田辺三菱製薬の2019年度決算は、売上収益3798 億円(前期比△ 449 億円、 10.6%減)、コア営業利益190 億円(同△367 億円、 65.9 %減)、営業利益△ 60 億円(前期比△563億円、112.1 %減)の減収・減益となった。
売上収益の内訳は、国内3139 億円(前期比62 億円増、2.0 %増)、海外658 億円(前期比△512 億円、 43.7 %減)。
国内医療用医薬品は、2019年10月の薬価改定の影響はあったものの、関節リウマチなどの治療剤「シンポニー」、2型糖尿病治療剤「カナグル」が 順調に伸長。加えて2018年12月に投薬制限が解除されたアレルギー性疾患治療剤「ルパフィン」の増収、2018年7月にヤンセンファーマとの販売枠組みを変更した効果が通期寄与したクローン病などの治療剤「ステラーラ」の増収などにより、前期比1.9%増収の3043億円となった。
海外医療用医薬品は、2017年8月に米国で発売した筋萎縮性側索硬化症(ALS治療剤)「ラジカヴァ」が、新規処方待機患者が一巡したことによる減収などにより、前期比9.8%減収の497億円となった。
ロイヤリティ収入等は、ノバルティス社に導出した多発性硬化症治療剤「ジレニア」や、ヤンセンファーマシューティカルズ社に導出した2型糖尿病治療剤「インヴォカナ」および同剤とメトホルミンの合剤に係るロイヤリティ収入の減少などにより、前期比72.4% 減収の174億円となった。
田辺三菱製薬は、ノバルティス社との間で仲裁手続きに入ったため、同社から受け取る「ジレニアロイヤリティ」のうち、同社が契約の有効性について疑義を提起している部分については、IFRS第15号に従い、売上収益の認識を行っていない。ノバルティス社との仲裁手続き中は、売上収益の認識を行わないという会計処理を継続する。
当該公表金額にかかわらず、田辺三菱製薬は、ノバルティス社が契約に従って支払うべきロイヤリティの全額を受領する権利があると主張しており、今後、仲裁において適切にこの権利を追求していく。
コア営業利益は、ロイヤリティ収入の減収が大きく影響し、販売費および一般管理費や研究開発費が減少したものの、減益となった。
営業利益は、非経常項目において、製品に係る無形資産の減損損失、構造改革費用等を計上したため、大幅な減益となった。
なお、支配株主である三菱ケミカルホールディングスによる田辺三菱製薬の完全子会社化により、田辺三菱製薬の株式は本年2月27日をもって上場廃止となった。また、田辺三菱製薬は、昨年11月18日開催の取締役会において、同日公表した「三菱ケミカルホールディングスによる同社普通株式を対象とする公開買付け」成立を条件に、2019年度の期末配当を行わないことを決議している。
2020年度業績予想は、 売上収益3835億円(前期比36 億円増、1.0 %増)、コア営業利益100億円(前期比△90億円、 47.5%減)、営業利益170億円(前期比230 億円増)、税引前利益175億円(前期比239 億円増)、親会社の所有者に帰属する当期利益85億円(前期比83億円増)
上記業績予想には、新型コロナウイルス感染症の影響を含んでいない。
田辺三菱製薬の親会社である三菱ケミカルホールディングスが13日に開いたオンラインによる決算説明会で伊達英文執行役常務は、ヘルスケア分野としてジレニアの仲裁状況について言及。「ライセンス収入は、収益認識の停止で-448億円となっている」と報告した上で、「仲裁は普通2年以上を要すると言われている。現在、通常のプロセスとしてヒアリングが行われており、今後どうなるのか基本的に判らない」とコメントした。