が陰性の被験者群(血清反応陰性群)でのVCDに対するVEは54.3%(95%CI:41.9%~64.1%)を示した。
また、同ワクチンのデング熱感染による入院(デング熱入院)に対する全般的なVEは83.6%(95%CI:76.8%~88.4%)を示し、血清反応陽性群でのデング熱入院に対するVEは86.0%(95%CI:78.4%~91.0%)、血清反応陰性群でのデング熱入院に対するVE は77.1%(95%CI:58.6%~87.3%)であった。
デングウイルスの各血清型(計4種)に対するTAK-003のVEは、各血清型で異なっていたが、この結果は、これまで報告してきた結果と一貫性のあるものであった。
また、安全性においても全般的に忍容性が良好で、懸念されるような安全性リスクも認められなかった。
これらの結果は、TAK-003がデング熱の脅威にさらされている地域に住む人々やその地域へ移動する人々をデング熱から守る可能性を高めることを示唆している。
既報の通り、TIDES試験では、主要評価項目であるワクチン2回目接種後12ヵ月の追跡調査期間におけるVCDに対する全般的なVEが達成され(VE:80.2%、95%信頼区間(CI):73.3~85.3%、p<0.001)、また評価に十分な症例数を有するすべての副次評価項目(18ヵ月の追跡調査期間における評価)についても設定していた基準を達成している。
TIDES試験では、主にデング熱感染の外来患者に全般的VEの経時的な減弱が観察されたため、その対処として、本試験計画に追加接種の評価を含める変更を行った。武田薬品は、36ヵ月間の探索的解析結果を本年中に査読付き学術誌に発表する予定だ。
TIDES試験の36ヵ月間にわたる追跡調査の安全性および有効性データは、欧州連合(EU)およびデング熱流行国における承認申請資料に含まれており、今後、2021年内に承認申請が予定されている米国を含むその他の国々における申請資料にも含まれる見込み。
武田薬品はは、これまでのTAK-003の成人と小児を対象とした臨床試験データに基づき、4歳から60歳の人々(デング熱感染歴の有無を問わない)へのデング熱感染の予防を適応とした同ワクチンの承認を目指す。デング熱ワクチンに対するニーズとして、成人および小児において、デング熱の感染歴に関係なく使用できるきることが求められている。
◆スリランカNegombo General病院デング熱研究機関所属で、TIDES試験治験責任医師のLakKumar Fernando氏のコメント
デング熱の流行は突発的に発生するため、医療機関では、その重症患者や検査を求める人々の増加により医療崩壊をきたす可能性がある。
今回のデング熱ワクチンの長期的な評価結果は、このワクチンが、デング熱のアウトブレイクの予防に役立ち、デング熱感染歴の有無に関わらず、感染から人々を守り、デング熱感染による入院率を減少させることを示唆している。
懸念される安全性リスクが確認されていないことも、重要な点である。