新型コロナ予防ワクチン・治療薬開発進捗状況を報告    塩野義製薬

 塩野義製薬は19日、同社が開発中の新型コロナウイルス感染予防ワクチンの進捗状況や生産に関する進展を公表した。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の世界的な蔓延による社会の混乱が続く中、塩野義製薬は、医薬品の安定供給に努めるとともに、感染症を重点疾患領域に掲げる製薬企業として、公的機関やアカデミア、パートナー企業と連携し、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する治療薬やワクチンの開発などに鋭意取り組んでいる。
 また、日本政府もCOVID-19対策に関する研究開発の加速や、ワクチン等の早期実用化に向けた生産体制の設備に対して、多くの支援策を講じている。塩野義製薬は、予防ワクチンや治療薬につて次の進捗状況を公表した。
 ◆ワクチン開発に向けた取り組み:同社が開発中のワクチンは、グループ会社のUMNファーマが有するBEVSを活用した遺伝子組換えタンパクワクチンである。現在、タンパク抗原候補の製法検討や分析法の設定等に取り組むとともに、共同研究先である国立感染症研究所において抗原候補およびワクチンに添加されるアジュバント候補の免疫原性試験が開始されている。
 新型コロナウイルス感染のワクチン開発においては、その緊急性から、開発と並行した商用生産の検討が不可欠である。同社は1000万人規模の早期提供を実現するため、国内で唯一、BEVS技術を用いた遺伝子組換えタンパクワクチンの製造実績を有するアピ(本社岐阜県)ならびにそのグループ会社であるUNIGEN(本社岐阜県)との協議を重ね、経済産業省の「サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金」に関する公募に対して、3社共同で申請を行っている。現在、同省による審査が行われているが、同社は先行して生産の立ち上げ準備に着手している。
 塩野義製薬は、年内の臨床試験開始を目標に、引き続き関係各省や独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)、国立感染症研究所等との協議・相談を行うとともに、早期提供が可能となるよう国内での生産体制の構築を加速していく。
 ◆治療薬の創製に向けた取り組み:北海道大学人獣共通感染症リサーチセンターとの共同研究において見出された新型コロナウイルス株に対する有望な化合物群をはじめ、後続の化合物に対する安全性等の探索的な評価を実施中。
 また、最終候補化合物の選抜に向けた高次探索試験の準備ならびに、その後の非臨床試験、臨床試験を見据えた製法検討等を進めている。同社は、引き続き2020年度内の臨床試験開始を目指して、これら一連の研究を最優先で進めていく。
 ◆抗体検出キットの提供:既感染者数の把握を目的としたSARS-CoV-2/COVID-19の疫学調査や研究などに役立てるため、新型コロナウイルスIgG/IgM抗体検出キットを研究用試薬として6月3日より発売している。
 塩野義製薬では、取り組むべき重要課題(マテリアリティ)として「感染症の脅威からの解放」を特定し、治療薬の研究・開発だけにとどまらず、啓発・予防・診断ならびに重症化抑制といった感染症のトータルケアに対する取り組みを進めている。同社はパンデミックの早期終息による社会の安心・安全の回復に貢献するために、産官学での連携を密にし、各取り組みを加速するとともに、今後も状況に変化があり次第広報し、企業としての社会的責任を果していく。

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