米国で新型コロナ感染症治療薬のP1試験開始  アンジェスとバソミューン社

 アンジェスとバソミューン社は18日、共同開発している新型コロナ感染症治療薬のAV-001について、健康成人を対象としたP1臨床試験を米国で開始したと発表した。
 AV-001は、正常な血管機能を維持するために重要な調整タンパク質であるTie2チロシンキナーゼ受容体を標的とするファースト・イン・クラスの治療薬である。非臨床試験結果から、AV-001は新型コロナ感染症で入院した患者の生存率を改善し、入院期間を短縮する可能性が期待できる。
 P1試験は、健康成人を対象とした二重盲検プラセボ対照試で、単回投与と連続投与における安全性、忍容性、および薬物動態を評価する。
 P1試験に続く臨床試験で良好な結果が得られれば、中等度から重度の新型コロナ感染症治療薬として、FDAへの緊急使用許可(EUA)申請を検討する。
 AV-001は、トロントのサニーブルック病院で発見・デザインされた化合物で、アンジェスとバソミューン社の共同開発契約に基づき臨床試験が進められる。
 AV-001は、Tie2アンジオポエチン経路を活性化させることで、血管機能を正常化させ、血管内皮バリアを回復させる。新型コロナ感染症およびARDS(急性呼吸窮迫症候群)患者、特に高血圧、糖尿病および肥満などの血管合併症を既往している患者の病態において、血管機能障害が認められる。
 最近の知見によると、SARS-CoV-2ウイルスが肺内皮細胞に感染して微小血管透過性亢進を引き起こし、血管バリアを変化させ、凝固状態を促進。血管内皮炎症を誘発して、炎症 性細胞の遊走を媒介することで、新型コロナ感染症患者における呼吸窮迫とARDS を引き起こし、次第に増悪させることが示唆されている。
 致死性RNAウイルス感染動物モデルを用いたインフルエンザ/ARDS の前臨床試験において、AV-001は内皮細胞のタイトジャンクションを狭め、血管バリア機能を回復させ、血管透過
性亢進をブロックして、血管機能を正常化させることが示されている。
 AV-001 単剤療法では、未治療の対照群と比較して生存期間と肺機能が有意に改善されるが、抗ウイルス療法との併用により有効性はさらに増強されるという利点が示されたことが注目されている。
 AV-001は、中等度から重度のCOVID-19 およびARDS の治療薬として開発されている。
 ダグラス・ハミルトンバソミューン社社長兼CEOは「深刻な新型コロナ感染症に罹患すると、肺と全身の血管機能障害が惹起する。高齢者や肥満、高血圧、糖尿病の既往のある患者はハイリスクで、もともと血管機能障害があり、それが新型コロナ感染により増悪されるためである」と説明。さらに、「我々は、血管機能の正常化に注目した新たな治療戦略を提案する。これにより、患者の生存率が向上し、治療期間が短縮され、医療関係者、集中治療室、病床、人工呼吸器などの医療リソースへの負担軽減に貢献できると考えている」とコメントしている。
 なお、今年度の通期連結業績に与える影響は精査中である。

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