小野薬品は6日、本年1月、三重大学医学部奨学寄附金問題で同社社員2名が津地方検察庁に贈賄容疑で逮捕された事件を受けて立ち上げた外部調査委員会の調査報告書を受けて、今後の対応や関係者の処分を決定したと発表した。
調査報告書は、本年2月に3名の外部弁護士で立ち上げられた調査委員会が作成したもので、これまで同委員会は、事実関係の調査、原因の究明等に取り組んできた。
小野薬品では、調査結果を真摯に受けとめるとともに、調査結果を踏まえた今後の対応および関係者の処分等を決定し、「すべてのステークホルダーに改めて深くお詫びするとともに、今後同様の事態が二度と発生しないよう、全社一丸となって再発防止策の徹底に取り組んでいく」とのコメントを出した。
小野薬品では、調査委員会の「外部調査委員会報告書」をそのまま公表しているが、その最終ページにある〝あとがき”の概要は、次の通り。
寄付金が贈賄者本人ではなく三重大学医学部へ拠出されたものであったから、まさかそれが増収賄の犯罪に当たることなど思いもよらなかっただろう。
小野薬品にとって大学への奨学寄付金は、これが初めてではなく、過去に多くの実績を積み重ねてきている。本件は、正に製薬企業やMRにとってそういう身近に犯罪の落とし穴が存在するという警鐘を鳴らす事件であった。
だが、奨学寄附金制度は、今日の医学・薬学研究において欠かせない存在であり、これを期待する大学側とこれに向けて営業するMRにとって、お互いの距離感は一義的に決めつけられない難問である。
当委員会は、判決文を精査し、各種基準を読み込み小野薬品とも意見交換したものの、こうすれば取引誘引に当たらないという自信のある指標を見出し得なかった。つまるところグレーゾーンという表現で逃げるしかない問題という外はない。
従って、この問題は、製薬業界をあげて抜本的に制度を改革して解決するしかないのではないかという結論に至った。だが、それは当委員会に与えられた目的を超えるものであり、もとより我々がそれに口出しする立場にもなく能力もない。
小野薬品では、調査委員会の調査結果・提言および社内調査結果を踏まえ、再発防止と内部統制強化に向けて次の取り組みを行う。
1) コンプライアンスの強化
① 社外取締役による監督体制を強化する。
② 各部門にコンプライアンス・オフィサーを新設し、全社のコンプライアンスを強化する。
③ 営業本部に営業本部管掌のコンプライアンス特命担当を配置する。
④ コンプライアンス部門を拡充するとともに、現場部門にコンプライアンス・マネージャーを配置する。
⑤ コンプライアンス研修の充実と強化を図る。
2) 奨学寄付等見直し
① 奨学寄付
2021年度の奨学寄付は中止する。2022年度以降は、奨学寄付の社会的意義、アカデミアへの貢献の必要性を鑑みながら、これまでとは異なる研究助成方法を検討していく。
② 学会への寄付、一般寄付等
社会的意義を鑑み、継続する。なお、実施にあたっては、総務部門に寄付先の選定等を行う機能を担わせ、社内外からの干渉を排除し、客観的な基準に基づき公正性・独立性をより高めた寄付業務の運営を行い、内部監査等による監査を強化し、信頼性担保に努める。
さらに、役員人事案検討会議および懲戒委員会で次の処分内容決定した。また、代表取締役からの役員報酬の一部返上の申出を受け、取締役会が了承した。
◆役員の処分等
代表取締役社長 月額報酬の30% 3ヶ月を自主返納
関係専務執行役員 執行役員へ降格
◆関係者の処分等
社内規程に基づき、厳正に処分した