肝疾患のAATLD治療薬開発でArrowhead社と開発・販売提携  武田薬品

 武田薬品は9日、Arrowheadと、α-1アンチトリプシン欠乏症による肝疾患(AATLD)を対象とするRNA干渉(RNAi)治療候補薬「ARO-AAT」(P2試験段階)開発に向けた提携およびライセンス契約を締結したと発表した。
 ARO-AAT は、AATLD の進行を引き起こす変異型 α-1アンチトリプシン蛋白の産生を低減する目的で設計されたファースト・イン・クラスの治療薬となる可能性がある。
 同契約に基づき、武田薬品とArrowhead社は、ARO-AATを共同で開発するとともに、同薬が承認された場合、米国では両社が利益を50:50で折半する形で共同販売する。
 武田薬品は、全世界における販売戦略を主導するとともに、米国外の地域での ARO-AATの独占販売権を取得する。
 一方、Arrowhead社は、売上収益に対する 20-25%の段階的なロイヤルティを受け取る。同社は、3億米ドルの契約一時金を受領するとともに、開発、申請、販売マイルストンとして最大7億4000万ドルを受け取る権利を有する。
 同契約上の取引は、米国で1976年に制定された改正 Hart-Scott-Rodino (HSR)反トラスト法を含む独占禁止法上の審査が完了することを条件としている。
 アンチトリプシン欠乏症(AATD)は、希少な遺伝子性疾患で、小児患者と成人患者では肝疾患、成人患者では肺疾患を伴うことがある。AATD の有病率は、米国では 3000~5000人に 1 人、欧州では2500人に1 人とされている。
 αアンチトリプシン(AAT)は、主に肝細胞で合成、分泌される蛋白質である。この蛋白質は、正常な結合組織を分解する酵素を阻害する働きを有する。AATDで最も頻繁にみられる Z 型遺伝子変異は、 1 つのアミノ酸が置換される変異で、作られた蛋白質は正しく折りたたまれることができない。この変異蛋白質は十分に分泌されずに肝細胞にとどまり、小球を作る。
 これにより肝細胞が傷つき、線維化や肝硬変が現れ、肝細胞がんのリスクが高まる。
 武田薬品 Gastroenterology Therapeutic Area Unit HeadのAsit Parikh氏は、「AATLD は、未だ承認された治療法のない難病である」とした上で、「ARO-AATはRNAiに作用するため、AATLDの根本的な原因を治療する可能性があり、肝移植や併発疾患の回避も期待される」とコメントしている。
 一方、Christopher Anzalone Arrowhead社President and CEOは、「今回の契約は、当社のTargeted RNAi Molecule(TRiMTM)基盤技術および多様な組織をターゲットとするRNAi治療法のパイプライン拡大に対して、厳選したパートナーシップを通じて継続的に投資する当社戦略を支えるものである」と強調。
 さらに、「当社の販売組 織を代謝性心血管系疾患および肺疾患の2 つの主要領域に注力させるものである」と述べている。

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