再生医薬品で新型コロナも起因となる急性呼吸窮迫症候群の治験を推進   ヘリオス

 ヘリオスは27日、国内で体性幹細胞再生医薬品マルチステム(HLCM051)を用いて、新型コロナウイルスも起因となる脳梗塞急性期及び急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を対象とした治験を推進していると発表した。
 今回、武漢における新型コロナウイルスの初期症例群に関して発表されたデータでも、入院した患者のうち31~41.8%の割合でARDSを発症、また死亡例ではARDS合併が54~93%確認されており、重症患者におけるARDS治療の必要性は非常に高い状況にある。
 また、米国生物医学先端研究開発局(BARDA)は、マルチステムが新型コロナウイルスに対する治療薬開発の候補になりうる可能性を示唆している。
 ARDSに対する治療法の開発では、肺炎を原因としたARDS患者を対象とした、有効性及び安全性を検討するP2試験(ONE-BRIDGE試験)を実施しており、組み入れは順調に進んでいる。
 ARDSは、単一の疾患ではなく、基礎疾患や外傷等によって好中球等の免疫系が過剰に誘発され、炎症を起こすことにより肺が傷害を受け肺水腫となり、重度の呼吸不全となる症状の総称である。ARDS診療ガイドラインによると、死亡率は30~58%と予後が非常に悪い疾患である。ARDS治療では、集中治療室で人工呼吸器を用いた呼吸管理を中心とする全身管理が行われる。
 ONE-BRIDGE試験においては、患者組入れ基準上、新型コロナウイルスが原因で肺炎となりARDSを発症した患者の組入れも可能であるが、現在、有効性や安全性を評価する上で課題がないか専門医師及び独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)と協議している。
 再生医療は、世界中の難治性疾患の罹患者に対する新たな治療法として期待されている分野であり、製品開発・実用化へ向けた取り組みが広がり、近い将来大きな市場となることが見込まれている。ヘリオスは、iPS細胞(人工多能性幹細胞)等を用いた再生医薬品開発のフロントランナーであり、実用化の可能性のあるパイプラインを複数保有するバイオテクノロジー企業。2011年に設立、2015年に東証マザーズに上場し、再生医薬品の実用化を目指して研究開発を進めている。国内において、2017年より開始した、体性幹細胞再生医薬品を用いて脳梗塞急性期を対象疾患にした臨床試験に加え、2019年4月より同製品を用いたARDS(Acute Respiratory Distress Syndrome:急性呼吸窮迫症候群)に関する治験を実施している。
 また、臓器原基(臓器の基となる細胞)の移植により、体内で欠損した機能を補う臓器原基の治療法など、iPS細胞技術を用いた新たな治療薬の創出のための取り組みも進めている。

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