中等~重症の活動期クローン病P3試験で好結果 武田薬品 エンティビオ皮下注射製剤

 武田薬品は17日、消化管選択的作用を持つ生物学的製剤であるエンティビオの皮下注射製剤について、中等症から重症の活動期クローン病患者を対象としたP3相試験(VISIBLE 2 試験)で、52週時点での臨床的寛解を達成したと発表した。
 同試験結果は、12日~ 14日までオーストリアのウィーンで開催された第 15回欧州クローン病・大腸炎会議(ECCO)で発表された。
 VISIBLE2試験は、中等症から重症の活動期クローン病成人患者に対して、エンティビオ皮下注射製剤による維持療法を行ったときの有効性および安全性を評価する臨床試験。同試験は、治療開始時点(0週)および2週時点に非盲検下にてエンティビオの点滴静注製剤による静脈内投与を2 回行う導入療法を実施後、6 週時点で臨床的改善が得られた患者に対して実施された。
 VISIBLE 2試験では、52週時点で臨床的寛解が得られた患者の割合は、エンティビオ皮下投与群でプラセボ投与群と比較して有意に高く(48.0%[n=132/275]対34.3%[n=46/134]、p=0.008)、同試験の主要評価目的を達成した。
 Séverine Vermeire 氏(ルーヴェン・カトリック大学Head of the Department of Chronic Diseases & Metabolism、ECCO名誉会員)は、「今回のVISIBLE2試験結果は、消化管選択的作用を持つエンティビオの皮下注射製剤が、自己投与治療を好む患者に対して新たな治療法となる可能性を示唆している」とコメントしている。
 ECCOでは、52 週時点で大幅な臨床的改善が得られた患者の割合は、エンティビオ皮下投与群で 52.0%(n=143/275)であったのに対し、プラセボ投与群では 44.8%(n=60/134)であった副次評価項目結果も発表された。同結果は、投与群間で統計学的な有意差はなかったため、残りの副次評価項目については統計学的な検定は行われなかった。
 また、ベースライン(0週)時点でステロイドによる治療を受けていた患者のうち、52週時点でステロイドフリーでの臨床的寛解が得られた患者の割合は、エンティビオ皮下投与群で45.3%n=43/95)、プラセボ投与群で18.2%(n=8/44)であった。同試験には、抗TNFα抗体製剤による治療歴がない患者および抗TNFα抗体製剤による治療歴のある患者が登録された。
 抗TNFα抗体製剤による治療歴がない患者のうち、52週時点で臨床的寛解が得られた患者の割合は、エンティビオ皮下投与群で 48.6%(n=52/107)、プラセボ投与群で 42.9%(n=27/63)であた。
 エンティビオの皮下投与は6週時点から開始され、以後2週間ごとに最長50 週まで投与され、52週時点で主要評価項目が評価された。エンティビオ皮下注射製剤の安全性に関する所見は、クローン病患者を対象としたエンティビオ点滴静注製剤で認められた既報の安全性プロファイルと同様であった。どちらの投与群でも、重篤な感染症、悪性腫瘍、および肝障害が認められたのは患者の5%以下であった。
 エンティビオ皮下投与群の2.5%で抗エンティビオ抗体が検出され、このうち約半数で中和抗体が発現した。エンティビオ皮下投与群の3%未満で注射部位反応が認められた。
 William Sandborn氏(カリフォルニア大学サンディエゴ校のDirector of the Inflammatory Bowel Disease Center)は、「これらのデータは、エンティビオの皮下注射製剤が点滴静注製剤と同様の安全性プロファイルを有すると考えられる」と説明。その上で、「エンティビオの皮下注射製剤が承認されれば、点滴静注製剤とともに治療選択肢に加えられ、患者個々のニーズや好みに合わせた治療が受けられるようになる」と述べている。
 エンティビオ皮下注射製剤は、世界の複数の主要規制当局に承認申請され、現在審査段階にある。

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