大日本住友製薬は23日、webによるスミトバント説明会を開催し、野村博社長は2033年の目指す姿として、「研究開発領域への“価値にフォーカスしたベストインクラス”の追加と、“デジタルトランスフォーメーション(DX)”の加速による持続的な成長の実現」を強調した。
スミトバント社製品が今後10年間の収益と将来へのR&D費用を捻出
同社の持続的な成長実現の大きな原動力となるスミトバント社のポートフォリオについてマートル・ポッター氏(スミトバント社 CEO)は、まず、「バイオテクノロジーモダリティが医薬品産業の売上収益と成長の多くを占めている」と指摘した。実際、2015年と2020年の比較では、バイオテクノロジーモダリティのアセットの構成比率は50%から58%、売上収益寄与率は55%から62%に上昇している。
ポッター氏は、「スミバント社の開発パイプラインは、67%がバイオテクノロジーモダリティが占めている」として上で、「多くの適応症で構成される多様な開発パイプラインで、患者のアンメットニーズに応えていく」考えを強調した。
また、スミバント社の主要パイプラインの一つで、マイオバント社が本年4月、米国で発売した前立腺がん治療薬「オルゴビクス」(ピーク時年間売上高1000憶円以上)にも言及。
「経⼝材」、「ホルモンの一過性の急上昇が起こらない、「PSAの継続的かつ迅速な低下」、「テストステロンの迅速な回復」の特徴を挙げ、「P3試験(HERO試験)の結果、主要な心血管系イベント(MACE)の発現率を含むオルゴビクスの良好なが示された」安全性プロファイルも紹介した。
気になるオルゴビクスの販売戦略は、「マイオバント社の100人のセールスレップが、処方医師へ積極的にプロモーション活動をするなど、発売時に優先度の高い課題に取り組んでいる」と説明。
さらに、「昨年12月、マイオバント社とコラボレーションしたファイザー社は、前立腺がん市場を熟知している」と明言。その上で、「ファイザー社の100人の泌尿器・腫瘍科の販売チームや販売インフラ、専門性の活用により、オルゴビクスの立ち上がりを加速させれば、商業的なポテンシャルを最大化できる可能性がある」と期待を寄せた。
同剤の処方医師へのプロモーションでは、「医療従事者への臨床プロファイルに関するプロモーションによる処方意思向の醸成」→「院内処方施設に承認された契約条件の提供」→「シームレスなオルゴビクスの処方実現」の戦略を明かし、「発売後の順調な滑り出し」を強調した。
今後は、主要な民間保険やメディケアに積極的に働きかけ、2021年末までに広範なカバレッジ構築を目指す。また、2021年前半に、最初の民間保険のフォーミュラリーが決定される予定にあり、2022年のメディケア・パートDの入札に向けて2021年1~3月に書類提出している。
患者への働きかけでは、発売以来の製品ウェブサイトへの訪問数は、3.7万人に上り、一般的ながん治療薬の上市時の4倍以上になっている。
婦人科疾患におけるレルゴリクス配合剤は、子宮筋腫を対象とした新薬承認申請のFDAの審査終了目標日が本年6月1日、子宮内膜症は、本年前半にFDAに新薬承認申請(NDA)の予定にある。
レルゴリクス配合剤には、「子宮筋腫患者の奏効率は90%」、「52週試験での骨密度データも良好」、「ホットフラッシュの出現率はプラセボと同程度」などの特徴があり、先行品との差別化が期待される。
ポッター氏は、「FDAに承認されれば、レルゴリクス配合剤は、子宮筋腫および子宮内膜症に対するベストインクラスの治療薬となる可能性がある」と訴求した。
一方、ジェムテサ(ビベグロン、ピーク時年間売上高500億円以上)は、成人の切迫性尿失禁、尿意切迫感および頻尿の症状を伴う過活動膀胱(OAB)を適応症として、昨年12月23日にFDAより承認を取得、本年4月に米国での発売を予定している。
ジェムテサ発売に向けては、「泌尿器科に焦点を当てた発売活動」、「長期療養施設のOABに対する活動の確立」、「プライマリ・ケアにおけるOAB患者の取り込み拡大」、「患者と医療従事者のためのアクセスと適正価格を確立・維持」、「OAB患者の意識向上、教育、アドボカシーを推進」を目標に掲げる。
発売後は、ユーロバント社の160人のセールスレップがプロモーションを実施。さらに、共同プロモーション契約を締結したサノビオン社が、90人のセールスレップによるプロモーション活動を展開し、コマーシャル活動契約についてもサポートを行う。
デジタルトランスフォーメーションについては、ダン・ロスマン氏(スミトバント社 CIO、大日本住友製薬グループCDO)が、2021年のDX目標として、「コアビジネスの強化」と「実行時の提供価値の向上」を明示。
コアビジネスの強化では、「販売品の収益増加」、「より多くの医薬品をより早く市場に提供」、「コアビジネスの強化」、「創薬プログラムの成功確度向上」、実行時の提供価値の向上では、「ビジネスオペレーションとプロセスの改善」、「透明性高い組織間連携の向上」、「ビジネス部門とITチームの連携による価値の創造」を挙げた。
木村徹氏(大日本住友製薬取締役常務執行役員CSO)も、スミバントのDXの具体的な創薬への活用として、「セット毎・疾患毎の柔軟で効率的な開発体制」、「デジタル技術を活⽤したスピーディーかつフレキシブルな開発」、「デジタル技術を活用した有望アセット探索」を紹介。
その上で、R&D面のシナジーについて「各パイプラインを更に進捗させるべく、スミトバントモデルの積極活用を検討中である」と明かした。
スミトバント社への期待にも言及し、「同社製品は、今後10年間の収益と将来へのR&D費用を支える。その間、ラツーダ後を担う製品の開発を進め販売を開始し、2033年以降“グローバル・スペシャライズド・プレーヤー”として医療に貢献」する構想を示した。
最後に野村社長は、「オルゴビクス、ジェムテサの差別化とどのように伸長していくかの戦略をしっかりとシェアして進めている。マーケットに実際に対応して、その声を聞き、要望に応えるというプロセスを通じて、製品が持つポテンシャルを上げて行きたい」と力説。
DXについては、「R&Dへの活用において、どれだけコストを下げ、成果が確実に出て来るのかにフォーカスしたい。是非、具体的な成果を出したい」と総括した。