リムパーザ 欧州で転移性去勢抵抗性前立腺がんの承認取得  アストラゼネカ

 アストラゼネカとメルク(北米およびカナダ以外ではMSD)は5日、リムパーザについて欧州連合(EU)で転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)患者の治療薬として承認されたと発表した。対象疾患は、相同組換え修復(HRR)関連遺伝子変異を有する患者集団のうち、乳がん感受性遺伝子1/2(BRCA1/2)変異陽性のmCRPC。
 前立腺がんは、男性において世界で2番目に罹患率の高いがんで、2018年には世界中で推定130万人が新たに前立腺がんと診断されている。また、mCRPC患者の約12%にBRCA遺伝子変異が認められる。
 今回の欧州委員会による承認は、P3相PROfound試験のサブグループ解析の結果に基づいている。リムパーザは、エンザルタミドまたはアビラテロンと比較して、BRCA1/2遺伝子変異陽性の患者において画像診断に基づく無増悪生存期間(rPFS)および全生存期間(OS)の延長を示した。
 リムパーザは、バイオマーカーにより選択された進行性前立腺がんにおいて、欧州で承認された最初かつ唯一のPARP阻害剤で、今回の承認は、2020年9月の欧州医薬品庁(EMA)の医薬品評価委員会(CHMP)による承認勧告に従うもの。
 P3相PROfound試験のサブグループ解析では、BRCA1/2遺伝子変異陽性のmCRPC患者において、リムパーザ群では病勢進行または死亡のリスクが78%低下した(ハザード比[HR]:0.22、95%信頼区間[CI]:0.15~0.32、名目p<0.0001)。rPFS中央値は、比較対象のエンザルタミドまたはアビラテロン群では3.0ヵ月であったのに対し、リムパーザ群では9.8ヵ月に延長した。
 また、リムパーザ群では死亡リスクが37%低下し(ハザード比:0.63、95%信頼区間:0.42-0.95)、OS中央値がエンザルタミドまたはアビラテロン群では14.4ヵ月であったのに対し、リムパーザ群では20.1ヵ月に延長した。
 P3相PROfound試験の主な結果( https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1911440 )と全生存期間のデータ( https://www.nejm.org/doi/10.1056/NEJMoa2022485 )は、今年初めにThe New England Journal of Medicineで発表された。
 今回、欧州におけるリムパーザの承認は、新規ホルモン製剤を含む前治療後に進行が認められたBRCA1/2遺伝子変異陽性(生殖細胞系列変異および/または体細胞変異)のmCRPC成人患者に対する治療を効能・効果として行われた。
 リムパーザは、米国においても本年5月に、P3相PROfound試験の結果に基づいてHRR関連遺伝子変異を有するmCRPC患者の治療薬として承認されており、現在その他複数の国でも薬事承認審査中である。
 アストラゼネカとMSDは、mCRPCの一次治療として、リムパーザとアビラテロンとの併用療法をアビラテロン単剤療法と比較して評価する実施中のP3Ⅲ相PROpel試験など、転移性前立腺がんに関する臨床試験を今後も実施していく。PROpel試験は、2021年後半にデータ解析を予定している。
 なお、本邦においてmCRPCに対するリムパーザの適応は未承認である。

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