中国バイオベンチャーと培養角膜内皮細胞移植製品のライセンス契約締結  同志社大学発ベンチャー「アクチュアライズ」

 同志社大学発のバイオベンチャー「アクチュアライズ」は14日、同社が開発した培養角膜内皮細胞移植製品「AE101」について、中国を拠点とするバイオベンチャー「Arctic Vision」と総額3500万USドル以上に上るライセンス契約を締結したと発表した。
 この技術は、角膜内皮細胞が障害されて重症の視力障害を生じる水疱性角膜症に対して、生体外で培養して増やした高品質な角膜内皮細胞を注射で眼内に移植する再生医療。
 同志社大学生命医科学部では、眼科医かつ研究者である小泉範子教授、奥村直毅教授を中心に、角膜移植手術にかわる新しい治療法の研究を進めた結果、従来は培養することが難しいとされてきた角膜内皮細胞の培養法と、注射による細胞移植の技術を発見した。
 さらに2013年から行われた臨床研究によって、培養角膜内皮細胞移植により濁った角膜を透明に治療することが可能で、劇的な視力の回復が確認されている。

角膜内皮再生医療の概要図、 培養角膜内皮細胞+ROCK阻害剤
うつむき姿勢 
ROCK阻害剤の細胞接着促進効果による角膜内皮の再生

 同治療法は、ドナー不足や手術手技の煩雑さ、移植した角膜の生着不全など、従来の角膜移植の問題点を解決できる新しい技術であり、将来的に多くの患者を救う医療として普及することが期待されている。
 これらの研究に基づき、同志社大学では2018年5月、大学発バイオベンチャー「アクチュアライズ株式会社」を設立。角膜内皮再生医療等製品や、角膜内皮障害に対する低分子化合物の点眼薬の開発が行われている。
 今回のライセンス契約では、同社の開発候補薬のひとつである培養角膜内皮細胞移植製品AE-101について、Arctic Vision社へ特許権の実施許諾とともに技術提供を行うもので、日本をはじめ全世界での角膜内皮再生医療の実用化に向けて大きな一歩となる。
 Arctic Vision社からの資金提供額は、研究開発費・薬事的な承認状況等に応じたマイルストン・実用化後販売実績に応じて支払われるロイヤリティを合わせ、総額3500万USドル(約38億円)以上に上る。
 角膜移植は、世界で年間約20万人の患者さんに対して行われている最も数の多い移植医療である。その一方で、世界的に臓器を提供してくれるドナーが不足しているため、移植を必要とする患者のうち70人に1人だけが手術を受けているのが現状だ。
 今回ライセンス契約を行った中国においても、ドナーが非常に不足しているうえに角膜疾患の罹患率が高いため、多くの患者が新しい治療を必要としている。今後、アクチュアライズは、中国市場はArctic Vision社と共同で培養角膜内皮細胞移植製品の早期の製品化を目指す。
 世界の大学では、ベンチャー企業の設立により大学発の研究成果を事業化・実用化して社会に還元する試みが盛んに行われている。
 今回のライセンス契約は、同志社大学発のベンチャー企業としては初の大規模な契約であり、日本の大学で行われた再生医療の研究成果の産業化モデルとして世界的に評価された実例の一つとして注目されている。

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