再生医薬治験に新型コロナ肺炎由来ARDS患者組入れ      ヘリオス

 iPS細胞等を用いた再生医薬品開発フロントランナーのヘリオスは13日、体性幹細胞再生医薬品「HLCM051」の日本のARDSを対象とする治験への新型コロナウイルス(COVID-19)肺炎由来ARDS患者を組入れると発表した。
 HLCM051は、日本国内における体性幹細胞再生医薬品の開発パイプラインで、ヘリオスは、2016年1月、米国のバイオベンチャー企業Athersysと、同社の開発する幹細胞製品マルチステムを用いた脳梗塞に対する再生医療等製品の国内での開発・販売に関する独占的なライセンス契約を締結。同パイプラインを導入し、さらに2018年6月に同社との提携拡大を図り、日本における急性呼吸窮迫症候群に対する開発・販売ライセンスを取得して開発を開始した。
 現在、ヘリオスは、日本国内でHLCM051を用いて、脳梗塞急性期及び急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を対象とした治験を実施している。ARDSに対する治療法の開発においては、肺炎を原因としたARDS患者を対象とした、有効性及び安全性を検討するP2試験(ONE-BRIDGE試験)を実施しており、組入れは順調に進んでいる。
 ARDSは、単一の疾患ではなく、基礎疾患や外傷等によって好中球等の免疫系が過剰に誘発され、炎症を起こすことで肺が傷害を受け肺水腫となり、その結果、重度の呼吸不全となる症状の総称である。ARDS診療ガイドラインによると、死亡率は30~58%と予後が非常に悪い。ARDSに対する治療として、集中治療室で人工呼吸器を用いた呼吸管理を中心とする全身管理が行われる。
 今回、武漢における新型コロナウイルスの初期症例群に関して発表されたデータでも、入院した患者のうち31~41.8%の割合でARDSを発症し、また死亡例ではARDS合併が54~93%確認されており、重症患者におけるARDS治療の必要性は非常に高い状況である。
 ヘリオスは、新型コロナウイルス肺炎由来のARDS患者の組入れに関して、専門医師及びPMDA(医薬品医療機器総合機構)と協議を進めてきたが、今般、ONE-BRIDGE試験のプロトコルを変更し、当該患者の組入れを開始する。
 ONE-BRIDGE試験は、肺炎を原因疾患とするARDS患者に対してHLCM051の有効性及び安全性を検討するもの。非盲検下で、標準治療を対照として実施している。これまで30名を対象に患者組入れを行ってきたがが、新たに同一試験内に評価対象群(コホート)を追加し、新型コロナウイルス由来の肺炎を原因疾患とするARDS患者約5名を症例として組入れ、安全性の検討を行う。
 なお、今回追加する新型コロナウイルス由来症例を対象とした約5症例の集積は、現在実施中である30症例とは区別して行うため、新たなコホート追加による従来実施してきた治験進捗への影響はない。

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