田辺三菱製薬の2020年度決算は、売上収益3778億円(対前年比0.5%減)、コア営業利益210億円(同10.4%増)、営業利益△585億円(-)、当期利益(親会社帰属)△469億円(-)
となった。田辺三菱製薬の親会社である三菱ケミカルホールディングスヘルスケアセグメントの2020年度売上収益は3906億円、コア営業利益は179億円。
田辺三菱製薬の売上収益の内訳は、国内3130億円(同0.3%減)、海外648億円(同1.6)。
国内医療用医薬品は、関節リウマチなどの治療剤「シンポニー」、2型糖尿病治療剤である「カナグル」、「カナリア」、アレルギー性疾患治療剤「ルパフィン」、ワクチンの増収に加え、2020年3月より潰瘍性大腸炎の適応追加した「ステラーラ」の寄与などにより、 2020年4月の薬価改定の影響や、ジェネリック医薬品の侵食拡大の影響をカバーして、前期比0.1%増収の3047億円となった。
ロイヤリティ収入等は、ノバルティス社に導出した多発性硬化症治療剤「ジレニア」等のロイヤリティ収入の減少などにより前期比8.9%減収の159億円となった。
コア営業利益は、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う活動自粛により、販売費や研究開発費が減少した結果、増益となった。
営業利益は、非経常項目において、ニューロダーム社が開発を進めているパーキンソン病の治療薬について、臨床試験の遅延、競合品の開発状況等から将来の収益性が低下する見込みとなり、直近の市場調査結果を踏まえて事業計画を見直した結果、製品に係る無形資産の減損損失を845億円計上。また、戸田事業所の譲渡などにかかる固定資産売却益を81億円などを計上した。
2021年度業績予想は、売上収益4075億円(前期比7.9 %増)、コア営業利益260億円(同23.6 %増)、営業利益300億円(同885 億円増)、親会社の所有者に帰属する当期利益175億円同(644億円増)。
国内医療用医薬品は重点品が伸長するものの、薬価改定影響により減収となる見通し。今期上市予定の新製品には、本年2月5日に製造販売承認を取得した「テネリアOD錠」がある。同剤は、国内初のOD錠として、薬価収載後、速やかに第一三共とのコプロモーションで販売開始を予定している。高齢患者や嚥下機能が低下した患者におけるさらなる利便性や服薬コンプライアンスの向上が期待される。
一方、海外においてメディカゴ社・新型コロナワクチンの実用化を見込み、売上収益全体としては増収を予想している。
新型コロナワクチン等の後期開発品にかかる開発費用や国内・海外における新製品の販売準備費等が増加するが、増収効果によりコア営業利益は増益となる見通し。
営業利益並びに親会社の所有者に帰属する当期利益は、主に前期にニューロダーム社の製品に係る無形資産減損損失845億円を計上した反動により増益が予想される。
三菱ケミカルホールディングスが12日に開いたオンラインによる決算説明会で伊達英文執行役常務は、「ヘルスケアセグメントの売上収益では、ノバルティスから仲裁申し立てによりジレニア(多発性硬化症治療薬)のライセンス収入の収益認識を停止している」と説明した。
田辺三菱製薬子会社のメディカゴ社(カナダ)で開発中の新型コロナワクチン(MT-2776)にも言及し、「日本国内への導入についても検討されている」と明かした。
MT-2776は、植物由来VLPワクチンで、現在P3段階にあり、カナダにおいて段階的承認申請を開始している。本年2月には、FDAからファスト・トラック指定を取得している。
被験者は、カナダ、米国、その他の国の健康成人、高齢者及び基礎疾患を有する成人約3万例。VLPワクチン3.75µgとGSK社のアジュバントを併用し、21日間隔で2回投与する。
今後は、2021年度2Qにカナダでの承認申請手続きを完了し、2021年内の実用化を目指す。