one Takeda としての企業文化確立でメッセージ配信      武田薬品

 13日にシャイアー買収後最初の通期となる2019年度決算を発表した武田薬品は、one Takeda としての企業文化を確立するまでのメッセージ「武田の変革」を発信した。メッセージの内容は次の通り。

 タケダは、自らの経営の基本精神に基づき患者さんを中心に考えるバリュー(価値観)を根幹とする、グローバルな研究開発型のバイオ医薬品のリーディングカンパニーとなるべく、これまで数々の変革を成し遂げてきた。今では、日本と米国の両方で主導的な地位を確立している唯一のバイオ医薬品企業である。高度に革新的な医薬品や画期的な治療法を、世界の患者さんに届けるために、私たちは歩み続ける。

さらなる適応力と競争力のために
 2014年9月、クリストフ・ウェバー社長兼 COO(当時)は、長谷川閑史会長兼CEO(当時)やその他の経営陣とともに、タケダが新たな「変革フェーズ」を迎えると発表した。この変革は、ウェバー社長が着任後数カ月にわたりタケダの強みと改善すべき点について部門・部署のリーダーや従業員と話し合った結果、決断されたものであった。

 2015年に開始した変革の指針となったのは、タケダの揺るぎないバリューであるタケダイズム(誠実:公正・正直・不屈)と Patient-Trust-Reputation-Business という優先順位であった。すなわち、タケダイズムに基づき、いかなる時も患者さんを中心に考えるという行動指針である。患者第一に考えることにより(Patient)、社会との深い信頼関係が構築される(Trust)。そうした信頼関係が、社会からの評価を向上させ (Reputation)、最終的にビジネスを発展させることになる(Business)。この一連の優先順位は、ウェバー社長がこの時新たにタケダのバリューとして加えたものだ。
 こうした行動指針のもと、タケダはグローバルな組織体制・事業運営への再編を行った。世界規模で事業を行う中で、機動的かつ、ベスト・イン・クラスであるとともに、患者・医療関係者をはじめ当社の医薬品を待ち望んでいる皆様のことを第一に考える企業になるためである。同時に、患者に最も近いところで事業を行う各ローカル組織への権限移譲を行った。現地に明確な責任を与えることで、患者や医療関係者のニーズに最大限応えるようにした。
 ウェバー社長の明確なリーダーシップのもと、タケダは真のグローバル企業への変革を進めた。そして、よりシンプルで機動的な事業体制を構築するとともに、シャイアー社の買収・統合を成功させるなど、将来の成長に向けた基盤ともいえる one Takeda としての企業文化を確立した。

研究開発:サイエンスにより生活を一変させる革新性の高い医薬品を創出
 2016年、タケダは、イノベーションの推進、パートナーシップの拡大、研究開発の生産性向上のために必要な柔軟性を獲得し、長期的かつ持続的な成長を遂げることを目的に、研究開発における新たな戦略と特化する3つの重点疾患領域について発表した。
 既存の標準治療をしのぐ革新性の高い治療薬をお届けするため、パイプラインの再構築とともに、重点領域の絞り込みを行った。オンコロジー(がん)、消化器系疾患、ニューロサイエンス(神経精神疾患)の 3 つの重点疾患領域とワクチンに特化するとともに、日本および米国への研究開発活動の集約、適切な能力と技術基盤の開発、パートナーシップのネットワーク構築にも取り組んだ。
 タケダの生産性の高い研究開発エンジンは、パイプラインを持続的に進捗させるため、自社および社外の両方でイノベーション創出に取り組んでいる。現在、特に力を入れているのは、次世代の革新的な治療法を提供することである。
 2024年度までをウェーブ1として、ベスト・イン・クラスもしくはファースト・イン・クラスとなる 12 の新規候補物質の承認取得を予定しており、うち9件は、申請を可能にする試験を実施中である。2025 年以降はウェーブ2として、長期かつ持続的な成長を可能にし得る、臨床ステージもしくは開発早期の新規候補物質や次世代の創薬基盤技術が約30件ある。

選ばれるパートナー

 研究開発体制の変革によってタケダのレピュテーションは高まり、革新性の高い医薬品をサイエンスから創出する能力があるとして「選ばれる会社」になった。タケダは、積極的に研究開発におけるパートナーシップを行っており、素晴らしいアイデアや新たなサイエンスの宝庫となっている。2019年度だけでも、バイオテク企業やアカデミアと新たに38件の研究開発の提携を結んだ。タケダは、製薬業界における魅力的なパートナーであり、非常に競争力の高いグローバルプレイヤーである。

シャイアー社買収による変革の加速
 2018 年 5 月、タケダはシャイアー社買収の意向について公表した。新たな事業体制を構築し、患者中心の組織をさらに強化するためである。この買収は、両社の比類ない強みと相互補完的なパイプラインおよび製品ポートフォリオをうまく融合させるものであった。新生タケダはより強固で革新的な製品ポートフォリオと、市場の可能性に応じたより魅力的な地理的プレゼンスを獲得した。また、持続的な売上成長、キャッシュ・フローの力強い創出、財務面での強靭性を実現できるようになった。
 2019年1月8日の買収完了とともに始まった新たな事業運営において、タケダは患者のニーズに新しい形で応えることになった。地理的にはより現地への権限移譲を進め、研究開発では投資を拡大した。
 2019年1月15日、ニューヨーク証券取引所でのオープニング・ベル・セレモニーに参加した。それは、タケダが東京証券取引所とニューヨーク証券取引所の両方に上場する唯一の医薬品企業であることを象徴するものであった。

