英国で高血圧患者向け遠隔診療サービスを開始し、家庭血圧による投薬プランを医師に提案  オムロンヘルスケア

 オムロンヘルスケアは14日、本年4月より、英国で高血圧治療における遠隔診療サービス“Hypertension Plus(ハイパーテンションプラス)”の提供を開始すると発表した。
 Hypertension Plusは、患者が朝晩に家庭で測定した血圧データを医師と共有し、医師は電子カルテに接続された管理用画面で患者の血圧データを詳しく確認できる。さらに、患者の属性や血圧レベルに応じて、3か月分の投薬プランを医師に提案する。
 また、服薬後の血圧値から薬の変更が必要かどうかを判別、変更が必要な場合は医師に新たな投薬プランを提案する。投薬プランの変更プロセスがオンラインで行えるため、患者は通院することなく自宅に居ながら医師による投薬を受けることができる。
 Hypertension Plusが提案する投薬プランは、オックスフォード大学で行われた臨床研究により降圧効果が確認された在宅投薬変更プログラムを採用。英国の高血圧ガイドラインに準拠している。
 これにより、医師は限られた時間内で患者の状態を詳しく確認し、臨床研究によって効果が確認された投薬プランを参考にしながら、診療を効率的に進めることが可能である。また、患者は、家に居ながら服薬管理ができるので、通院の負担を軽減しながら高血圧治療を継続できる。
 英国では、成人の約3割が高血圧症といわれている。英国政府が運営する国民保険サービスNHS(National Health Service)は、2030年までに国内の血圧コントロール率80%を目標に掲げている。
 その一方で、最新のコントロール率は60%といわれており、更に血圧コントロール率を高めていく必要がある。英国の場合、緊急時を除き、受診する医療機関は事前に登録した「かかりつけ医」と決められている。
 かかりつけ医によっては多くの患者を抱えているため、待ち時間が長く、十分な診察時間を確保できない場合があり、それを理由に治療を中断してしまう患者も指摘されている。治療効率の向上と治療継続が高血圧治療の重要な課題となっているのが現状だ。
 Hypertension Plusは、年齢や人種、合併症などにより降圧薬(血圧を下げる薬)選択基準を定めている英国国立医療技術評価機構(NICE)が定める高血圧ガイドラインに準拠している。
 また、オックスフォード大学で行われた臨床研究で降圧効果が確認された在宅服薬変更プログラム(TASMINプログラム)を採用している。TASMINプログラムは、従来の治療法適用時と比較した場合、12か月後の降圧効果は収縮期血圧において4.7mmHgの有意差が確認されている。
 さらに、3か月分の投薬プランが提案されるので、患者は毎月の通院負荷を軽減でき、医師は診察時間の効率化を実現できる。同サービスでは、患者が家庭で測定した血圧データや自覚症状を医師と共有できるため、医師および医療スタッフによる投薬をオンラインで完結でき、アラート機能で継続的な服薬支援も行える。
 Hypertension Plusは、NHSが運営する地域医療機構CCG(Clinical Commissioning Group)による採用判断のもと、各地域の「かかりつけ医」と呼ばれるGP(General Practitioner)へ導入される。今後は、サービス提供開始から数か月間で150GPへの導入を目指す。

・医師向け管理画面①
画面左:血圧レベルに応じて色分けされた患者リスト
画面中央:医師へのタスクリスト
画面右:患者ごとの血圧グラフとデータ
・ 医師向け管理画面②
画面左:患者の登録情報
画面中央:3か月分の投薬プラン提案
図1・患者用スマートフォンアプリ画面
服薬時間や血圧測定時間など、1日の血圧治療スケジュールを表示
図2・患者用スマートフォンアプリ画面
血圧管理画面。血圧の値やグラフを表示
図3・患者用スマートフォンアプリ画面
投薬プラン画面。過去の投薬プランや服薬状況を表示


 

 オムロンヘルスケアは、2019年より遠隔診療サービスの展開に取り組んできた。家庭で測定した血圧や体重等のバイタルデータを医師と患者が共有することで、通院時だけでは確認しづらかった身体の状態変化を早期に捉え、個人にあった治療・投薬指導を効率的におこなえる環境づくりと、医師不足や通院負荷の軽減といった社会的課題の解決にグローバルで取り組んでいる。
 各国での取り組み内容は、次の通り。

・アメリカ:高血圧症などの慢性疾患患者向け遠隔患者モニタリングシステム(Remote Patient Monitoring)”VitalSight™”の正式運用を、2020年9月にニューヨーク州のマウントサイナイ病院でスタートさせた。
 患者が家庭で測定したバイタルデータを電子カルテに送信し、医師や医療従事者と共有できる。血圧状態に異常が生じれば通知するなど、患者の状態に合わせた的確な医療介入を実現する環境を提供している。

・シンガポール:アジア地域におけるコーポレートウェルネス事業(従業員向け健康増進サービス)とオンライン診療サービス事業の立上げを目的として、政府運営フィットネスセンター決済システムを開発するiAPPS社と合弁会社(HeartVoice社)を2019年に設立した。
 高血圧症などの慢性疾患リスクがある社員を企業健診で早期に発見し、血圧状態に応じて家庭血圧の遠隔モニタリングを組み合わせたオンライン診療の受診を勧めるなど、予防から治療までトータルでサポートできるサービスを提供している。

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