消化器系等国内主要5ビジネスエリアにさらに注力       武田薬品

 武田薬品は、日本国内のビジネス部門の事業運営について、「消化器系疾患」、「希少疾患」、「血漿分画製剤」、「オンコロジー」、「ニューロサイエンス」の主要な5つのビジネスエリアに、さらに注力するための施策を策定した。
 今後、同施策に基づいて国内ビジネス部門におけるポートフォリオの転換を進めるとともに、持続的な成長を実現する組織を構築。「戦略投資の加速化」、「機動性のある組織の構築」、「変革を支えるための組織力の向上」を3つの柱に、国内においてもターゲットを絞った革新性の高い医薬品を中心とする医療用医薬品ビジネスへの変革を進めていく。
 昨今の医薬品業界を取り巻く状況は急速に変化している。医薬品市場では、少子高齢化の中で医療保険制度の持続性の観点から薬価引き下げが毎年実施されるなど、一段と強力な薬価制度改革が進められている。
 さらに、デジタル技術の進展は従来の働き方や人々の行動様式に変化をもたらしており、デジタル技術の活用によるパラダイムシフトへの対応が求められている。
 こうした中、武田薬品は、今後のさらなる環境変化を見据えて、同施策に速やかに着手し、中長期的な成長の実現を目指す。策定した施策の柱となる3項目は次の通り。
1.「戦略投資の加速化」
 国内では2024年度までに、主要な5 つのビジネスエリアで新規候補物質に関連する8 の承認の可能性、グローバルブランドに関連する9の承認の可能性を含む31の承認を目指し、今後5年間で国内ビジネス部門のポートフォリオの転換を加速させる。このうち、オンコロジー領域では13 の承認、血漿分画製剤では4の承認の可能性がある。
 また、統合以来、日本での上市に向けて取り組んできた旧シャイアー社製品に関連する10の承認の可能性も含まれている。武田薬品は、5つのビジネスエリアに注力し、投資を行うことで、日本の患者のアンメット・メディカル・ニーズにさらに貢献していく。
 研究開発では、湘南のリサーチ部門がニューロサイエンス領域におけるグローバルでの中心的な役割を果たし、次世代の治療に向けて研究を進めている。昨年、発表したオレキシン2受容体選択的作動薬であるTAK-925の研究のほか、Noile-Immune Biotechとのパートナーシップにより、がん治療の次世代細胞療法としてArmoured CAR-TであるTAK-102が、また京都大学CiRAとの共同プログラムであるT-CiRAからiPS細胞を用いたiCAR-Tの研究・開発が進められている。これら新たなモダリティを患者に提供できるよう国内ビジネス部門においても準備を進める。
 さらに、多様化するモダリティに対応した製造設備への投資も実施し、2021 年度に承認を予定している、消化器系疾患領域の肛囲複雑瘻孔治療剤darvadstrocel(Cx601)の生産を担う製造施設を大阪工場内に新設する。
2「.機動性のある組織の構築」
 主要な 5つのビジネスエリア (消化器系疾患、希少疾患、血漿分画製剤、オンコロジー、ニューロサイエンス)への注力の一環として、2019年4月には希少疾患領域を担当するレアディジーズビジネスユニットを設立したほか、今年4 月には、プライマリーケア製品の担当部門からオンコロジー領域に170人のMRが異動した。
 ニューロサイエンス領域においても50人のMRを再配置して体制を強化するなど、柔軟な人材の再配置を通して、機動力のある組織を構築している。他の主要ビジネスエリアでも、新製品の上市とパイプラインの進捗を鑑みて人材配置を行い、組織の最適化を図っていく。
3.「変革を支えるための組織力の向上」
 国内ビジネス部門の持続的な成長を実現するために、そして、一人ひとりの従業員が充実したキャリアを築けるように、武田薬品は終身雇用を柱とする日本型の雇用システムからの脱却を図ってきた。これまでにジェンダー、国籍、バックグラウンド、働く場所、働く時間の長さ等に関係しない人材評価による適材適所の人材配置を推進してきた。
 こうした取り組みをさらに進めるために、今後、人事制度の刷新にも着手し、国内の人事制度を次のステージに移行させる。どのような環境の中でも確実に成果が出せる人材の輩出を目指し、グローバル人材の育成に向けた研修や活躍の機会をさらに増やすほか、新たなグローバルリーダーの資質を備えた人材の採用にも着手する。就業意識の多様化を踏まえて、タケダを離職せずに新たなキャリア探求機会の提供や、終身雇用をベースとした年金制度の改革に取り組む。
 さらに、国内ビジネス部門の変革期に際し、自らの生涯設計に基づき転進を希望する従業員に対しては、早期の退職と転進を支援する「フューチャー・キャリア・プログラム」を導入する予定だ。

岩﨑氏


 岩﨑真人武田薬品取締役JPBUプレジデントは、「当社は創業の地である日本で約240年にわたり、疾患に苦しむ患者に薬剤を届けてきた。今後は、アンメット・メディカル・ニーズの高い 5つの領域での貢献に注力するため、資源とリソースを集中し、ビジネスモデルの変革を進めていく」と明言。
 さらに、「グローバルな研究開発型のバイオ医薬品のリーディングカンパニーとして、ターゲットを絞った革新性の高い医薬品を提供することで、患者に貢献し、さらなる価値を提供したい」と抱負を述べている。

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