海外戦略製品 ベレキシブルに加えてデサイフェラ買収によるQINLOCK、Vimseltinibに期待 小野薬品相良会長CEO

 小野薬品の相良暁代表取締役会長CEOは9日、2024年3月期決算説明会で会見し、2028年米国を契機とするオプジーボの特許切れを見据えた欧米での製品戦略について言及。「2026年に米国でベレキシブル(中枢神経系原発リンパ腫治療薬)、その前後にイトリズマブ(リンパ腫・白血病)の上市を予定している」と強調した。
 加えて、米国のバイオ医薬品企業「デサイフェラ」買収で獲得する「消化管間質腫瘍(GIST)治療薬QINLOCK」、「腱滑膜巨細胞種(TGCT)等治療薬のVimseltinib」を挙げ、新たな海外戦略品として大きな期待を寄せた。
 KIT阻害剤であるQINLOCK(Ripretinib)は消化管間質腫瘍(GIST)の4次治療の薬剤として米国、欧州及び中国を含む40ヶ国以上で販売されており、現在の売上得高は約250億円に上る。
 一方、CSF-1R阻害剤であるVimseltinibは腱滑膜巨細胞種(TGCT)を対象としたP3試験(MOTION study)において、主要評価項目及びその他副次的評価項目を統計学的有意に達成しており、米国で2024年第2四半期、欧州で2024年第3四半期での申請を予定している。
 相良氏は、「VimseltinibのポテンシャルはTGCTで約1000億円程度見込める」と明言。さらに、Vimseltinibは、移植片対宿主病(GVHD)治療薬としての開発も予定しており、「GVHDではピーク時に約1500億円期待できる」との見通しを示した。

配当は「当面、維持または増配」

 相良氏は、株主還元にも言及し、「配当は今期80円、次期も80円を見込んでいる。各種指標を考慮した上で、配当性向40%を目途に配当を行うことを目標とし、当面は減配はなく、維持または増配で配当する」と言い切った。自社株取得も「これまで通り、色々な状況を鑑みながら機動的に実施していく」考えを示した。
 オプジーボのメルクやロシュからのロイヤリティ契約については、「これまでのロイヤリティの料率は世界の売上高の1.625%で、今年から0.625%に下がる。2026年まで新料率が適応され、その後ゼロになる」と明かした。
 オプジーボの売上についても、「今期は15%の薬価引き下げを受けて減少するが、肝臓を始めとするいくつかの適応症についての治験が進んでおり、今後これまでのピークを上回っていく可能性がある」と予測した。
 一方、ロイヤリティは、「現在がピークかもしれない。ブリストルマイヤーズスクイブからのロイヤリティはしばらく続くので、2024年度のみ急激にダウンする」と語った。
 市場拡大再算定の「共連れルール」からのオプジーボ除外では、「長年に渡っての要望は一つ叶った」とした上で、「D-1/PD-1リガント結合阻害作用とヤヌスキナーゼ(JAK)阻害作用に該当する品目は除外されたが、他のグループは引き続き適応される」と指摘。
 さらに、「業界を上げて撤廃して行かないといずれ小野薬品のようなメーカーが出てくる。不透明な薬価制度によって、ドラッグラグやドラッグロスも引き起こされている。経営の予見性の担保や患者さんのためにも撤廃してほしい」と訴えかけた。

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