ホワイトニングを契機とした口腔ケアで疾患を予防  田中久弓氏(Pearl Whitening 代表歯科医師)に聞く

田中氏

 歯周病は、糖尿病、動脈硬化、心疾患、骨粗鬆症、認知症などの生活習慣病から早産や低体重児出産に至るまで、様々な疾患と関連している。歯と健康の密接な関わりを裏付けるエビデンスは枚挙に暇なく、“口腔ケア”はより重要性を増している。こうした中、近年、「歯のホワイトニングを契機とした口腔ケアによる疾患予防」が注目を集めている。そこで、ホワイトニングによる生活習慣病等の疾患予防の実態をPearl Whitening(大阪市西区土佐堀1-1-30)代表歯科医師の田中久弓氏に聞いた。
 歯周病は、歯垢中の細菌が炎症を起こして、歯を支える骨(歯槽骨)や歯肉を破壊していく疾患で、痛みなどの自覚症状は少なく、「サイレントキラー」と言われている。そのため、放置している間に進行し、気付いた時には「歯を失う」ケースも少なくない。加えて、糖尿病、心疾患、動脈硬化、認知症などの生活習慣病や、肺炎、出産に至るまで、様々な疾患と密接に関連している。
 例えば、歯周病の炎症性物質が膵臓に移行すればインスリンの分泌が悪くなり、糖尿病が発症し易くなる。逆に、糖尿病になれば免疫が低下して歯周病に罹りやすくなる。この負のスパイラルも、「口腔ケアによって改善できる」
 歯周病とアルツハイマー病の関連では、新たな知見の一つに、「死亡したアルツハイマー病患者の脳から歯周病菌の一種のポルフィロモナス・ジンジバリス菌が発見され、同患者の脳内にはこの菌が出す毒素(ジンジバイン)が蓄積していた」という報告がある。
 田中氏は、「歯の表面につく歯垢の中に歯周病菌や虫歯菌が塊となって存在する。口腔ケアでその菌数を減らしてやれば、血管に流れる菌の量も減少するので脳内に移行しにくくなり、疾患の予防に繋がっていく」と説明する。また、歯周病と早産や低体重出産との有意な相関関係を報告した論文もある。
 このように、健康寿命をも脅かしかねない歯周病の予防には、患者と歯科医師のインフォームドコンセントに則った“口腔ケア”が不可欠となるのは言うまでもない。だが、残念ながら、歯科クリニックは「痛くなってから行く」イメージが強く、“口腔ケアによる疾患予防”に対する一般市民の認知度は低い。
 こうした中、最近注目されているのが「ホワイトニングによる口腔ケアの意識付け」だ。30年前に米国で実用化されたホワイトニングは、薬剤を使って色素を抜き、天然の歯を白く美しく見せる手法で、審美歯科治療の一つである。
 田中氏は、「ホワイトニングをすることで、自身の口の中に興味を持ち、口腔ケアに繋がるケースが多い」とほほ笑む。「歯が白くなっていく過程」や、「白い歯を人に誉められる」ことで、「口の中への関心が高まるとともに、歯磨きが上手になる」からだ。
 最初、ホワイトニングで歯科医院に通い、1~2か月程度で歯が白くなってくると、歯垢や歯石採りなどの口腔ケアに移行していく。
 「どんなに歯磨きがうまくても、どうしても磨き残しがある。磨き残した部分は、しっかりと歯科医院でメンテナンスしてもらう以外に手立てはない」と強調する田中氏。
 その上で、「1〜2カ月に1度の歯科医院でのメンテナンスが、歯周病や虫歯予防に繋がる」と訴えかける。ホワイトニングで定期的に歯科医院通えば、「早い段階で歯周病を見つけたり、その進行を遅延させる」ことも可能だ。 ホワイトニングの顧客層は30代・40代の青年層だけでなく、50代・60代の経営者にも多い。ホワイトニングは、誰もが、最初は身だしなみの一環として始めるが、それが「口腔ケアの意識付け」のみならず、白い歯を誉められることで不愛想な人でも表情が和らぎ「好感度のアップ」にも繋がる。

(図)


 歯は、縦面で割ると三層構造になっていて、最も内側が神経で、その神経を象牙質が覆っており、一番外側はエナメル質で構成されている(図)。
 エナメル質は半透明の乳白色で、そこにお茶やコーヒーの茶しぶ、ワイン・タバコのヤニが付着している場合、クリーニングで除去してやれば本来の歯の白さを取り戻す。そこからさらに白くするには、黄ばみの原因である象牙質着色色素を抜く必要がある。象牙質内の有機質成分に着色成分が含まれており、その黄ばみが半透明のエナメル質から透けて見えることが歯が黄ばんで見える主たる原因になっている。加齢とともに歯が黄色くなる、または遺伝的に元々の象牙質の黄ばみが強い人もいる。
 ホワイトニングには、歯科医院で薬剤を塗って光を当てる「オフィスホワイトニング」と、医院でもらった薬剤とオーダーメイドのマウスピースを使って患者が自宅で行う「ホームホワイトニング」がある。
 オフィスホワイトニングは、「痛くない・しみない」、「寝ている間に終わる」、「即効性がある」などのメリットと、「色戻りする」、「何回も通う必要がある」のデメリットがある。
 オフィスホワイトニングは、エナメル質を曇りガラスのような状態にして象牙質の中の黄ばみをシャットダウンして白く見せるため、象牙質の中にある本質的な黄ばみは改善されていない。従って、「エナメル質が半透明の乳白質に戻ると、元の黄ばみが浮き出てくる」

完全個室制のPearl Whiteningの診察室


 一方、象牙質の本質的な黄ばみを除去するのがホームホワイトニングで、オーダーメイドのマウスピースの中に漂白のためのジェルを入れて、食事以外の通勤、入浴、就寝中など、1日30分~2時間程度装着する。ジェルは、マウスピースの密閉された空間の中でしっかりと象牙質まで浸透し、本質的な黄ばみを除去する。マウスピースの装着が分かりにくいのも特徴の一つだ。
 その反面、ホームホワイトニングには、「白くするのに時間がかかる」という欠点があるため、「オフィスホワイトニングとホームホワイトニングの併用」を田中氏は推奨する。
 ある程度歯が白くなってくれば、色戻りし難くなり、歯を白くするための歯磨き粉などの使用により自己メンテナンスは結構簡単になる。
 テトラサイクリング歯の人は、「ホワイトニングで白くなるケースとならないケースがあり、やってみなければ判らない」というのが実情だ。テトラサイクリング歯では重度の場合、改善のためには、歯を削ってかぶせる治療が必要となる。「最初から削る治療に進むよりは、まずは相談に来て頂き、ホワイトニングに挑戦してみるというのも一つの選択肢としてすすめている」 ホワイトニングに特化したPearl Whiteningは、「歯科医がホワイトニングの施術からクリーニングまで全過程を行う」ことを特徴としており、「安心して通ってもらえる」と田中氏は胸を張る。
 歯が白くなるまでに必要なホワイトニングの回数は、歯の質や現状の黄ばみなどで個人差がある。Pearl Whiteningでは、オフィスホワイトニング1回(60分)1万5000円で、回数券やパッケージ価格にしたお得なメニューも存在する。ホームホワイトニングスタートセット(2万円)など、個々のホワイトニングに合致した様々なプランニングコースを用意している。

タイトルとURLをコピーしました