「アデュカヌマブ」や「レルゴリクス」など2021年上市予定のブロックバスター見込み4製品発表 クラリベイト

 クラリベイト(英国)は、2021年に市場参入または主要適応症で上市される医薬品の中で、2025年までにブロックバスターの地位を獲得すると予測される医薬品を特定した「Drugs to Watch」リストを発表した。同社は、イノベーションを加速する信頼性の高い知見や分析を提供する世界的リーディングカンパニーである。
 「Drugs to Watch」リストでは、2021年上市予定のブロックバスター見込み4製品として、「アデュカヌマブ」(アルツハイマー治療薬、開発元:エーザイ、バイオジェン)、「ビメキズマブ 」(乾癬等治療薬、同:UCB)、「レルゴリクス」 (前立腺がん等治療薬、 同:武田薬品)、「ベリシグアト」 (心不全治療薬、同:バイエル、メルク)を挙げている。
 医薬品業界において新型コロナウイルスへの対応という前例のない成果を超えて、医薬品開発者は、世界中の何百万人もの患者に影響を与えている疾患に対する重要な意味を持つ治療法の開発を進めてきた。
 今年の「Drugs to Watch」リストとそこにリストアップされた医薬品に関する分析では、アルツハイマー病、前立腺がん、うっ血性心不全などの、慢性的、進行性、衰弱がみられるような疾患や病状に対する治療法に焦点を当てている。
 厳しい年であったにもかかわらず、製薬企業やバイオ医薬品企業は、SARS-CoV-2の予防効果の高いワクチンや治療薬を製造することができた。今年の「Drugs to Watch」レポートでは、2021年2月10日時点で緊急使用許可/条件付き承認を取得したワクチンを分析し、急成長を遂げている新型コロナワクチンの全体像も掲載している。
 新型コロナ感染症パンデミックに対応した製薬業界の様々な解決策から得られた経験と知識は、目の前の危機ばかりではなく、より迅速な臨床試験・投資の急増・コラボレーションの増加・遠隔ケア等、バイオ医薬品の研究開発と商業化の新しい未来を生み出す可能性が高いと考えられる。
 クラリベイトは、承認を取得または取得に向けて動き出した新薬や生物学的製剤の中から、5年以内に年間10億ドル以上の売上を達成し、ブロックバスターの地位を獲得する可能性が高い、2021年に注目すべき次の4医薬品を特定した。

◆アデュカヌマブ (Aducanumab)、 開発元:エーザイ、バイオジェン

 世界で推定5000万人が罹患しているアルツハイマー型認知症に対する薬物療法の確立に向けた戦いの中で、ゲームチェンジャーとなる可能性を秘めている。承認されれば、アデュカヌマブはアルツハイマー型認知症に対する初の疾患修飾療法となり、患者さんのケアを根本的に変え、市場を一変させる画期的な医薬品となる可能性がある。
 また、この治療法に対する需要は莫大なものとなり、今後の臨床試験において治験薬であるという理由から、この治療法を見送る決断が減少する可能性さえある。

◆ビメキズマブ (Bimekizumab)、 開発元:UCB社
 世界人口の2~3%が罹患していると推定される乾癬をはじめとする多くの自己免疫疾患の患者に対して、副作用を大幅に軽減した治療法を提供する。ビメキズマブは、既存の治療法に比べて段階的な改善効果をもたらす医薬品であるが、ベスト・イン・クラスの有効性と重篤な副作用の軽減が期待されている。

◆レルゴリクス (Relugolix)、 開発元:武田薬品
  男性が罹患する悪性腫瘍の中で2番目に多い前立腺がんや、数百万人の女性が罹患する子宮内膜症、子宮筋腫などの痛みを伴う疾患のための、経口剤形で開発された新しい治療薬の第一弾である。
 レルゴリクスは、3つの適応症に使用できる可能性があることから、成功の可能性が高くなっている。同剤は、競合品であるGnRHアゴニスト注射剤と比較して、利便性や副作用の管理のしやすさなどの点で優位だ。

◆ベリシグアト (Vericiguat)、 開発元:バイエル、メルク
 革新的な心不全治療薬であり、特にハイリスク患者である駆出率が低下した心不全(HFrEF)に特化した初めての治療薬である。ベリシグアトの新規作用機序により、既存療法の追加療法としての適応が期待されている。一部のハイリスクHFrEF患者に対しては、治療法オプションとして治療の幅を広げることが期待される。

