武田薬品は28日、EGFR エクソン20 挿入変異標的治療薬mobocertinib(一般名、開発コード:TAK-788)について、FDAが転移性非小細胞肺がんの成人患者に対する治療薬としての新薬承認申請(NDA)を優先審査に指定したと発表した。
対象は、プラチナ製剤ベースの化学療法による治療歴を有し、FDAで承認された検査で検出された上皮成長因子受容体(EGFR)エクソン 20 挿入変異を伴う転移性非小細胞肺がんの成人患者。
mobocertinibは、EGFRエクソン 20 挿入変異を選択的に標的とするよう特異的に設計された初めての経口治療薬である。
今回の新薬承認申請は、主に転移性非小細胞肺がん患者を対象に、経口投与されたmobocertinibの安全性および有効性を評価するP1/2 相試験の結果に基づくもの。
この申請は、FDAの迅速承認制度により行われた。同審査は、FDAのオンコロジー・センター・オブ・エクセレンス(腫瘍研究拠点:OCD)が主導する Project Orbis のもとで実施されており、このプロジェクトは参加国における抗がん剤の同時申請・同時審査の枠組みを提供するものである。
武田薬品は、新薬承認申請審査中、mobocertinibの処方が適切と判断された米国の患者を対象として、拡大アクセスプログラム(Expanded Access Program: EAP)(NCT04535557)を実施している。
WHOによると、非小細胞肺がんは最も一般的な肺がんであり、毎年世界中で診断される肺がんの推定新規患者数180万人の約85%を占めている。
上皮成長因子受容体(EGFR)エクソン20挿入変異を伴う転移性非小細胞肺がん患者は、非小細胞肺がん患者の約1~2%であり、欧米人よりもアジア人で多くみられる。
現在、エクソン 20挿入変異に対する FDAが承認した治療薬は存在しておらず、既存のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬および化学療法の効果は限定的であるため、EGFRエクソン20挿入変異を伴う疾患は他のEGFR変異を伴う疾患よりも予後が不良である。
武田薬品は、毎年世界中でEGFR エクソン20挿入変異を伴う転移性非小細胞肺がんと診断される患者約3万人(米国だけで3000 人)に標的治療薬の選択肢を届けることを目指し、この疾患を対象とした治療薬の研究開発に継続的に取り組んでいる。
◆武田薬品Oncology Therapeutic Area Unit HeadのChristopher Arendt氏のコメント
EGFR エクソン 20 挿入変異を伴う転移性非小細胞肺がんの患者は、生存率が好ましくなく、既存の治療選択肢があまり効果をもたらさないため、大きな困難に直面している。
プラチナ製剤ベースの化学療法の治療歴を有する EGFRエクソン20挿入変異を伴う非小細胞肺がんの患者に、有効な経口治療薬としてmobocertinibを届けることへの一歩前進を嬉しく思う。今後、米国や世界中の規制当局と継続して協議を進めていきたい。