今後のがん治療への応用に期待
神戸医療産業都市推進機構(理事長:本庶佑氏)は、同機構先端医療研究センター血液・腫瘍研究部上席研究員の井上大地氏が、世界で初めて、ごく少数の「マイナーイントロン」が導く新しい発がんメカニズムを解明したと発表した。
新しい発がんメカニズムは、遺伝子(DNA)の中にごく少数しか存在しない「マイナーイントロン」と呼ばれる遺伝情報を含まない配列があり、これを適切に除去(スプライシング)できなければ発がんに至るというもの。
同研究成果は、米国メモリアルスロンケタリングがんセンター、フレッドハッチンソンがん研究センターらとの共同研究によるもの。
2019年、Natureに報告された内容と合わせて、スプライシングの異常による発がん機構は、近年とても注目されており、今後の治療応用につながる研究成果として期待されている。
なお、同研究成果は、12日(米国東部時間)に国際科学誌Nature Genetics(オンライン版)に掲載された。
今回の研究のポイントは、次の通り。
(1)白血病を中心に様々ながんに共通する「スプライシング」を介した未知の発がん機構を解明。
(2)ごく少数の重要な遺伝子のみに含まれる「マイナーイントロン」がスプライシングの異常により適切に取り除くことができなくなる現象を見出し、ヒト検体・モデルマウス・ゲノム編集技術を用いてその機構
を明らかにした
(3)近年注目のがん抑制遺伝子であるLZTR1遺伝子に含まれるマイナーイントロンがスプライシング異常により除去されず、LZTR1の機能喪失をきたして発がんに至る新たな現象を発見した
(4)スプライシング異常の原因として、マイナーイントロンを制御するZRSR2遺伝子の変異だけでなくマイナーイントロン自身の変異も発見し、ゲノム上の非コード領域の重要性をあらためて提示した
(5)マイナーイントロンを介した「マイナー」でない発がん機構に基づいた治療応用が期待される