column (2)  薬生総発0402第1号「調剤業務のあり方について」通知を咀嚼する  門林宗男 (元兵庫医科大学病院薬剤部長・元兵庫医療大学薬学部教授)

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 本通知では、薬局において薬剤師以外の職員にもできる一部の薬剤業務が示され、その運用条件として手順書と担当者への研修が求められている。また、薬局における対物業務の効率化に向けたさらなる推進へと、有識者の意見を聞いて別途の通知があることも示されている。薬局業務におけるグレーゾーンとも言われた領域に一歩踏み込んだ内容と評価される。

 調剤の核心とされる部分を取り巻く業務が、機械化等により多様化してきていることから、本通知の運用が薬局業務へかなりの影響を及ぼすことと思われるが、実際の運用には注意も必要だ。少なくとも、米国の薬局におけるPharmacy technician制度等とはかなりの違いがある。Pharmacy technicianは州ごとに規定があり、資格や教育プログラムまたはOn-The-Job Training(OJT)通して必要な業務を学び、試験もある。また、資格維持のために2年に1度20時間程度の継続教育コースを受講しなければならない。Pharmacy technicianの業務は、医薬品の在庫管理はもちろん、処方箋による薬剤調製の大部分がその範疇にある。医療制度や環境が全く異なるので比較対象としては不適切かもしれないが、我が国の薬剤師が調剤として担ってきた対物業務のかなりの部分が、Pharmacy technicianの業務領域にある。

 振り返って、本通知の運用を考えてみよう。薬局現場として取り組むべきことは、当該業務にかかる手順書の整備と職員研修があるが、標準となるお手本がなく個々の施設任せである。既に、本通知に基づいて業務を遂行している薬局もあると思うが、思うところ、次のような事項等に腐心されたのではないか。手順書に関しては、①手順書の名称、②薬剤師以外の者で本通知よる研修修了者の呼称、③組織内統制体制と責任の所在の明確化(薬局の管理体制含む)、④薬剤師以外の者に実施させる業務の指示方法と内容(非薬剤師が実施してはいけない業務)の記述、⑤非薬剤師が実行した業務の確認と責任の所在、⑥調剤機器の管理・使用と責任の所在、⑦非薬剤師が一部の薬剤師業務を実行することの患者説明(店内表示含む)、⑧不測の事態が発生したときの対応、など。

 また、薬事衛生上必要な研修に関しては、①研修受講者の特定、②遵守すべき法令の範囲・説明(守秘義務含む)、③医療倫理の理解と意識高揚、④薬局業務の衛生管理、⑤医薬品の種類と法的要件、⑥薬剤師以外の者に実施させる業務の指示受け(非薬剤師が実施してはいけない業務)の説明と実習、⑦業務の遂行と報告事項(責任の所在)の説明、など。

 実際に職員研修を実施するとなると、薬局職員への説明と人選及び目標到達度の測定、担当職員の待遇など悩ましい問題もある。さらに、薬剤師以外の職員に薬局業務の一部を行わせることについて、業務指示や薬剤師の責任の所在の明確化とともに患者さんへの説明と納得を得て薬局の信頼を損ねないように配慮しなければならない。薬局では、薬剤師でない人を薬局事務などと称して雇用し、会計処理や在庫管理などを担当させることは以前から行われてきた。

 その一方、調剤への補助者やテクニシャン等に関する役割・制度・資格などの調査・研究は充分行われてきたとは思えないし、こうした取組みは業界人から問題視される風潮が続いてきたこともあり、環境整備に不安があると考えられる。さらに、調剤業務の補助が「ヒト」か「機械」かについても、安全性や調剤報酬算定を含めて議論のあるところではないだろうか。本通知では、手順書と研修を経て薬剤師でない職員に、薬剤師の責任のもとに一部の薬剤業務に従事させることを可とするが、当該職員のキャリアやOJTについては言及されていない。また、本通知が日本版テクニシャン創生の前段階ではないと理解するし、薬剤業務補助担当者として新たな公的認定制度創設や登録販売士の活用等が最良とも思わないが、薬剤業務補助者については、最低限の必要キャリアや研修すべきモデルOJTプログラム等の提示があっても良いのではないかと考える。

 さて、本通知及び医薬品・医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)の改正、さらには保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則の改正等も考えられ、薬局運営にどのような影響を及ぼすのであろうか。薬剤師の配置・業務問題について「一律で40枚ということの合理性がない。薬局の業務が『モノからヒトへ』という流れになったとき、一体、薬剤師は何をすべきか、ということになるし、調剤の中で薬剤師がどこまでを担うのかという話も出てくる(厚生労働省医薬・生活衛生局長談)」の言葉は重い。

 また、服薬期間中の患者の服薬状況の把握と薬学的知見に基づく指導及びその記録は、薬剤師の責務として重要性が増してこよう。調剤報酬改定への影響が十分考えられる状況だけに、経営資源(人・モノ・金の有形財産と情報の無形財産)の運用を改めて考える機会が来ていると思われる。今後の薬局の運営や調剤の流れがどのように変化するかは興味津々だが、薬剤師の職能発揮と薬局業務の効率化のために薬剤師自らが答えを出していく必要があろう。

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