アンジェスは12日、慢性椎間板性腰痛症(DLBP)治療用核酸医薬品の NF-kB デコイオリゴ DNA(開発コードAMG0103)について、後期P1 相臨床試験(1 回、椎間板内投与)で、公表済みの6ヵ月経過観察結果に続き、この期間を含む 12ヵ月の経過観察結果において安全性と有効性の良好な結果を確認したと発表した。
同試験は、多施設共同プラセボ対照無作為化二重盲検試験で、6ヵ月の二重盲検(パート 1)に引き続き、さらに6ヵ月の継続評価(パート 2)をしたもの。対象患者は、32〜70 歳(平均年齢:53.5 歳)の慢性椎間板性腰痛症患者の男女 25 症例。
AMG0103は、12ヵ月間の観察期間を通して重篤な有害事象(SAE)は認められず、高い安全性を示した。有効性についても探索的にデータを評価したところ、投与早期に腰痛は大幅に軽減し、腰痛の抑制は投与 12ヵ月後まで継続した。また、患者自身からも高い満足度が得られた。
慢性椎間板性腰痛症は、患者の日常生活に大きな支障を来しており、主に生産性の低下と賃金の損失により、社会に大きな経済的損失を引き起こす。 腰痛症は、うつ病、糖尿病、血管疾患、呼吸器疾患などを上回る生活障害の要因とされている。
人口統計学的、慢性椎間板性腰痛症の医療ニーズの観点から、AMG0103 は大きな市場を形成する可能性を秘めている。
治験責任医師のSteven Garfin氏(カリフォルニア大学サンディエゴ校医学部長で整形外科教授)およびアンジェス最高経営責任者山田英氏のコメントは、次の通り。
◆Steven Garfin氏
AMG0103は、素晴らしい安全性プロファイルを有し、12 ヵ月にわたり腰痛を有意に軽減しており、慢性椎間板性腰痛症に苦しむ患者に対して画期的治療薬となる将来性があると考えている。
さらに、腰痛の軽減に加えて、椎間板の高さを回復させる可能性が示唆されたことは注目に値する。 AMG0103は、慢性椎間板性腰痛症の治療に使用される世界初の低侵襲デコイオリゴヌクレオチドになる可能性がある
◆山田英氏
AMG0103 10mg 椎間板内単回投与は、安全で、腰痛の改善、患者の高い満足度が得られ、その効果は長期に持続することが確認された。さらに、椎間板の高さを回復させる可能性が示唆されたことは、椎間板の変性を抑制する可能性を秘めている。
また、経口鎮痛剤の使用削減にもつながることが示唆される。この臨床試験を進めるにあたり、患者、研究者、治験担当者、そのスタッフの皆様の熱意に心から感謝する。我々は、今回の結果を確認するために臨床試験をさらに進め、FDAおよび世界の他の規制当局からの販売承認取得を検討する予定である。
【同試験結果の詳細】
主要評価項目は、AMG0103の投与後12 ヶ月までの忍容性と安全性の評価である。AMG0103(0.3mg、3.0mg、10.0 mg)を椎間板内に直接投与し12ヵ月後まで安全性を評価した結果、臨床的に問題となる可能性のあった腎機能障害、肝機能障害、血液機能障害はいずれも認められなかった。
さらに、神経や知覚への悪影響や運動機能の低下も認められなかった。治験薬との因果関係が否定できない有害事象としては、低用量0.3mg投与直後に軽度の嘔気が1件認められたが、特に処置なく消失した。
腰痛、下肢痛のほか、腰痛に伴う日常生活動作障害に対する有効性の評価としてPatient Global Impression of Change(PGI-C)、Roland-Morris Disability Questionnaire(RMDQ)、Oswestry Disability Index を用いて評価した。100 mm VAS スケールで測定された腰痛の評価では、投与後6ヵ月で用量依存的な腰痛改善効果認められた。経時的には、10mg単回投与群は、投与後わずか14日で腰痛が投与前に対してからほぼ 50%減少し、6ヵ月での中央値で 84%軽減し、プラセボ対照群 14%に比べ腰痛を有意に改善した(p = 0.033)。
さらに、10mg単回投与群は 12 ヵ月まで腰痛をさらに改善し、中央値で 97.5%まで軽減し、対照群と比べて有意に勝っていた(p = 0.045)。
投与6ヵ月後の椎間板の高さを測定した結果、プラセボ対照群では椎間板が縮小したのに対して、AMG0103投与群では伸長が認められ、椎間板変性を抑制する可能性が示唆された。これらの成績は、AMG0103の動物試験で得られたた結果を再現しており、12ヵ月評価を含め継続評価していく。
患者自身の満足度を評価した PGI-C(1~7の順位で評価)は、投与6ヵ月後で用量依存的な改善が認められ、AMG0103 10mg 投与群は12ヵ月の観察期間を通してプラセボ対照群よりも優れていた。
また、10mg 投与群では、プラセボ対照群と比較して6ヵ月後に平均2.83点(p=0.001)および12ヵ月後1.67 点(p=0.042) 改善した。腰痛に伴う日常生活動作障害をRDMQ では、3 つの治療群すべてにおいて、投与6ヵ月後の RDMQ スコアはAMG0103投与群では平均20〜50%改善したのに対し、プラセボ対照群では平均15%悪化した。
投与 12 ヵ月後でも、10mg 投与群では平均 38%改善したのに対して、対照群では平均 45%悪化した。
同臨床試験に参加した患者は、オピオイドによる自己治療は一切認められていないが、突発的な痛みに 対して非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や、アセトアミノフェンの経口投与が可能である。
被験者は、観察期の来院前に、これらの「レスキュー・メディケーション」を中止することが求められ、各訪問時に薬物使用日記から「レスキュー・メディケーション」の使用の頻度を検討した。 プラセボ対照群の患者は、投与後12ヵ月間の観察期間中、平均16 日レスキュー薬を使用し、最大で98日使用した被験者もいた。
一方、AMG0103 10mg 投与群では、試験期間中に1 回もレスキュー薬を服用した被験者はいなかった。 NSAIDsやその他の医薬品による追加介入が回避されたことは、この後期P1相臨床試験で示された臨床的有用性をさらに強調するものである。
AMG0103は、NF-κB転写因子に結合して炎症性サイトカイン(細胞から分泌される生理活性物質)の放出を抑制する合成NF-κB オリゴヌクレオチドデコイであり、過剰な炎症反応や免疫反応に起因する様々な疾患の治療に有効な薬剤として期待されている。
現在、米国FDAが慢性椎間板性腰痛症に対する薬物療法として承認しているのは、消炎鎮痛剤による対症療法のみである。AMG0103は、推定される原因物質を阻害することで効果を発揮する点で、既存の鎮痛剤とは異なる。
基礎科学的研究の結果、AMG0103 の局所注射は、既存の治療薬では改善できない椎間板変性症などの病気の進行を抑える効果が示唆されている。
なお、同件の今年度の通期連結業績に与える影響は、現在、精査中である。