医療従事者の機能特化と連携が今後の医療のポイントに 大阪府薬未来を担う薬剤師フォーラム

 「2019年度大阪府薬未来を担う薬剤師フォーラム」が5月18日、「2035年薬剤師の姿」をメインテーマに大阪市内で開催され、森田朗氏(厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会部会長)が「これからのわが国の社会保障・医療~人口減少社会における薬剤師の役割~」、本田あきこ氏(日薬連盟副会長・次期参院選組織内統一候補)が「愛、希望これからの医療と薬剤師」、児玉孝氏(前日薬会長)が、「薬剤師への社会的な課題と政治」を演題に講演した。
 その中で森田氏は、「人口減少の中、限られた財源で患者のサービスの質を担保するには、医療従事者の機能特化と連携、そのマネージメントが大きなポイントになる」と強調した。
 冒頭のあいさつで藤垣哲彦大阪府薬会長は、「薬機法の改正の中で大きな動きがあり、4月には調剤の在り方について通知が出た。こういった動きの根底には、日本の人口構造の変化が大きな要因になっている」と指摘した。さらに、「このような環境において薬剤師職能を確立・拡大するには、今後の医療を支える人材育成と政治力が必要不可欠になる」とフォーラム開催趣旨を説明した。

森田氏


 一方、森田氏によると、日本の人口は2010年の1億2086万人をピークに、2065年には8808万人、2100年には5972万人にまで減少する。
 人口と年齢構成については、2015年は老年人口26・6%、生産年齢人口60・8%、年少人口12・5%で、2065年には、同順に38・4%、51・4%、10・2%と推移する。高齢化のピークは2040。
 人口推移は、都道府県別に大きく異なり、東京は圧倒的に人が集まる。大阪・神奈川・名古屋などの都市部人口は減少しないものの、地方では2/3以上人口が減少する県もある。
 人口が減らない都市部では、高齢者が増加して必然的に住民税収が減ってくる。高齢化が進めば、これを支えるための社会保障費の比率が高くなり、投資へのる財源が減少するのは必至である。
 こうした人口推移をみると、日本の社会は、厳しさを余儀なくされる。医療の在り方もそうとう急速な減少が生じる。
 近年の医師数は毎年4000人程度増加しており、2016年では31・9万人に上る。都道府県別にみた人口10万対医師数は、徳島県が最も多く315・9人、埼玉県が最も少なく160・1人。医師数は、都市部に多く、医療機関の収益は患者数によって決まってくる。
 薬剤師数は30・1万人で、そのうち薬局薬剤師は17・2万人、病院・診療所薬剤師5・8万人、その他7・1万人。薬局数は5・9万軒で微増傾向にある。
 森田氏は、「今後の人口構造の変化を鑑みると、医師・薬剤師の地域偏在について何らかの調整が必要になる」と指摘し、「人口が減ると患者数も減る。首都圏、近畿圏への医療従事者の移動は当然考えられる」と明言。
 社会保障費についても、「パイを色々なセクターで奪い合っている。前回・前々回の診療報酬改定では、薬剤師がやり玉に挙がったが、次回は、入院、外来、歯科も含めて厳しいパイの取り合いになる」と予測する。
 では、人口が減少する中、限られた財源で患者の利便性・サービスの質を担保するにはどのような手立てが考えられるか。森田氏は、「在宅で地域包括ケアが話題になっているが、医師、薬剤師、看護師、介護士の役割分担が必ずしもうまくいっていないのが現状である」と指摘する。
 さらに、「今、高度な薬剤知識が求められる中、必ずしも医師がすべての薬剤について分かっているわけではない」との認識を示し、「お互いが自分でやるべき機能を特化し、他職種も含めてうまく連携するためのマネージメントの仕組みを考えていかねばならない」と力説した。
 医師の働き方改革にも言及し、「日本の場合、仕事の中身を論議せず、勤務時間の上限にばかりに目が向いている」と警鐘を鳴らす。
 「仕事の中身を変えずに時間を減らせば最終的に生産量が減少し患者にしわ寄せがいく」と強調し、「医師のように報酬の高い職種は、医師にしかできない仕事に従事してもらう必要がある」と断言。「医師の働き方改革も在宅医療と同様にタスクシフトと役割分担がしごく重要になる」と訴えかけた。
 医療におけるIT化推進ついても「北欧諸国ではごく当たり前になっているが、個々の患者の治療歴、処方歴を一元に管理するパーソナルヘルスレコードのデータ管理の構築も不可欠になる」との考えを示した。
 

本田氏

 本田あきこ氏は、熊本地震の災害支援活動における薬剤師の活躍ぶりを紹介し、「45日間で延べ1800人の薬剤師が熊本にきて職能を発揮した」と報告。
 その上で、「平時にも同様に職能を発揮するには、医療の中心である医政局で薬剤師の席が必要で、薬剤師の政治力が必須となる。国会で薬剤師の主張を伝え、必要な政策が実現できるように、是非応援してほしい」と要望した。
 児玉氏も、「薬剤師が、医薬品を通じて健康寿命の延伸や安全性を担保した医療の効率化等に貢献するには、薬剤師の自覚と努力と薬剤師職能を発揮するための政治力が不可欠になる」と訴求した。

懇親会では国会議員、大阪市議、大阪府薬幹部らによる「頑張ろうコール」も

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