 Mike WardクラリベイトThought Leadership総責任者は、「過去5年間では革新的医薬品の承認率は10年前の2倍以上に増加している」と指摘。
 さらに、「この改善には、疾患の生物学的原因に関するインサイトの向上、治療ターゲットをより明確にするためバイオマーカーを導入したがん研究、遺伝子治療法や細胞治療法の出現、医薬品評価を迅速化するプロセス導入に向けた規制当局の取り組みなど、多くの推進要因がある」と分析する。
 クラリベイトは、Cortellis Competitive Intelligence、Disease Landscape & Forecast、Drug Timeline & Success Ratesから得られる独自のデータとインサイトに加え、より広範なインテリジェンスクラウド内にある1000を超えるデータポイントを活用して、2021年にP2相試験以降に進んだ医薬品から、対象とすべき医薬品の年次リストを作成している。
 各医薬品に関して、年次ファイリング、パイプライン、臨床試験、特許、化合物、ディール、規制状況などを調査し、個々の状況に応じて評価している。市場にまたがる幅広い治療分野の専門家が、あらゆる角度からの疾患状況の調査や、価格戦略の検討、新薬開発を下支えする科学技術について調査をした。
 今年のリストに掲載された各医薬品は、代替療法と比較して安全性の向上を謳うものもあれば、新たな作用機序に注目するものもあり、商業的成功が期待されている。
 これらの治療薬は、将来のイノベーションを牽引するだけでなく、人々の健康を向上させ、その分野における医療水準を再定義し、患者の命を救う、あるいは改善する可能性を秘めている。
 クラリベイトは、医薬品、医療デバイス、医療技術のライフサイクル全体にわたって顧客をサポートすることで、人々の健康促進に取り組んでいく。
 新しい年次レポートでは、クラリベイトと2020年にクラリベイトが買収したDecision Resources Group(DRG)の専門知識、データ、テクノロジーの組み合わせが、顧客のエビデンスベースの情報に基づいた意思決定を可能にし、臨床面・マーケティング面での成功を後押しし、さらには前臨床から臨床に至るライフサイエンスインテリジェンスソリューションを強固に統合されたプラットフォームとして強化していることを示している。
 Drugs to Watchレポート全文 (英文) は、無料でWebサイト(https://clarivate.com/drugs-to-watch/)からアクセス可能だ。
 このリストのデータは、Cortellis Competitive Intelligence、Disease Landscape & Forecast、Drug Timeline & Success Ratesから収集したものである。Cortellis Competitive Intelligenceは、年次ファイリング、パイプライン、臨床試験、特許、化合物、ディール、会議、企業発表など、医薬品研究開発のライフサイクルを網羅した幅広い情報を提供している。
 Disease Landscape & Forecastは、180以上の適応症を対象とした包括的な市場情報と実用的なインサイトを提供し、長期的な疾患戦略の最適化を支援する。
 Drug Timeline & Success Ratesは、統計的モデリングと機械学習を応用した分析ツールで、医薬品開発のマイルストーン、タイムライン、成功確率を確実かつ正確に予測する。分析の対象となるのは、P2相またはP3相試験中の医薬品、事前登録または登録段階にある医薬品、または2021年初頭に上市済みの医薬品で、2021年以前に上市された医薬品は除外している。
 次に、データセットは、2025年の予測売上高が10億ドル以上の医薬品を対象にフィルタリングした。このフィルタリングプロセスを経て医薬品のリストが作成され、社内の専門家とコンサルタントがレビューを行い、2021年の上市可能性について企業の承認予想や上市予定日などの要因に基づいて判断した。
 このレビューの結果、2021年に注目すべき4つの医薬品が決定された。続いて、それぞれの医薬品について、臨床試験結果、規制状況、各医薬品の市場(競合薬の分析を含む)、規制上の指定(例:オーファンドラッグ、優先審査)など、個別のコンテキストで調査・評価を行った。(データ抽出日 – 2021年1月21日) Drugs to Watch 2021レポートは、現在の既存データに基づくクラリベイトの予測に基づきますが、レポートで紹介した医薬品に関する実際の結果は異なる可能性がある。

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