大日本住友製薬の野村博社長は6日、Webによる社長会見を開催し、ロイバント社との戦略的提携で獲得したブロックバスター候補のレルゴリクス、ビベグロンに言及。「両剤ともに上市に向けてが順調に進捗している」と強調した。レルゴリクスは“前立腺がん”の効能効果で本年4月、“子宮筋腫”で本年5月、ビベグロン(過活動膀胱)は昨年12月にそれぞれ米国申請しており、いずれも今年度中の上市を予定している。
また、北米でのラツーダ(非定型抗精神病薬)やブロバナ(COPD治療薬)、中国でのメロペン(抗菌薬)の2020年度売上予想は、「新型コロナウイルスの影響を想定して下方修正した」
大日本住友製薬米国子会社のマイオバントのレルゴリクス、同ユーロバントのビベグロンは、いずれもサノビオン社と市販後の流通契約を結んでいる。
同契約には、発注に基づく卸から保険支払い代行会社を経由して薬局、患者への製品物流に関わる一連の業務、契約管理業務、アカウント管理業務等が含まれている。
そのメリットとして、まず、「マイオバント、ユーロバントのそれぞれが、営業の契約者を採用しないで済む」コストシナジーが挙げられる。さらに、両社が個別に卸売業者と契約を結べば、取扱品目が1品しかないためフィーが高く付くが「ラツーダである程度の流通規模を誇るサノビオンの製品物流に乗せればフィーが安くなる」という利点もある。
マーケティングストラテジー構築や医師へのディテール活動など製品に直接関わる部分については、マイオバント、ユーロバントがそれぞれの医薬品に特化した専門MRを採用する。
新型コロナウイルスの影響を想定して修正した北米の製品別売り上げ予想は、ラツーダが1879億円(従来予想比63億円減)、ブロバナが297億円(同14億円減)。中国のメロペンは230億円(同23億円減)。
ラツーダ、ブロバナの減収要因について野村氏は、新型コロナ禍による「新患の減少」、「失業者の民間保険からメディケイド等への移行」、「無保険者の増加」を指摘する。コロナ禍による米国の失業者は、2500~4000万人との予測もあり、失業すれば会社の民間保険からメディケイドに移行したり、無保険者になる。ラツーダへの支払いの3割が民間保険で、「患者がメディケイド等に移行すれば単価が安くなる」
中国におけるメロペンの減収は、「コロナの影響で手術件数が減っており、それに伴い感染予防に使うメロペンの需要が減少している」
野村氏は、ナパブカシンの結腸直腸がんのP3試験にも言及し、「もともと850例のイベントが起これば解析を開始する予定で、その条件は今年4月に満たしている。通常なら7月中に結果が出ていた」と明言。その上で、「この試験は日米欧の世界中で行われているが、コロナで医療機関へのアクセスができない。データ収集などのプロセスが進んでおらず、年内に結果が出せるように尽力したい」と語った。
昨年、CMC面でコンプリート・レスポンス・レターを受け取ったRVT-802(小児先天性無胸腺症)は、「再生細胞医薬のグループが協力して、年内の再申請を目指している」
また、フロンティア事業の取り組みとして、「介護用デジタル機器と医療機器」、「2型糖尿病管理指導用アプリ(DTx)」、「社交不安障害を緩和するためのVRコンテンツ」を紹介。フロンティア事業は、CNS、糖尿病、がん、再生細胞医薬など同社の薬剤とシナジー効果のありそうな領域で展開し、次期中計期間(2023~2027年度)での「成長エンジンとしての確立」を目指す。
国内営業の取り組みでは、iMRとvMRを活用して「withコロナ状況下での情報提供体制の強化を推進している」ラツーダを中⼼とした精神科領域の製品を対象とするiMRは、「8割の医師が次回の予約をしており、リピート率が高い」
一方のvMRでは、糖尿病領域等の製品や疾患または医療行政など幅広い情報を提供しており、こちらも医師から好評を得ている。