慶應義塾大学とGEヘルスケア・ジャパンは、AIサイエンティストの育成と研究促進を相互に支援し合う「産学医工連携プロジェクト」を始動する。同プロジェクトは、日本が直面しているAIデータサイエンティスト不足の課題に対応するもの。両者が、医療分野で連携して産学医工連携の強みを活かし、「AI×画像診断」、「AI×メディカル」における社会実装で世界をリードする人材と研究を創出するエコシステムの構築を目指す。
AI、IoT、ビッグデータ解析など、技術進展を最大限に活用したデジタルトランスフォーメーションが様々な分野で進められている中、集積されたデータを分析し、その結果を各分野で活用していくために重要な役割を担うAIデータサイエンティストへのニーズはますます高揚している。
医療分野でもSIP(戦略的イノベーション創造プロジェクト)におけるAIホスピタル事業や保健医療分野AI開発加速コンソーシアムに代表される国を挙げての導入の動きが加速する一方で、必要とされるAIデータサイエンティストの絶対数が不足しているのが現状だ。また、優秀なAIデータサイエンティストが携わっても、工学的な技術に特化した研究や、医師が多忙により日々の臨床の中で十分に時間を割けない研究などがあり、研究成果が社会実装につながりにくいという課題もある。
こうした課題を解決すべく、慶應義塾大学医学部、理工学部とGEヘルスケア・ジャパンが、AIデータサイエンティスト育成のための連携協定を締結して、次世代を担う人材育成およびAI研究加速の視点で協議を推進。その結果、両者間で相互の人的、知的、物的資源の交流を推進し、AIサイエンティストの育成と研究促進を相互に支援し合う今回の産学医工連携プロジェクト始動に至った。
同プロジェクトは、慶應義塾大学の医学部および理工学部の優秀な学生が集まってくるプロジェクトルームを慶應義塾大学病院内に設置し、AI研究開発のためのITインフラを整備するというもの。「AI×画像診断」「AI×メディカル」において世界をリードするAIデータサイエンティストを創出するための教育、トレーニングの仕組みを取り入れるとともに、研究のスピードと質の向上、論文・学会発表を促進する連携推進プロジェクトチームを発足して、新しいアルゴリズムの製品応用および社会実装を実現を加速させていく。
医学部放射線科学(診断)教室陣崎雅弘教授は、「AIやディープラーニングに関して優秀な能力を持った学生は既に多く存在する」と断言。その上で、「データサイエンティストが不足している中で、彼らにさらなる成長機会を与えるのは、AI研究の加速、更にAIの社会実装も加速に直結すると考えている」と訴えかける。
また、理工学部生命情報科学榊原康文教授は、「理工学部における研究は技術を追求する傾向にあるが、医学部や企業との枠組みに入ることで、研究が臨床的価値と社会実装につながる」との考えを示す。
一方、GEヘルスケアの多田荘一郎CEOは、「このプロジェクトで日本に力強いイノベーションを生み出すプラットフォームが構築され、研究や育成に留まらず社会実装につながる医工・産学連携の推進を期待したい」とコメントした。