一人ひとりに最適な医療を届けるヘルスケアカンパニー実現に向け「中計21-25」策定  田辺三菱製薬

左から田原氏、上野氏

 田辺三菱製薬は3日、Webでの事業説明会を開催し、上野裕明代表取締役社長が「企業理念」に代わる「MISSION」や、2030年のめざす姿として「VISION 30」を紹介。その上で、「VISION 30」実現の基盤を確立するための前半5年の目標を示した「中期経営計画21-25(2021年4月~2026年3月)」を発表した。
 新たに策定されたMISSIONは、「病と向き合うすべての人に、希望ある選択肢を」VISION 30は、「一人ひとりに最適な医療を届けるヘルスケアカンパニー」 上野氏は、2030年の環境認識として、「医療現場が病院だけでなく在宅へと拡がり、患者と家族の満足度が重視される中、“日々の生活に溶け込んだトータルケアが求めらる」と強調した。
 中計21-25では、2030年の飛躍に向けて、「プレシジョンメディシン」と「アラウンドピルソリューション」を成長戦略の軸とする。「プレシジョンメディシン」では、有効性と安全性が高い患者層をあらかじめ特定し、最適な患者層へ治療満足度の高い薬剤を提供する。 中計21-25 の売上高目標については、三菱ケミカルホールディングスヘルスケア分野として2022年度4500億円、2025年度5000億円超を掲げており、その殆どを田辺三菱製薬が占める。 中計16-20で達成した国内売上高3000億円を維持しながらの増収を「米国の成長やM&Aなど」で達成する。
 「アラウンドピルソリューション」では、治療だけでなく、予防・未病、重症化予防、予後にも目を向け、治療薬を起点に患者の困りごとに対応することで、患者と家族のQOL向上に貢献する。
 上野氏は、「特定の疾患で競争優位性を築くことで、パートナリング機会を拡大し、自社の製品・サービスを超えた成長を目指す方向へ転換する」考えを強調。
 さらに、成長戦略を実現すべく、「RD投資に加え、創薬基盤・デジタル技術等への多様な投資を行う」と明言し、「疾患の原因やフェノタイプから創薬手法を確立すると同時に、治療薬を起点にしたソリューションの展開へ繋げ、VISION 30の基盤を構築する」と訴えかけた。
 VISION 30実現にむけた成長戦略骨子となる「プレシジョンメディシン」と「アラウンドピルソリューション」については、「2つのソリューションを通して、健康医療データを収集・解析し、治療薬とソリューションの価値を向上さる」と断言。その上で、「中枢神経や免疫炎症などの領域で『この疾患のことなら田辺三菱製薬』と呼ばれる強みを築き上げたい」と抱負を述べた。
 一方、中期経営計画21-25は、VISION 30に向けた変革期として、「研究開発」、「事業展開」、「経営基盤」の3つの観点で経営に取り組む。
 同中計の売上高目標は、三菱ケミカルホールディングスヘルスケア分野として2022年度4500億円、2025年度5000億円超を掲げており、その殆どを田辺三菱製薬が占める。田辺三菱製薬の中期経営計画16-20では、国内売上高3000億円を達成しており、そこを維持しながらの増収施策について上野氏は、「米国を中心に大きな成長を考えている。また、5年間に想定されるM&Aにより、幾つかの観点から成長を遂げていく」と説明した。
 「研究開発」は、中枢神経・免疫炎症領域中心にプレシジョンメディシンを実現。ワクチン領域に注力し、予防医療に貢献する。
 中枢神経領域では、ラジカヴァの研究開発によるノウハウ・情報が多い筋萎縮性側索硬化症(ALS)を入口に、原因遺伝子や病態生理が共通する神経難病に対し、疾患の遺伝子をいち早く特定し、新たなモダリティに挑戦する。
 また、パーキンソン病の治療に向け、現在、開発を推進しているND0612に代表されるデザインドファーマ(医薬品とデバイスの組み合わせ製剤)も展開していく。
 免疫炎症領域では、全身性強皮症や全身性エリテマトーデスのように病態が多様で、未だ有効な治療薬のない疾患を中心に患者を層別したフェノタイプ創薬に挑戦する。
 ワクチン領域では、メディカゴ社のVLPワクチンで社会課題であるCOVID-19の予防に挑戦し、国内ではBIKENグループとともにMT-2355(5種混合ワクチン)の上市をはじめ、感染症予防に貢献していく。
 「事業展開」では、米日を中心とした事業強化と新たな顧客接点の確立に向けてアラウンドピルソリューションを展開。米国を今後の成長を期待する地域として位置付け、ラジカヴァ/MT-1186(ALS、P3段階)、MT-7117(EPP:赤牙球性プロとポルフィリン症/XLP:X連鎖性ポルフィリン症=P3段階、全身性強皮症=P2準備中)の価値最大化策、アラウンドピルソリューションの提供を通じ、事業基盤の強化と新たな顧客接点を構築する。
 また、パーキンソンのQOLに貢献するデザインドファーマのND0612(低侵襲性の持続的ドパミン皮下注投与ポンプ製剤、上市目標2024年)上市に向けた準備を進め、成長ドライバーの確立を目指す。
 日本においては、マザーマーケットとして維持するため、今ある重点疾患領域の糖尿病・腎、免疫炎症、中枢神経、ワクチンでの基盤を深掘し、新たな基盤への面拡を行う。
 重点品、上市予定であるMT0551(NMOSD:視神経脊髄炎スペクトラム障害=申請段階、重症筋無力症=P3)、MT5199(遅発性ジスキネジアP3)、MT5547(変形性関節症P3)、MT2355(5種混合ワクチンP3)、TA7284(SGLT2阻害剤カナグルの糖尿病性腎症P3)、MT1186(ALS P3)の6つの開発品の製品価値最大化を図る。
 中国・アジアでは、日米の上市製品を横展開し、グローバル自社品の価値最大化を目指す。また、事業の合理化を通じた収益力の向上と事業基盤の強化を実現する。
 「経営基盤」では、VISION 30を実現する経営基盤の構築と経営資源の最適配分を行う。具体的には、組織・人材改革として、イノベーション創出に向けた、組織と人材の専門性・多様性・デジタル化を促進。事業強化に向けた戦略的導入・提携、創薬、デジタル技術を獲得すべく多様な投資を展開する。
 加えて、成長戦略とバリューチェーンの生産性向上に向けたデジタル基盤を構築し、デジタルトランスフォーメーションを推進する。
 今回、MISSION、VISION 30を実現するため、2018年に特定した7つのマテリアリティを一部見直し、8つのマテリアリティとして新たに特定した。
8つのマテリアリティは次の通り。
◆新たな価値を持つ医薬品・医療サービスの創製
◆製品の品質保証と安定供給
◆製品の適正使用の推進
◆医療アクセスの向上*
◆ステークホルダーエンゲージメント*
◆従業員の健康と多様性の尊重
◆環境に配慮した事業推進*
◆倫理的で公正・誠実な事業活動
 * 2018年特定のマテリアリティから、変更・追加した項目
 

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