タグリッソ 転移性肺がんの術後補助療法としてP3試験で好結果 アストラゼネカ

 アストラゼネカは28日、タグリッソについて、P3試験(ADAURA試験)において早期EGFR遺伝子変異陽性肺がんに対する術後補助療法として中枢神経における再発リスクを82%低減したと発表した。
 事前に規定していたADAURA試験の探索的解析より、タグリッソが、完全切除した早期(病期ⅠB期, Ⅱ期およびⅢA期)上皮成長因子受容体遺伝子変異陽性(EGFRm)非小細胞肺がん(NSCLC)患者の術後補助療法として中枢神経系(CNS)無病生存期間(DFS)の臨床的に意義のある改善を示した。同試験結果は、同剤が転移性肺がんに対する術後補助療法の標準治療となる可能性を示唆している。
 アストラゼネカは、「同試験データは、これまでに示されてきたタグリッソの中枢神経系転移への臨床活性をより確固たるものにした」としている。
 NSCLC患者のおよそ30%は、治癒を目指した切除手術が可能な早期の肺がんと診断されるが、この早期がんの段階においても術後の再発が多くみられる。脳転移といった中枢神経系での再発はEGFRm NSCLCにおいて頻度が高く、これを発症した患者さんの予後は特に不良である)。
 同解析により、術後補助療法による再発または死亡の発現率がタグリッソ投与群においてプラセボ投与群よりも低かったことが示された (タグリッソ11%対プラセボ46%)。再発患者のうち、遠隔臓器に再発が見られた患者の割合は、プラセボ投与群の61%に対し、タグリッソ投与群では38%であった。
 タグリッソは中枢神経系での再発または死亡のリスクを82%低減した(ハザード比 0.18; 95% 信頼区間 0.10-0.33; p<0.0001)。中枢神経系再発に対する無病生存期間(CNS DFS)は、どちらの投与群においても中央値に未到達であった。
 また、事後解析において、18カ月の時点での脳での再発の推定確率は、その他の部位での再発を経験しなかった患者のうち、プラセボ投与群の9%に対してタグリッソ投与群の患者においては1%未満であった。
 主要評価項目である病期Ⅱ期およびⅢA期の患者における無病生存期間については、術後補助療法としてのタグリッソは、再発または死亡のリスクを83%低減した(ハザード比 0.17; 95% 信頼区間 0.12-0.23; p<0.0001)。
 日本の国立がん研究センター東病院呼吸器外科長でP3相ADAURA試験の治験責任医師である坪井正博氏は、「早期EGFR遺伝子変異陽性肺がんの治療は、術後補助化学療法後も依然として再発率が高いため、手術をもって完結するという概念を改める時が来た」と指摘。さらに、「今回の新たなデータは、タグリッソの顕著な無病生存期間の延長とともに特に脳での再発率の低下を示し、同剤が患者の無病生存期間を延長することを明らかにした」と述べている。
 アストラゼネカオンコロジー研究開発担当エグゼクティブバイスプレジデントのJose Baselga氏は、「ひとたび肺がんが脳に転移すると、その予後は患者にとって深刻なものとなる。タグリッソは、その血液脳関門を通過することで、すでに明らかとなっている脳内の病勢進行の治療における有効性を術後補助療法に拡大している」と解説。
 その上で、「新たなデータは、タグリッソが早期がん患者における脳転移の再発予防を示しており、本剤がEGFR遺伝子変異陽性肺がん患者にとってその予後を改善させる可能性を支持するものだ。タグリッソは、転移性肺がんに対する術後補助療法の標準治療となるべきである」との考えを示した。
 P3相ADAURA試験におけるタグリッソの安全性および忍容性は、転移性EGFRm NSCLCを対象とするこれまでの試験結果と一致していた。治験担当医師の評価において、全ての原因によるグレード3以上の有害事象の発現率はプラセボ投与群の3%に対し、タグリッソ投与群で10%であった。
 今回の試験結果は、2020年欧州臨床腫瘍学会(ESMO)の年次総会(バーチャル会議)のプレジデンシャルシンポウムにおいて、19日に発表され、同時に主要な結果がThe New England Journal of Medicineで掲載された。
 なお、現在、転移性肺がんに対する術後補助療法としてタグリッソが承認されている国はない。タグリッソは、本年7月、治癒目的の完全切除後の早期EGFRm NSCLC患者の術後補助療法として、米国で画期的治療薬指定(BTD)を取得した。同剤は、局所進行性または転移性EGFRm NSCLCの一次治療薬、および局所進行性または転移性EGFR T790M変異陽性進行NSCLCの治療薬として、米国、日本、中国、EUおよびその他多くの国において承認されている。

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