One Takeda としての初年度の成功

 タケダは、統合初年度を成功裏に終え、世界の革新的な医薬品企業のトップ 10としての地位を獲得した。今では、バリューを根幹とする、真にグローバルな研究開発型のバイオ医薬品のリーディングカンパニーとして活動している。約80カ国・地域にいる5万人の従業員全員が、世界の患者の生活の質の向上に貢献できるよう、尽力している。
 主要な5つのビジネスエリア、すなわち消化器系疾患、希少疾患、血漿分画製剤、オンコロジー(がん)、ニューロサイエンス(神経精神疾患)における14のグローバルブランドに注力し、財務体質を強化した。
 研究開発エンジンも、世界トップレベルに強化された。研究開発においては、オンコロジー(がん)、希少疾患、ニューロサイエンス(神経精神疾患)および消化器系疾患の4つの疾患領域に重点的に取り組むとともに、血漿分画製剤およびワクチンにも注力している。
 パイプラインは、低分子化合物、組換えタンパク質、遺伝子治療、細胞療法、ワクチン、血漿分画製剤など、多様なモダリティ(創薬手法)で構成されている。トランスレーショナル・メディシンを基盤に、データサイエンスやゲノム研究の専門性を強化することで、研究開発エンジンはさらに推進される。
 日本、米国、欧州・カナダ、成長新興国の4つの地域において、地域別収益も拡大した。日本と米国では主導的な地位を確立している。グローバル製造ネットワークでは、最先端の技術とデジタル・イノベーションを活用し、自社生産と外注生産のバランスをとることで、生産体制を最適化している。

多様で働きやすい職場づくり
 タケダの成功の礎は、従業員である。それぞれが持つ能力や経歴・文化・価値観における多様性が、保健医療におけるイノベーションをもたらし、より多くの患者や医療関係者のニーズに応えられるようになった。
 タケダは、インクルーシブで、安全で、互いに刺激し合えるような職場環境の醸成に取り組んでいる。どの従業員も学び、成長し、専門性を高め、人々の生活に変化をもたらせるようなチャンスが与えられる。コーポレート・ガバナンスについては、多様なタケダ・エグゼクティブ・チームと取締役による独自の透明性高い体制になっている。
 また、数年連続して Top Employers Institute により優れた人事制度を有する企業である Global Top Employer に認定されている。Top Employers Instituteは、人材戦略、キャリア開発および後継者育成、能力開発、文化などの10 項目について、各企業の人事施策に関する事例600件を評価するものである。2020年、タケダは33カ国で Top Employers の認定を受けた。引き続き、従業員が成長し、その可能性が最大限引き出されるような、多様で、インクルーシブで、協力的で、楽しい職場環境の整備に尽力する。

財務力

 財務基盤も強固である。事業売却、レバレッジ低下、シナジー創出について顕著な進展を遂げており、100 億米ドルのノン・コア資産売却目標の達成に向けて順調に進んでいる。無駄のないオペレーション・モデルにより、堅調な財務パフォーマンスと競争力のある株主還元を実現する。

パーパス(企業の存在意義)を軸としたサステナビリティ

 タケダは、気候変動によって、感染症の脅威が増大するなど公衆衛生に対するリスクが高まっていると認識している。グローバルなバイオ医薬品企業として、環境と患者を守ることは、人々の健康と未来に貢献するという我々のミッションの根幹とも言える。2020 年1月、タケダは、温室効果ガスの排出量削減などを通じて、2040年までにバリューチェーン全体でカーボンニュートラルを達成するという目標を公表した。2020年4月、こうした気候変動に関する目標は、世界の気温上昇を抑えるための科学的根拠に基づいた水準であるとして、Science Based Targets initiativeにより公式に評価された。こうした考え方は、当社のグローバルCSRプログラムにおいても同様である。

医薬品アクセス戦略

 タケダの医薬品アクセス戦略は、単に医療システムが整っていない地域に医薬品を寄付するだけではない。研究開発を含め、地域の保健医療における能力開発にも取り組んでいる。これは、患者に対してより長期にわたり影響をもたらしうるからである。
 また、国の経済力にあわせて、より迅速で幅広い医薬品アクセスを確保したいと考えている。例えば、GDP や保険医療インフラなどの特性に応じて、一部の製品について段階的な価格設定を導入した。そうすることで、世界中のさまざまな市場で患者への医薬品アクセスを持続的に確保できるようになる。これは、患者第一に考えるという我々のバリューに合致している。

社会貢献活動

 CSR 戦略においては、疾病予防と人材育成を優先課題とし、開発途上国や新興国において持続的かつ長期的な取り組みを行っている。全世界の従業員がタケダとして支援するプロジェクトを選定するとともに、Employee Participation Program(従業員参加プログラム)を通じて支援プロジェクトに実際に関わることができる。2020年、タケダは赤十字社や国連主導の団体などの非営利団体に2500万米ドル以上の寄付を行うとともに、現物寄付も行い、COVID-19に対する取り組みを支援している。

まとめ

 タケダは、数々の変革を成し遂げることで、重要な医薬品へのニーズ、新製品の発売、適応症の追加、主要国・地域での売上伸長などからもたらされる成長モメンタムを維持してきた。14のグローバルブランドの堅調な業績、事業運営の規律の継続、コストシナジーの実現により、2019 年度末には高い利益率とキャッシュ・フローを確保することができた。
 グローバルな市場機会と一致した地理的プレゼンス、極めて有望なパイプライン、堅固な財務体質を生かし、タケダはこれまで以上に患者、地域社会、株主に貢献することが可能となる。

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